雄二君のウハウハ? 肝だめし大作戦

後編


 で、現在…。学校の裏にある何を祭っているのかわからないお堂の前で俺は身動きが取れないでいる。雄二はさっきから恨みを込めた目で俺の顔を睨んでるし…。女の子達は全員俺のそばから離れようとはしない。最初はよかったんだ。最初は…。笹森会長のあんな一言がなければ……。
「あっ、そうそう…。この前ある古書販売店に行った時に1973年7月版のムゥって言う雑誌を読んだんよ…。そこには驚くべき内容が書かれてあったんよ? 何でも昔…、そう今から約1000年ぐらい前にここらへんは宇宙人の秘密基地があったらしいんよ。なんでもね? 宇宙人たちはそこから若い女の子を1人ずつ連れ出しては何かの実験に使ってたらしいんだってさぁ〜。だからね。ほらこの辺ってよくUFOとか目撃されるじゃない。だからひょっとしたら…」
 確かに目撃例はあるけど、でも大半が自衛隊機の夜間飛行訓練か何かで、UFOとは全然関係がないと思うんだけど…。第一1000年前だったら平安末期、何かの文献にでも書かれていてもおかしくはないと思うんですけど? それに遺跡の一つも発見されてないんだし…。そう言おうと思って横を見ると…。がくがくぶるぶると体を震わせているこのみと珊瑚ちゃんとイルファさんたちメイドロボ三人。ひょ、ひょっとして宇宙人が苦手? そうその場にいた中を代表してこのみに聞くと?
「当たり前だよーっ!! 宇宙人はUFOに連れ込んで変な機械とか入れちゃうんだよ? それに捕まった人間を実験用だーっとか何とか言ってどこか知らないところへ連れてっちゃうってこの前お母さんが借りてきたUFO特集のレンタルDVDでやってたし…」
 涙目のこのみは首をぶんぶん横に振る。珊瑚ちゃんも“ウチ、UFOとか宇宙人とかダメやねん…。ほら、向こうって科学が発達してるやろ? それになんか怖そうやんか? そやから嫌やねん…”と言うし、イルファさんたちもぶるぶる震えていた。先が思いやられる。でもお化けと宇宙人か。中学校のころに聞いていた深夜番組でもこんなことをやってたっけ…。はあ。このみはきっとUFO研究家の人の話を真に受けてるんだろうし(春夏さんの先導もかなりあると思う)、珊瑚ちゃんもいつもお化けでいぢめられてる瑠璃ちゃんが“お返しや〜っ!!” とばかりに言ってるんだろう。でもイルファさんはどうして怖がってるんだ? ふと疑問に思って聞いてみると…。
「だって私たちってロボットじゃないですか。地球にこんな緻密で美しいロボットがいるって知れたらやっぱり攻めてくるんじゃないでしょうか。ブルブルブル…。そ、それに戦争になってタコ型宇宙人に捕まるなんて嫌ですよぅ〜…」
 い、いや、イルファさん? 自分で緻密とか美しいとかはあまり言わないんじゃないかなぁ〜。それにタコ型宇宙人って…。昔父さんの書斎で読んだ本に載ってたヤツじゃないんだし…。っていうかそんなことをまともに信じている人(まあメイドロボなんだけど…)がいるなんて、ある意味希少価値が高いんじゃないのか? そう思う。
「とにかくおうちに帰りたいよーっ!!」
 手足をじたばたさせてこのみが駄々をこね始める。ミステリ研会長様は非常に落ち着いた声で、しかも洗脳するようにこう言った。
「いいのかなぁ〜? 帰る途中でUFOに捕まっても…。まあ捕まって実験材料にされるかそのままUFOに連れて行かれるか、どっちかだと思うんよ? そう考えると残った方がいいんじゃないかなぁ〜。あっ、これは今逃げようとしてる人たちにも言えることなんだけど〜?」
 ギクッ!! こそこそ退散しようとしている珊瑚ちゃんたちに向かってうふふと怪しい笑みを浮かべる会長様。ぎぎぎと振り返る顔はいつもののほほ〜んとした顔じゃない怯えきった顔だ。珊瑚ちゃんのこんな顔は初めてだったので正直驚いた。イルファさんたちも同じような顔でおどおどと笹森さんの顔を見ている。このみは? と横を見ると俺の服を掴んでぶるぶる震えていた。
「さあ! 第一回校外ミステリーツアー、しゅっぱ〜つ!!」
 会長様の掛け声よろしくおどろおどろしく出発する面々。先が思いやられる…。そう思いながら俺は深夜の学校の裏山へと分け入った。ただ一人、雄二だけは嬉々とした表情だったけどな…。


