ちょっとのジェラシー


 今日1月19日は私の誕生日。今年も何かあるんだろうなぁ〜って思っていたら案の定、藤田先輩からプレゼントを頂いた。キツネの尻尾をデザインした可愛らしいペンダントだ。でも私はこの間の週末、ちょっとした勘違いって言うかイタズラに引っ掛かっちゃって拗ねていたんだっけ? と部屋の姿見に映る自分の顔を見ながらちょっと顔を赤らめる。自分でも恥ずかしいんだけど、思い出してみるともっと恥ずかしいなぁ〜。えへへっ。照れ笑いを浮かべて顔を赤らめる私。あの時ほど自分自身が恥ずかしいって思ったことはなかったよ…。ふぅ〜っとため息。でも何があったのか、思い出しただけで頬が赤くなるんだけどね?…。


 そうあれは先週の土曜日、藤田先輩と琴音ちゃんと綾香さんの4人で学校からの帰りしにちょっと街をぶらぶらしようってことになって…。藤田先輩は、今年の3月で卒業して綾香さんのお姉さんである来栖川先輩と一緒の大学へ行くんだそうだ。この間試験があっていい点数が取れたって神岸先輩たちと盛り上がってたっけ。ついでを言うと私と琴音ちゃんもその中に入らされて、2人して苦笑いだったんだけどね? で、今だ。琴音ちゃんと2人、デパートの2階にあるアクセサリー店でアクセサリーを見てるんだけど。私はよく知らないから琴音ちゃんにくっついて見てたら、
「あっ、これなんかどうかな? 葵ちゃんにぴったりかもよ?」
 って言いながら指をさす琴音ちゃん。ふっとその方向を見る私。可愛らしいキツネの尻尾をかたどったネックレスがあったの。“もうすぐ葵ちゃんのお誕生日だし、藤田さんにでも買ってもらえば?” うふふと微笑みながら琴音ちゃんはそう言うの。で、でも…。綾香さんもお誕生日は近い訳だし…。それにそれに、藤田先輩に迷惑がかかるんじゃない? と藤田先輩たちのほうを見てみると…。
「ねえ、浩之〜。これ誕生日プレゼントに欲しいんだけど〜、買ってくれない? 実はね? ごにょごにょごにょ…
「はあっ? おめぇ〜、これ、5万もするじゃねーかよ? そんな金ねーよ…。って、何だ?
 5万円? 一瞬耳を疑うけどそう聞こえた。5万って1万円札が5枚で千円札が50枚で…。っと一気に頭が混乱する私。しばらく考えても頭の混乱から抜け出せないので、ふと藤田先輩のほうを見ると、綾香さんにおねだりされてるみたい。でも高校生が5万円ものお金を持ってるわけないよね…。と思って少々安心してたのが間違いのもとだったわけで…。
「ったく、しょーがねーなー。綾香は…。そこまで頼みこまれるとい断るもんも断われねー。買ってやるよ…」
 ぐわ〜〜〜んと藤田先輩の一言に崩拳並みのショックを受ける私がいたのだった。結局そのプレゼントは綾香さんの腕の中…。琴音ちゃんも何か知らないけど買ってもらったみたいで今はにこにこ顔。対する私はちょっとどころじゃない大ショックを受けている。だいたい琴音ちゃんは私のプレゼントを選んだ結果を先輩に伝えてくれるって言う役目で来たんじゃないの? それなのにさ…。前を歩く藤田先輩たちを恨めしく見つめる私。やっぱり藤田先輩は綾香さんや琴音ちゃんみたいな可愛い系な女の子のほうがいいんだ。私なんて、私なんて。と、とぼとぼと綾香さんと琴音ちゃんの後ろを歩く私。このまま逃げちゃおうかな? と思っていたんだけど綾香さんの手前、そういうことは出来ないし…。それにしても笑っている藤田先輩の顔を見てると何だかジェラシーを感じちゃうな。私といるときにもあんな顔はしてくれるけどほかの人にしてほしくないって言うかあれは私だけのものなのに…。そう思うととだんだん腹が立ってくる。ぷぅ〜っと頬を膨らませて藤田先輩の隣りに並ぶと、ぎゅっと自分の腕を絡ませる。“んっ? どうしたんだ? 葵ちゃん?” ととぼけたような顔で言う先輩。そんな先輩に腹が立ったのか、
「先輩は私の彼氏ですっ!! 綾香さんや琴音ちゃんの彼氏なんかじゃありません。それなのに今日になんですか? 先輩は綾香さんや琴音ちゃんとばっかり話して!! 彼女である私を放ったらかしにして! それにもうすぐ私のお誕生日なんですよ? 琴音ちゃんも琴音ちゃん、綾香さんも綾香さんです〜!! 何で私の藤田先輩を取り上げようとするの? 酷いです。あんまりです…。うううっ」
 と声を荒らげて更に強く先輩の腕を抱きしめる私。う〜っと唸った。涙もぽろぽろ出てくる。と先輩が…。
「綾香〜、琴音ちゃ〜ん。もういいんじゃん。ドッキリ企画。葵ちゃん、泣いちまったしさ…」
 へっ? と涙を服の袖で擦り擦り藤田先輩の顔を見ると、申し訳なさそうな顔でこっちを見てる。えっ? えっ? 状況が飲み込めていない私は一瞬ぼ〜っとなってしまう。“ごめんな? 葵ちゃん。実は…” と事の真相を話し始める先輩。事の真相。それは…、


