ダーリンは浮気者?
今日12月3日はあたしこと河野はるみのお誕生日なのだ〜。と言ってもあたしの大好きなダーリンはあたしのお誕生日のことをすっかり忘れちゃってるみたいで…、と言うか花梨ちゃんと、あたしとダーリンの愛の巣にいるあのお邪魔虫のひっきー妹Sのお誕生日は覚えていて何であたしのお誕生日だけ分からないの〜? って思ってるんだからねっ?!
この前のイルファお姉ちゃんのお誕生日のときにも花梨ちゃんのときにも(一年前もそうだよ!!)、ダーリンってばいっつもデレデレしちゃってるし、ひっきー妹Sにばっかりかまってるように見えるし…。ダーリンの浮気者〜っ!! って心の中でいっつも叫んでるんだから。今日も今日で、朝ダーリンのお布団に忍び込んでこっそり添い寝なんてしちゃおうかなぁ〜なんて思って、そ〜っとダーリンのお布団に入り込もうと思って手を伸ばしてみると何だか触りなれた感触が…。ガバッて掛布団をひっぺ返してみると、
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと! ダーリン!! これってどういうことなの?!」
ダーリンってばひっきー妹Sを抱き枕代わりにして眠ってたんだから〜!! まあ大方怖がりなひっきー妹Sが夜中に起きて怖くなってダーリンのお部屋に勝手に入り込んで、図々しくダーリンのお布団に入り込んだんだと思うけどさ。でも問題なのはダーリンのほうだと思うんだよ? 何でその時に気がつかないのよ〜? まあダーリンは昔からこうだったけど、今までで一番ショッキングな出来事なんだからね? あたしがそう言うと、寝ぼけ眼でダーリンってば、“ああ…、はるみちゃん。もうちょっと寝かせて…” って言ってたのに急に飛び跳ねるように起きて、
「わぁ〜っ! な、ななな何でシルファちゃんが俺の布団で寝てるの〜?! し、しかも抱き枕代わりで?!」
って言って真っ赤になってるの。ひっきー妹Sはひっきー妹Sで、“ふっふ〜ん、もうシルファとご主人様は深〜い仲なのれすよ〜…” って言って、ない胸をど〜んって突き出してそう言ってるし…。自慢げにそう言ってるひっきー妹Sが何だか腹が立ったあたしは、“今日はあたしのお誕生日なんだからあたしと一緒に寝ること!! それが出来なかったお風呂に無理やり入っちゃうんだからねっ!” って一方的にダーリンに言っちゃった。でもよ〜く考えたらあたしは学校でい〜っつもダーリンに甘えてるんだし…。って思ったけど今日はあたしにとっては特別な日なのに〜って思っちゃう。この2日前に花梨ちゃんのお誕生日だったから、お誕生日会を花梨ちゃんのお家でやったんだけどそこでもダーリンってば抱きつかれておっぱいをぐぐぐって背中に当てられて恥ずかしそうにしながらもにこにこ笑ってたんだから〜。あたしの方がいっぱいいっぱいあるって言うのにさ。ふんっ!
とにかくダーリンはあたしに対してもう少し優しくなってほしいって言うよりなるべきだって思うんだよ? そう思いながらあたしの作った朝ごはんを食べるダーリンを恨めしそうに見つめてると、“はるみちゃん。もう少しお味噌汁のお味噌濃くしてくれないかなぁ〜? 前々から言おう言おうって思ってたんだけど…” って、こう言うの。“じゃ、じゃあひっきー妹Sはどうなの?” ってひっきー妹Sのほうを指さして問い詰めてみると、
「シルファちゃん? ああ、シルファちゃんは完璧だよ?」
だって…。そ、そんなぁ〜。あたしが、あたしが一番ダーリンのことを分かってるはずだったのに…。そう思うとへなへなへなって腰砕けで座っちゃう。目には大粒の涙が溢れてきて、思わず、“う、うう、ううう、うわぁぁぁぁぁ〜ん” って泣いちゃった。だってだって、あたしより美味しいお料理作れるひっきー妹Sが羨ましくて、でもそれよりも何よりも今まであたしが一番だって思ってた自分が情けなくって大声で泣いちゃったんだ。ダーリンが慌ててるけどこの際何でもいいわって思っちゃって、そこら辺にあるものをぶんぶん投げてやったの。ひっきー妹Sは、“あ、危ないのれす〜っ! ミルミルぅ〜っ!!” って言って隠れてるけど、どうせあたしは嫌われ者なんだ〜って思ってぶんぶん投げてると、バシって頬に強い衝撃が当たったの。何かなぁ〜って思って触ってみるとちょっと痛かった。ふと目線を前に向けるとダーリンが今までみたことのないような怖い顔で立ってた。
「はるみちゃん!! 何があったかは知れないけど物をシルファちゃんに投げるのはどうかと思うけど!!」
