焚き火をしよう


 冷たい北風が家々の間を通り抜けていく今日11月24日は、オレの彼女・雛山理緒ちゃんの誕生日だ。さて今年はどう言うふうに祝ってやろうかなどと考えつつ1週間前から良太やひよこちゃんなんかにも最近の理緒ちゃんの傾向などを聞いていたわけなんだが、“枯れ葉がいっぱいだねぇ〜” だの、“今度掃除とかしなくちゃねぇ〜” とか言ってふぅ〜っとため息をついていると言うことらしい。まあ一般家庭よりもちょっとだけ貧しい理緒ちゃんちの事情もあって誕生日は比較的に質素に行なわれてきたと思うわけだが彼氏彼女の間柄になって最初の年に豪華にしたらえらく引かれてしまった経験がある。とは言えそれは昨年のことなんだが…。さて今年はどう祝ってやろうかと思って北風の吹く中家路を急いでいると落葉が掃き溜めに集まっていた。
 そう言えば昔、親やあかりたちと一緒にたき火なんぞをした経験があるな? 芋を放り込んで焼き芋なんぞを食べたこともあったりしたな…。なんて考えてると無性にたき火がしたくなってきた。と言うかたき火で焼いた芋が食いたくなったと言うのが正直なところか…。そう思うと居ても立ってもいられず家からポリ袋を持ってきて掃き溜めの落葉をポリ袋に入れるオレがいたわけだ。理緒ちゃんちにも大きな桜の木があるのでその落葉があるだろうからこの程度かと思ってやめた。ポリ袋いっぱいに集まった落葉を見ながらもう気分はたき火と焼き芋で頭がいっぱいになる。そういや、先輩や綾香も参加したいって言ってたよな? そう思って綾香の携帯に電話を掛けると、“姉さんも誘って行くわ” と言うことらしい。まあ先輩の場合セバスのじじいも一緒と言うのがちょっと…と言うわけだがその辺りは綾香が何とかしてくれるだろう。マルチやセリオも先輩や綾香と一緒についてくるだろうからこれはかこれでいいだろう。後はレミィや委員長やらなんだが、電話を掛けると、OKをもらえた。あかりや雅史には前もって言ってあるので、あかりが差し入れとばかりに何か美味い料理なんかを運んできてくれることだろう。そう思う。あと葵ちゃんや琴音ちゃんにも連絡したんだが、綾香から連絡が入っていたのか、“雛山先輩(雛山さん)のお誕生日でしたよね? 参加します” とオレが言う前に言われてしまった。まあオレの知ってる連中には全員声は掛けたし全員参加だと言うので楽しくなりそうだなと思う。
 まあ約1名声を掛けていないやつがいるがあいつはオレとしては論外なので声は掛けずにいる、まああかりから聞いて今頃地団駄踏んで悔しがってる頃だろう。そう思ってると早速携帯に電話が…。見ると案の定今考えていたやつからだった。嫌々ながら電話に出る。すると、“ちょっとあんた!! この可愛い志保ちゃんを誘わないってどう言うことよ?” と開口一番そんなことを言ってきやがった。“おめぇがうるせえからだよ! 良太やひよこちゃんの教育上良くないと思っての判断だっ!!” と半分ウソで半分本当のことを言う。こいつにどう影響されたのか最近ウワサ話をよく言うことが多くなったと理緒ちゃんが言ってたっけか。特にひよこちゃん辺りが…。今はまだいいが将来悪影響を及ぼしかねないことは必至なんだから今のうちに芽は摘んでおきたいんだけどよ…。“とにかくあたしだけ誘わないなんて言うことはどうかしてる…、って言うか許されないことだわ。明日行ったらその辺もきっかりかっちり説明してもらうんだから〜っ!!” と好き勝手なことをぐだぐだぶつぶつわーわー言って電話は切れる。あいつと話すだけで重労働だな? そう思いながら電話を切るオレ。夜の8時にかかってきて今日付が変わって午前0時を少し回ったころだから4時間も延々とぶつぶつ愚痴を聞く羽目になってしまった。明日はつらいぞぉ〜っと思いつつ床につくオレがいたわけだが…。


「藤田くん、何だか眠そうだね? 何だったら私の部屋でお休みする?」
 とたき火パーティーの席上、欠伸をかましているオレに向かい優しい言葉をかけてくれる彼女。一応昨今の消防法でたき火をする許可を消防署の同意を得てしないといけなくなったとかで、現場責任者であるオレが抜けることはいけないわけだ。それもこれもあの歩くスポーツ新聞3面記事の女のせいだとばかりに縁側で焼き芋を頬張っているボブカットの女を見る。向こうもオレの視線に気がついたのか、あかんべーっと舌を出していた。しかしたき火と言うのは結構いいもんだな? 垣根と言うものは昔に近所のジジババから聞いていてどんなものかは知っている。それも今はブロック塀に変わってしまったがそれでも初冬の風物詩としてはいいだろう。あと、このアルミホイルの中の芋をはふはふ言いながら食べる光景はなかなかに日本の原風景でいい。と彼女のお母さんが、“藤田さん、皆さんも、今日はありがとうございます” そう言ってぺこりとお辞儀をする。何だかしんみりしてきたな? せっかくの誕生日なんだからそんなしんみりしてどうするんだと思い委員長と目配せしあって余興と言うことで即興で漫才をすることにしたわけだが…。
 まさか理緒ちゃんがあんなにお笑いのセンスがあったなんて…と思う。オレが委員長とつまらん漫才じみたことをやっていると、“私もやってみたいなぁ〜” みたいな顔をするもんで、理緒ちゃんにタッチして交代させてみたわけだが、まるでネタ合わせでもしてたかのように委員長と息がぴったり合っていた。良太が言うには、“姉ちゃん、1人でよくボケツッコミしてるぞ!” と言うことらしい。まあ日常の疲れやなんかを1人で笑いに変えて頑張っているんだろうな? そう思うと健気さが目に浮かぶ。お笑いの本場である関西からやって来た委員長もどことなく満足そうだったし、それにみんなが楽しそうなのが一番いいと思う今日11月24日はオレの彼女、雛山理緒ちゃんの18歳の誕生日だ。
 余談ではあるが、志保に秘かにその漫才の風景をネットに上げられてそれが面白いと話題になって、しばらく理緒ちゃんと委員長が学校のアイドル的存在になったことは言う間でもない。

END