ウチとさんちゃんとイルファとあいつと…
今日、6月16日はウチとさんちゃんの誕生日や。そやからウチは買いもんに来とる。
さんちゃんはイルファと一緒に長瀬のおっちゃんのとこに行っとる。何やイルファのことで難しいこと話しとったけど、ウチ、アホやから分からへん。
学校でもウチはついてくのがやっとや…。こんな時、神様は不公平やなーっと思ってまう。季節は6月。もう梅雨や。今日も外は雨やさかい、傘差して買いもんに出かけた…。
今日はさんちゃんの好きなもんにしよう…。そう考えたウチは、さんちゃんの好きなおかずの材料を買いもんかごの中に入れていく。と、遠くにあいつの姿を見かける。そう、さんちゃんとイルファの心を鷲掴みにして…、おまけにウチの心まで鷲掴みにしたあいつ。河野貴明…。
こんなとこで何やってんのや? そう思い、気付かれへんようにあいつのそばまで行く。そ〜っと覗き込もうとしたとき、ふっとあいつがウチのほうに振り向いた。
「んっ? ああ、何だ…。瑠璃ちゃんか…。俺はまたタマ姉か由真かと思ったよ……」
こいつはウチの顔を見るとほっとしたような顔をする。こいつの友達は一応知ってるつもりや。タマ姉っちゅうんは、こいつの幼馴染みでバインバインの姉ちゃん。由真っちゅうんは、こいつにいろいろ挑戦しとる、長瀬のおっちゃんのおっちゃんの孫娘や…。ついでにウチにあの睨みを教えてくれた姉ちゃんや。
「何でこないなとこにアホ貴明がおるねん…」
ウチはあの睨みをしながら貴明の顔を睨む。途端にぎょっとなって後づさる貴明。
「お、俺は今日の晩飯を買いに来ただけだよ……」
そう言いつつ逃げる体勢に入っとる。って! 今日はウチとさんちゃんの誕生日なんやで? 忘れとるんか? はぁ〜。忘れとるんやろなぁ〜。貴明の顔を見ながらそう思うた。
「なあ? 貴明…。今日、何の日か知っとる?」
「あっ? ……っと、今日は…、今日はっと……、って、ええっ??」
ウチはそう聞く。突然、ぎょっとなる貴明。“はぁ〜。こいつは…” と思うた。さんちゃんもイルファも貴明のことが好きや。さんちゃんとは双子やから分かるねん。イルファはさんちゃんが長瀬のおっちゃんにメイドロボのテスト受けとっとった時にいろいろあったって聞かされとるから…。
じゃあ、ウチは? ウチは…、ウチは…。……ウチも貴明のこと、好きかな? やって、ウチとイルファを仲直りさせてくれてんもん…。そやから特別に貴明は招待や…。
「るー☆。貴明や〜」
「いらっしゃいませ。貴明様。さあ、どうぞ。お上がり下さい……」
「こんにちは。珊瑚ちゃん。イルファさん。そ、そうだ…。これ、俺からのプレゼント…」
わーいって言う顔でプレゼントを開けるさんちゃん。すまなそうに貴明の顔を見とるイルファ。嬉しそうに微笑む貴明。その光景を見ながら、笑うウチ…。四人四様、違う顔。でも、目的は一つなんやと思う今年のウチとさんちゃんの誕生日やった…。
END