って言って怒った顔で睨んでる。ううう、やっぱり、やっぱりあたしは嫌われ者なんだ…。ううん、これでほんとに嫌われ者になっちゃったんだ〜って思う。そう思えば思うほど素直に謝ることなんて出来なくて、売り言葉に買い言葉でこう言っちゃったの。
「ダーリンは…、ダーリンはあたしなんかよりひっきー妹Sのほうが大切なんでしょ?! もういいよいいよ。あたしがいなくなればいいんでしょ?!」
そう言ってあたしは鞄も持たずに出て行っちゃう。ダーリンなんか、ダーリンなんか大っ嫌い!! そう思いながら…。
どれだけ歩いたことだろう。河川敷の大きな原っぱに着く。ゴロンって横になると、いろいろ思い出した。初めてダーリンに会ったのはまだあたしがクマボディーの頃でお股を覗かれて、“なんてエッチな人!” って思ったのが一番初めの印象だったかな。珊瑚ちゃんに怒られて素直に頭を下げるダーリンの姿に今までにない人の温かみを感じて、この人にならすべてを捧げてもいいかな? って思った。おっぱいの大きな環ちゃんやささらちゃんたちと一緒にいるところを何度か目撃して、あたしも大きくして〜って駄々をこねてダーリン好みな体になったつもりでいたのに…。それなのにさ。それなのにダーリンは…。…もういいや。考えるのはよそう。考えれば考えるだけ悲しくなっちゃうだけだもん。そう思ってしばらくしてるとスリープモードに入ったのか、眠たくなってきちゃう。気がつかないうちに眠ってた。
俺は今、はるみちゃんを探している。今朝はちょっとやりすぎたって今後悔していた。でも物を投げるのは危ないし、注意したところで逆に怒ってくるからああしないといけなかったんだと俺自身そう思う。確かにはるみちゃんの言い分も分かってるつもりだ。シルファちゃんに構いすぎてたのは事実。だけど今朝、はるみちゃんに言われて気づいたくらいだから相当構っていたんだろう。メイドロボにも心を…、そう言って珊瑚ちゃんに造られた3体のメイドロボ。いや、メイドロボと言うよりは友達かもしれない。その1体、いや1人の大切な友達を今朝叩いてしまった。ロボットにも心はある。その心に傷をつけてしまった俺。イルファさんにも今朝の出来事は伝えた。“そうですか…、で? 貴明さんはこれからどうするおつもりです?” といつになく真剣な瞳で聞いてくるイルファさん。俺はこう言う。
「俺はこれから探しに行きます。大切な友達…、と言うより家族みたいなそんな存在ですから。はるみちゃんは…。学校のほうにはシルファちゃんが連絡入れてくれてるみたいですからお気遣いなく…。それじゃあ探しに行ってきます」
そう言って、だっ! と駆け出した。公園、商店街、とにかく人が集まる場所を重点的に探した。はるみちゃんは人懐っこいからひょっとしたらいるかもと思って探したんだけど…、見つからない。もちろん学校にも寄った。小牧さんが、“河野くん? 今日は風邪を引いてお休みしたって聞いたけど?” って不思議そうに言っていたけど…。あっちやこっちやと探し回ったけど、結局見つからずとうとう日暮れも近い時間になる。でも見つからない。方々探しつくしても見つからない。ほんとにどこに行っちゃったんだろう。ひょっとして研究所に帰っちゃったとか…。それか人知れない場所で…。とか言う最悪のことまで考える。ふと夕暮れの河川敷を通る。冬の冷たい風がぴゅ―ぴゅ―吹いていた。と1人ちょこんと座っている人影も見える。特徴的な髪の毛は遠くからでもよく分かった。そ〜っと気配を消して近づくと、何か独り言を言っているみたいだった。耳を澄まして聞いてみると…。
「ダーリン…、会いたいよぅ〜。でも会えない。会ってなんて謝ればいいんだろう。いきなり飛び出しちゃったりしてびっくりしちゃったんじゃないかなぁ〜? ダーリン…。でもダーリンに会って謝まりたい。シルファにも謝りたい。シルファは何も悪くないんだもん。勝手にあたしが怒っシルファに向かって物を投げちゃっただけだもん。後片付け、大変だっただろうなぁ〜。でも会ってなんて謝ればいいんだろう…」
とため息交じりに出た痛々しいまでの俺やシルファちゃんを思う彼女の心からの言葉だった。なるべく足音を消すように歩いて彼女の後ろに立つ俺。普段ならすぐに振り返るのに今日は頭の中がいっぱいなのか、正面を向いたままだ。何が最新型メイドロボ試作機だよ…。普通の女の子と変わりないじゃないか。そう思って優しく声を掛ける俺がいるのだった。