 コロコロコロコロ…。もうこおろぎが鳴いているのか? 季節は進んでるんだなぁ…。そんなことを思いながら笹森会長を筆頭に探検隊は進んでいく。目指すは…。どこだっけ? 今さらながら気が付いたが目的地を聞いてない。まあ笹森さんのことだ。どこかに不思議なものでもあってそれを目当てにしてるんだろうけど…。
「う、うぇぇぇ〜…。やっぱり怖いよ〜!!」
 いつもの強気な態度はどこへやら、情けない声を出すタマ姉。瑠璃ちゃんは目を瞑ったままで珊瑚ちゃんやイルファさんたちにしがみついている。がその肝心の珊瑚ちゃんたちもさっきのUFOの件でびびりあがっていた。由真と愛佳と郁乃と草壁さんもまあタマ姉と似たり寄ったりで……。このみは俺の手をしっかり握って“絶対放さないでね? タカくん?” と言って空を仰いでいる。でどういう訳か知らないが、タヌキっ娘とキツネっ娘もいるわけで…。
「せんぱ〜い…、やっぱり怖いっスよ〜…。はぁ。やっぱり来るんじゃなかったっス…」
「大丈夫だ。よっち。いざとなれば先輩が力を解放してくれる…」
「なに言ってるの? 君たち…。力を解放ってどういうこと?」
 何でこの子たちも一緒にいるんだ? そう思って横を見ると案の定“えへへ〜”と怖いながらも微笑むこのみ。まあ、そうじゃないかとは思ってたけどねぇ〜。はぁ〜。とそんなこんなで暗い獣道を歩く俺たち…。そういや雄二は? 雄二はどこに行ったんだ? 辺りを見回してみるが雄二の姿はない。も、もしかして? い、いや…。そんなはずはない。笹森さんのほうを見るとなにやらガタガタ震えている。その前方、目を凝らして見ると…。木々の間からなにやら青白い炎がぼや〜っと浮かんでいた。
「な、何なんよ? あれ? 人魂って言うやつ? い、い、いやぁ〜!! 呪われるんよ〜っ!!」
 えっ? と一瞬目を疑った。いつも怖いもの、不思議なものを探している笹森さんが人魂にはあっけなく悲鳴を上げてるなんて…。“か、花梨はお化け専門なんよ〜っ!!” そう言ってぶるぶると震えるミステリ研会長様。ああ、まあ笹森さんも普通の女の子って、そういうことか…。そう思って今度はタマ姉たちのほうを見ると…。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜っ!!」
 お化け嫌い派のタマ姉たちが、案の定悲鳴を上げていた。と、ずだだだだだっと俺のところに走ってくると渾身の力で思い切り抱きついてくる。ぐえっ! と言う間もなくさば折り状態になる俺。のがれようとはしてみるものの返って逆効果。ぎりぎりぎりっと背骨とかあばら骨とか、とにかく骨と言う骨が軋む。と俺の苦手なぽよんぽよんした感触もついでに…。思わず鼻血がでそうになるがすんでのところで堪えた。そこへ…。
「わりぃわりぃ。途中で小便したくなってよ〜。…って! な、な、何やってんだ? 貴明…。ちくしょー!! それは俺が…
 戻ってきたかと思うと、由真のような目をして俺の顔をぐぐぐっと睨みつける雄二。何が何だかさっぱり分からない。しばらく睨みつけていた雄二だったが“ちっ、こうなりゃ作戦変更だ!”と独り言のように呟くと、ふふふふふっと怪しく笑った。その表情は狂気に満ちた顔だったと言うことを今日の日記に記しておこう…。ぶるぶると震えながらも前へと進む俺たち。もうそろそろ終点が見えてきてもいい頃なのに…、と思いながらも前へと進む。初秋の冷たい風がぴゅ〜っと頬をすり抜けていく。ぞくっとしながらも後ろを振り返ろうと横を見るとこのみがガタガタ震えてこう言った…。
「ユ、ユウくんが…、ユウくんがまたいないよぉ〜!!」
 ええっ? と思い急いで後ろを振り返るが、いるべきはずの雄二の姿はそこになかった。いや待て。さっきまでいたはずなんだ……。後ろをぶつぶつ言いながらついてきていたはずなんだ…。うん。だったらどこへ? あちこち見回して、“おーい、雄二〜。どこだぁ〜?”と闇にむかって叫んでいると、がさっと物陰から物音が聞こえる。と、どこからか不思議な声が聞こえてくる。な、何だぁ〜? と思いつつも俺たちはその声のするほうへと向かった。女性陣はかなり嫌そうだったけど…。だんだんと近くなる声。このみは、
「わ〜ん、いやだよぉ〜。もし宇宙人だったらどうするのぉ〜?! タカくん、逃げようよぉ〜」
 といって俺の腕を引っ張る。他のみんなもぶるぶる震えていた。こう言うことには興味津々なあの笹森さんまでも震えている。さっきの人魂が相当怖かったんだと俺は思った。だけどこの声にはどことなしか聞き覚えがあった。“だ、大丈夫だから…、何かあっても俺が守るから” そう言って声のするほうへと向かう。茂みの奥の小高い丘の上、ぽつんと小さな人影が星明りに照らされている。どうやら声はその人影が発しているようだった。…と、んん? この声には聞き覚えがある。もう一度耳を澄ませてみる…。うん、確かに聞き覚えがある。と言うか毎日聞いている声だ!
 森を抜けて丘の上…、両手を天に高く突き出して不思議な踊りを踊るクラスメイトが一人…。少々頭に来つつも、俺は聞く。
「るーこ? こんなところで何をやってるの?」
「ふっ。愚かだぞ? たかあき。今日はるーの星での祭りの日だ。45光年離れはしたが誇り高いるーは“るー”の祭りをこうして行なっていると言うわけだ……」
 そう言うと大きくるーをするるーこ。はは、ははははは……。はぁ〜。ま、まあそんなことだろうとは思ってたんだけどね〜。深いため息をついてるーこを見ると、るーこはどういう訳か不敵に微笑むとこう言う。
「ちょうどいい…。たかあき、一緒にするぞ…。みんなで誇り高い“るー”の祭りというものをうーたちに見せてやろう…」
 いいいっ?! 俺がするの? そう言うと、“当たり前だ!”とでも言わん顔でじ〜っと睨みつけるるーこ。その顔の迫力に押されて首を縦に振る。結局、最後の最後まで踊らされてしまった。まあ、最もみんな怖がっていたからこれはこれでよかったのかもしれないけど…。でも何か…、って!! 雄二が行方不明のままだ!! 早速るーこに言うと? “うーの行方を捜すのだな? ふっ、まかせておけ…” そう言って、いつものように大きく“るー”をするるーこ。…結局、どういう訳かるーこにもついてきてもらうことになった。


