このみのほのぼの誕生日
わたしこと、柚原このみは今怒っているであります!! 何故って? そ、それは……。
「ねえ。タカくん。今日、何の日か知ってる?」
9月6日。このみは今日16歳になったんだよ〜。えへへっ。これでまた1つタマお姉ちゃんに近づいたんだ〜って思うとこのみは嬉しくてニコニコ顔になっちゃう。タカくんのこんな一言がなければ……。
「う〜ん? 何の日だったっけ?」
タ、タカくん!! ひょっとして…、忘れてるの? 今日はわたしの誕生日なんだよ〜っ? お母さんもそうだけど、みんな酷いよ〜っ!! お母さんなんか昨日……。
「このみ? 明日、お母さんちょっとお父さんと約束があるから、一人で留守番してくれる?」
そんなこと言って、にこって微笑むんだよ? お母さん…。何か肝心なこと忘れてない? 明日はわたしのお誕生日なんだよ? わたしはちょっと怒ったようにお母さんに言ったんだ。そしたら…、
「ああ…。そうだったわね? でもどうせこのみはタカくんのお家に行っちゃうんでしょ? ならいいじゃない。帰りにプレゼント買ってきてあげるから…」
ちょっと拗ねたようにお母さんは口を尖らすとそう言うんだ…。うっ、そ、それはそうだけど……。そうだけど…。でも酷いよーっ!! お母さん、わたしに内緒でお父さんとデートしてるの知ってるんだから!! フランス料理のフルコース食べたり、中華料理の懐石食べたり……。
わたしの見たこともない料理をいっぱい食べて、お土産は点心とか、チーズケーキとかそんなのばっか…。昨日のことを思い出して、顔をむぅ〜っとした顔で見るわたし。と、タカくんは途端に思い出したように…、
「きょ、今日はこのみの、た、誕生日だったよなぁ〜。た、確か……」
た、確かって? 確かってどういうことでありますかっ? 去年はお母さんが……。
「このみ、そろそろ受験勉強始めなさい!! あんたは人より覚えるのが遅いんだからっ!」
って9月2日から勉強させられて誕生日どころじゃなかったんだからね? しかもお母さんはタカくんたちを誘ってお食事に行っちゃうし……。あの時のことは、9.6誕生日事件としてこのみの胸に一生残ったでありますよ〜っ…。むぅ〜。
あの帰って来たときのタカくんの幸せそうな顔。…このみはとってもとってもうらやましかったんだからね!!
「な、なあ…。悪かったよ。このみ。だ、だから…、機嫌直してくれ〜っ!!」
学校へと続く緩やかな坂道…。タカくんと手を繋いで歩いてるわたし。ぷぅ〜っと頬を膨らませたわたしの顔を見つめながらタカくんは頭を下げてる。ふふふっ、何だかいい気分でありますよ〜っ。そう思うともっともっとタカくんを困らせたくなってきちゃう。最近ユウくんに…、
「お前…、最近何だか姉貴に似てきたぞ? その傍若無人なところとかよ…」
って言われるけど、大好きな男の子になら誰でも甘えたくなっちゃうんじゃないかな…。女の子は……。わたしはそう思うの。現にお母さんだって時々お父さんに甘えてるし…。タマお姉ちゃんにそのことを言うと、
「雄二が? ああ、あれはモテない君の僻みとでもとっておきなさい。女の子は甘えていくらって言うものよ? それに雄二ならともかく、タカ坊はそんなことないと思うけど? まあ、しっかりなさい。あなたはもうタカ坊の彼女なんだから…、ねっ?」
タマお姉ちゃんは、ウインクしながらいつものように微笑む。微笑むタマお姉ちゃんを見て、わたしもタマお姉ちゃんみたいになりたいなぁ〜って改めて思ったんだ…。いつもの風景が、タカくんやユウくんに、学校は離れちゃったけど、ちゃるによっち。
そしてわたしのライバル…、でも、とっても優しいタマお姉ちゃん。いつもの光景……、わたしの大好きな光景がこの坂道を登ったところにあるんだ……。えへへっ。わたしはそう思いながら大好きな人と手を繋いで登った…。
で、現在、午後5時30分。わたしは自分のおうちにいる。朝のむぅ〜っとした気分はすっきりと晴れて、今はとってもいい気分。なぜかって? それはね……。
「このみ〜っ? 準備できた〜? そろそろ行くよ〜っ?」
「ああん、待って待って〜っ!! 今行くから〜っ!!」
ちょっとおしゃれをして、お母さんやタマお姉ちゃんに教えてもらったお化粧もして、いつも結んでいる髪留めもはずして、鏡で確かめる。何だかちょっとだけお姉さんになったような気がしたよ? タカくん……。こんなわたしのこと、タカくんは何て言ってくれるかな? 玄関の戸をそ〜っと開ける。
「こ、このみ?」
案の定、驚いた顔のタカくん。でも……。
「うん、似合ってる。ちょっといつものこのみと違っててドキッてなったよ…。でもとっても可愛いよ…。このみ……」
いつもの顔に戻るとこう言ってくれる。ちょっと恥ずかしがり屋さんで、でも、頼りになるわたしの好きな人。髪がさらりと風に舞う。タカくんがわたしの手を取る。ゆっくり歩き始めた。
タカくん……、これからもこのみのこと好きでいてね? タカくんが好きでいてくれるなら、このみは何にもいらないから…。空はもう夕暮れ。……あっ、今、一番星が見えたよ? ねえ、タカくん……。
END