「酷いよ〜。琴音ちゃんも綾香さんも…」
 ぷぅ〜っと頬を膨らませて上目遣いに私と琴音ちゃんを睨んでくる葵。まあ睨まれるのも当然かな? そう思う。一時的ではあるけど葵の彼氏にちょっかい出したわけだし…。琴音ちゃんは、“ごめんね? 葵ちゃん” とさっきから平謝り状態だ。かく言う私もその通りではあるんだけどさ…。でも、あの葵がね〜? とも思っちゃうわけで…。浩之は浩之で、今はグロッキー状態で長いベンチで横になってる。泣きじゃくってる葵をここまで連れて来るのに苦労したんだもんね? と琴音ちゃんと二人ぷんすか怒ってる葵を尻目に苦笑いで見てる。一応ではあるんだけど、葵の誕生日パーティーを来週の火曜日・ちょうど葵の誕生日当日に開くことになった。もちろん私の誕生日も兼ねてるんだけどさ。
 でも恋人が出来るとこうも変わっちゃうものなのね〜? と思う私。まあ葵も立派に女の子してるんじゃないの。うふふっ…。と琴音ちゃんと笑いあって前を見れば…。この2年くらい前まで可愛らしい女の子だった少女が、素敵な女性へと変化しつつあるように思えた。と、葵がこっちに振り向いて申し訳なさそうにこう言う。
「あっ、そういえば綾香さんの誕生日プレゼント、まだ買ってませんでしたよね? すみません。何だか私だけこんなに買ってもらっちゃって…」
 って。私は首を横に振るとこう言うの。“葵のその笑顔だけで十分よ?” ってさ。さ〜て、帰ってセリオ相手にスパーでもしようかな〜。前にいるエクストリーム女子チャンプに挑戦するためにね? そう思いながら帰る道には白い息があちこちと見受けられた。


 水色の可愛いワンピースを出す私。このワンピースも実のところ、綾香さんと琴音ちゃんの誕生日プレゼントだ。先週のあの泣いちゃったデパート騒動のときにこっそり買ったんだって。ついでを言うとあの3万円はこのワンピース代だったんだそうだ。琴音ちゃんに教えてもらって初めて分かったことなんだけどね? と制服からそのワンピースに着替える。洗い立てのまっさらでふわふわの服。袖を通すとにっこり笑顔になる私。と藤田先輩から頂いた大切なプレゼントも大切に仕舞っておいた箱から出して首にかける。カチッと言う音とともにそれは私の首に止まった。いつも出かけるときはカジュアルな格好ばっかりだからこう言う格好はやっぱり似合わないと思うんだけど、せっかく綾香さんと琴音ちゃんが選んでくれたんだもん。着て行かない訳はないよね? そう思いつつ姿見で自分の姿を見る。うーん、もうちょっと背や胸が欲しいかな? とは思う。でもこれが私なんだよね? うん。と一人頷いてみせる。
 厚手のコートを羽織って家を出れば、冬の太陽は赤い残光を残して消えようとしていた。外はまだ寒い冬の空だけど、私の心の中は一足早い春のぽかぽかとした空が広がっている。そう、それは大好きな先輩と出会ったあの空のように…。

END