 相変わらず暗い獣道を歩く俺たち。と、遠くの方で青白い炎がまた、ぽっ、ぽっ、と見えた。それと並行して“う、ううう…”といううめき声のようなものも聞こえ出す。途端に立ち竦むお化け(&人魂)怖い派の面々。って? あ、あの〜…。るーこさん? ひょっとしてお化けが怖いとか? 必死でこのみに負けないくらいに俺の服のすそを掴んでくるお嬢様に言うと…。
「当たり前だ!! るーにだって怖いものはある…。たかあきはイジワルだ…」
 そう言いながら、ぷぅ〜っと頬を膨らませて上目遣いに俺の顔をじ〜っと見遣るるーこ。はぁ〜っとため息を吐きつつ辺りを見回していると、青白い炎とうめき声の反対側から、ぴかっと強烈な光が何秒間か続いた後、どこの言語とも知れない、テープを三倍速で進めたようなそう言う声も聞こえてくる。一瞬にしてびびりあがる宇宙人怖い派の面々。特にこのみは…、
「う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁ〜〜ん。もうダメだよ〜。宇宙人に連れて行かれちゃうよ〜…」
 と、泣きながら俺に抱きついてくる。雄二は相変わらず行方不明…、そして普段、いつもは頼れるお姉様も今は…、
「や〜らぁ〜、や〜らぁ〜、う、う、うわぁぁぁぁぁ〜ん」
 全く役に立たない。そんなタマ姉がまるでこのみのようで可愛いと思ったのは俺だけの秘密だ。しかしどうしよう…。このまま霊と宇宙人? の餌食にされるのも嫌だし…。やっぱり逃げるしかないのか…。う〜ん…。考えていても仕方がないか。三十六計逃げるに如かずとは言ったものだしな。うん。さっさと決める。そして俺は大声でこう言った。
「みんな! お堂まで逃げるぞ! 相手は得体の知れないやつかもしれない。今こうしていても食べられるか実験材料にされるか呪われるかのどれかだ。俺もみんなを守り切れるかどうか分からない。でもお堂に行けばなんとかなると思う。いや、何とかなる、ううん、何とかして見せる。そのつもりだ!! だからみんな! 俺についてきてくれ!!」
 お堂は人魂とUFOのちょうど真ん中の獣道を行った先にある。だから途中でさらわれるかもしれない。だがこんなところで試験体や憑依させられるなんて嫌だ。みんなが思うより俺自身が嫌だ。後どれくらい生きられるか分からないけど、命が続く限り生きていたい。そういう生への執着が芽生える。なんとしても危機を脱してやる。そう思って、みんなに叫ぶ。
「俺の後に続け!!」
 と…。そこからは覚えていない。“う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!” と言う俺の雄たけびが自分自身の耳に聞こえるだけだった。で、どこをどう走ってきたか分からないが、無事、裏山の神社に到着。ふう、命からがらここまで逃げてくることが出来たけど、これからどうすればいいんだ? 雄二は相変わらず行方不明のままだし…。これからどうしよう。はぁ〜。と深いため息を一つ。と、逃げる途中で、雄二の声がしたような…。まあ、気のせいだろう。
「落ち着いた? みんな……」
 そう言ってみんなの方に振り向くと、“こ、怖かったよ〜!!” と言いながら抱きついてくる女性陣一同。ぽよんぽよんした感触が体のあっちこっちから迫ってくる。得てしてそう言うのが苦手な俺は思わず、“ぎゃぁぁぁーっ!!” といつもなら逃げ出したくなる(と言うか逃げ出す)のだが、現在おかれた状況からは逃げ出すことも出来ずに身を預けるしかないのだった。はぁ〜、と今日何度目か分からないため息を吐く。と、どこからともなく、今の今まで行方不明だった雄二が現れる。走ってきたのかどうか知れないが汗まみれで、どことなく俺を見つめる目は、羨望と憎悪に満ちていた。
「ゆ、雄二!! 今までどこに行っていたんだ? というより、この状況を何とかしてくれ〜!!」
「な、何で…。何でいつもお前にばっかり女の子が集まるんだ? えええええっ?! 女の子が苦手なくせによーっ!! こ、この恋愛ブルジョアジーめ!! ちったぁ俺のことにも目を向けろってんだ!! あんな大掛かりな仕掛けまで用意して、俺は少しでもお前になびく女の子を俺のものに出来ると思っていたのによーっ!! 金がいくら掛かってると思ってんだ? お前はお前で俺の予定外の行動をするしよーっ!! 俺の“ウハウハ肝だめし大作戦”が台無しじゃねーかよーっ!!」
 ついに馬脚を現した。薄々そうじゃないかとは思っていたんだ…。急に消えたり現れたり…、怒ってたかと思えば薄ら笑いを浮かべたりしてたよなぁ〜。やっぱり黒幕は俺の前、地団駄を踏んで悔しがっている男だったんだな…。ゆらりと雄二の後ろから強烈な怒りの波動。この世の地獄がそこにあった。“振り向くな〜、振り向くな〜…”、そう思いながらせめてもの餞に心の中で、“南無阿弥陀仏…” と念仏を唱える俺。そう思っているとタマ姉がゆら〜りと起きると怪しく笑いながら雄二の前に来る。由真もあの強烈な睨みをして立ち上がる。他のみんなもぷるぷる震えながら立ち上がる。笹森さんなんか藁人形と五寸釘を持ちながら狂気に満ちた笑い方をしていた。そして…、死刑宣告のようにタマ姉は言った。
「雄二…、私を怖がらせて、あまつさえ他の女の子といちゃいちゃしようだなんて…。そう。私を本気で怒らせるとはいい度胸ね? はあ〜。やっぱりお姉ちゃんの教育が悪かったのかしら…。もう一度教育し直さないとだめねぇ〜?」
 妖しく笑いながら雄二の方へ近付くタマ姉たち女性陣。特にタマ姉は、昔、再放送で見た必殺仕事人の誰かのように指をポキポキ鳴らしながらゆっくりゆっくり近付いていく。それはある意味雄二の待ち焦がれた風景であるかもしれないし、これから起こる惨劇の始まりでもある。“雄二、骨は拾ってやるぞ?” 俺は耳を塞いで目を瞑り一心不乱に念仏を唱えた。再び目を開けたとき、凄惨たる光景に少しでも動揺しないように…。


 朝日が昇る。やっと暗闇の支配から抜け出したんだと思うとほっと息をついた。“雄二、生きてるか?” ボロ雑巾のように打ち捨てられたモノに向かいそう言う。が、“返事がない、ただの屍のようだ” と、どこぞのRPGの名言のような台詞でも聞こえてきそうなくらいにボコられている親友の姿があった。まあそれは当然だと思う。あそこまで女性陣(特にタマ姉)を恐怖のぞん底に陥れたのだから。でも俺は雄二の気持ちも少しは分かる。俺だって雄二と同じ気持ちならやっていたかもしれない。こんな大掛かりなものはさすがにないけどさ…。
 お堂の縁側には疲れきった表情で、でも心なしか安堵した表情で眠っているお姫様たち。昨日から大変だったもんね? そう思いながら安心しきったその寝顔に思わずにっこり微笑んだ。夏休みももうすぐ終わり。俺たち二年生はいよいよ進路問題の時期になる。これが最後のバカ騒ぎになるんだろうな…。そう思いながら東の空、昇ってくる朝日を見つめて大きなあくびを一つする俺がいるのだった…。

おわり

おまけ

 町まで降りてくる俺たち。このみが“お母さんに何か冷たいものでももらおうよ”と言うので、全員でこのみの家へと向かう。裏山から約10分。ぺちