思い出の傷跡
今日11月7日はあたしの誕生日。今年はみんなを家に呼んでパーティーでも開いちゃおうかな〜なんて思ってたんだけど、生憎とみんな忙しいらしくて結局あかりと雅史とヒロのいつもの4人だけとなった。まあいつもの4人だけならいつものカラオケで歌いまくって楽しく過ごすことが一番だとは思うんだけど、先月にお金のほうを使っちゃったせいか今月は余裕がなくなっちゃったわけで…。それもこれもぜ〜んぶあかりの横で談笑しているこいつのせいだと思うわけ。いつぞやのゲーセン勝負で思いっきり遣りあった挙句、ヤックを一週間奢るという賭けをしていたわけで、必死になってやっていた。勝負は僅かな差であいつの勝ち。唯一勝てたのが麻雀って言うほぼ運だけが左右するものだけ。…で、“ゴチになりま〜す!!” ってにこやかに言うあいつの顔をむぐぐぐぐって睨みつけるあたしがいたんだけど。っていうか何で勝てないのよ?! って思っちゃうわけで。
ぺちゃくちゃ喋りながら電車に乗って1駅向こうのあたしの家の近くの駅まで行く。“そういえば浩之ちゃん、志保の家に行くの初めてだよね?” とあかり。“まあそうだな? でもこいつの家もお前の家も変わらねーだろ。クマグッズ以外は…” とあたしのほうを指差しながらこいつはこんな失礼なことを言う。仮にも女の子の家に行くって言うのにこいつときたらデリカシーの欠片もないんだから…。全くその神経の図太さを世の神経細やかな人たちに分けてやりたいわ。なんてことを思ってると、駅に着く。
改札口を出て山に向かって2、300メートル上がったところにあたしの家はある。まあ両親は共働きなため、夜にならないと帰ってこない。いわゆる鍵っ子と言うわけだ。小学校時分だったからもう今じゃ慣れちゃったけど、初めて留守番するときは怖かったなぁ〜って今でも思う。そうそう、もう分からないけどあたしの足には傷がある。小学2年生のときに何かの拍子で躓いてこけて2、3針縫う怪我をした。周りには誰もいなくてちょっとびっくりしたのと、痛みとで泣いちゃったわけだけど、ちょうど通りかかった同い年くらいの男の子に助けられたことがある。まあそれがあたしの前で親友とめんどくさそうに相槌を打っているヤツだと言うことはあたしだけの秘密だ。中学一年のときにあかりと知り合って雅史とあいつを紹介される。その時あたしは一瞬ドキッとなった。それは小学校のときのあの記憶の中の男の子がいるということ。向こうはもう忘れちゃってるのか初めてのような顔で見てたけどね? でも顔を見て分かった。こいつがあたしを助けてくれたあの男の子なんだって…。
でも、それも今は言えない。だって親友を裏切ることになるから。あたしの親友はあの男の子のことをあたしよりずっと前から大好きで…、あの男の子のほうも親友のことが好きで…。そんな2人を中学から見てきた。親友はいろいろとあたしに悩みを話してくれる。“浩之ちゃんがね?…” とかいろいろと話してくれる。その顔は長年ずっと一緒にいる友達以上な関係のように感じて、その時あたしは気づいた。“この子は絶対裏切れない” って…。だから親友があいつと付き合いだしたと聞いたときは正直嬉しかったし、そんな親友を応援できて本当に良かったと思った。だから小学校の頃の話は自分の中で封印した。だからもう思い出しても、懐かしいなぁ〜っと思うだけ…。傷の手当てをしてくれたあの温かい手に愛着がないと言えばちょっとだけだけどウソになる。でももうそれはあたしの胸の中に閉まっておこう…。それにこれはあたしだけの大切な思い出だからね?
「志保〜。そんなところで立ち止まってどうしたの? 何か悩み事でもあるの? もしよかったら私に言ってね?」
「ああ、気にすんなあかり。どうせこいつのことだからオレにバカ高いケーキでも買ってこさせようとか考えてるんだろ…。ったくしょーがねーなー」
本当に心配げな顔であたしの顔をやや上目遣いに見つめるあかりに対して、いつものやれやれと言う表情のあいつ。そんなあかりたちをにこにこ顔で見つめる雅史。“そんなんじゃないわよ!!” と言おうと思ってふっと考え直して、意味深に微笑みながらこう言う。
「そうよ〜、何てったって今日はあたしが主役なんだからね。あんたには言ったとおりバカ高いケーキでも買ってもらおうかしら〜?」
ってね? もうこいつは覚えてないと思うけど、それでもあたしには懐かしい思い出…。うふふって微笑むとあいつの腕を取るとケーキ屋へダッシュするあたし。そんな今日11月7日はあたしの17歳の誕生日だ。
END