あれから数時間が経っていた。今はスリープモードから回復してちょこんと河川敷に座っているあたしがいた。考える。いっぱいいっぱい考える。でもどれもこれも解決策には結びつかない。お姉ちゃんに相談しようかな? とも思ったんだけど、こう言うことには厳しいお姉ちゃんだからきっと“自分で何とかなさい!!” って言われるに決まってるんだよ? はぁ〜っと大きなため息を一つ。ダーリンにはもう会えない。今朝の顔を思い出してはそう心の中で思っちゃう。とあたしの背中越しで、“はるみちゃん、探したよ?” って言う声がする。声を聞くと悲しくなってくる。涙がぼろぼろ零れちゃう。振り返るといつもの優しい顔の、あたしの大好きなダーリンがにっこり微笑んで立ってた。
「今日はごめんね? 本当にごめん」
そう言うと頭を深々と下げるダーリン。あたしはぶんぶん首を横に振る。言葉が出てこない。謝りたいこと、いっぱいあるのに肝心の言葉が出てこない。ふるふると頭を振るのが精一杯。それでもダーリンは優しく微笑んだままあたしの涙顔を持っていたハンカチでやさしく拭いてくれてる。そんなことが嬉しくて、誰にでも優しくてちょっぴり優柔不断で、でもここって言うときには一生懸命になってくれるあたしの大好きなダーリン。思い余って抱きつくといつもみたいに逃げるんじゃなくてギュって抱きしめ返してくれる。それだけで…、それだけでとても嬉しくなっちゃって、いつの間にか泣き顔からにこにこ笑顔に戻っちゃう。“じゃあ、帰ろうか?” って言うダーリンに、“うん!” って言うあたし。そんな今日12月3日はあたしのロールアウト記念、じゃなかった、お誕生日だったんだよ。えへへっ…。
END
おまけ
はるみちゃんと帰る道すがら、異様に冷たい視線を複数感じた。気のせいかな? と思って通りを曲がると、なぜか笹森さんとシルファちゃんが恐ろしいほどににこやかな表情で立っていた。“ねえ、たかちゃん。はるみちゃんと何をしていたのかな〜? 教えてもらえると嬉しいんよ〜” と今まで聞いたことのないような甘ったるい声でこう言う笹森さん。シルファちゃんもシルファちゃんで、“まさかとは思うんれすけど、ミルミルと楽し〜い時間を送ってたのれはないれすかね〜? シルファの苦手なお買い物を任せておいて…” とこれまたにこやかに言ってくる。俺の経験上、これは本当に微笑んでるかもしくは怒りが頂点に達して逆に微笑んでしまっていることの2つだけど…、この場合はどう考えたって後者のほうだよなぁ〜っと思うわけで…。で案の定…。
「こらぁ〜!! たかちゃ〜ん!! 待つんよ〜っ!! 捕まえて呪いの実験に付き合ってもらうんだかんね〜っ?!」
「ミルミル〜っ!! 待つのれす〜っ!! 今日のお買い物、シルファがどれらけ苦労したのか分かってるんれすか〜っ?!」
と町中に響き渡るような大きな声で俺たちを呼ぶ声が聞こえていたことは言うまでもない。はるみちゃんの手を掴んで逃げる俺。そ〜っと後ろを振り返るとぷぅ〜っと頬をこれでもかと言わないぐらいに膨らませて目を逆三角形に尖らせて追いかけてくる二人が異様に怖かった。と今日の日記に記しておこう。まあその日ははるみちゃんとシルファちゃんのお誕生日で俺の知ってる友達全員を呼んで盛り上がったわけだけどさ…。
でもね? これは後日談だけど、笹森会長様にはミステリ研の実験と称して本当に殺されかけそうになったり、シルファちゃんはシルファちゃんではるみちゃんと一緒にお風呂に入ってきて体の隅々まで胸を押し付けてごしごし洗わされたりして(いわゆるパ○ズリ?)、三人で川の字になって寝かされたり(もちろん真ん中は俺なんだけど)したり…。これだけでも相当の地獄なのに、どう言う訳かこれがタマ姉やほか俺の知ってる女の子全員に伝わって(まあ伝えたのは笹森さんだとは思うんだけど…)、非常に冷たい、ほとんど南極のブリザードみたいな感じで見られたりしている。普段優しくて怒った顔なんて見たことのない草壁さんでさえ、ぷぅ〜っと頬を膨らませているんだから相当だろう。由真や瑠璃ちゃん辺りなんかには、“変態ごう○んま〜っ!!” と言われて生徒指導の先生に弁明するのに時間が掛かりすぎるほどかかったくらいだ。そうそう生徒会室に呼ばれて久寿川さんに迫られたことも何回かあったり。とまあそんなこんなで疲労困憊で眠れない日々が続いている今日この頃。唯一学校の男子トイレだけが今の俺の安住の居場所だけど、それも今後どうなることか……。だって、ね?
「前々から女に興味はないとか言っておきながら、女に寄っていくあの態度が許せねぇ〜!! なあそう思うだろ? 同志諸君!!」
“おう!”、“そうだそうだ!!”、雄二以下男子数名が俺のことを血眼になって探してるって言うのが今の俺の現状。誰でもいいから俺の味方になって〜っと思う12月も8日を過ぎた昼休みだ。とほほ〜…。
TRUE END?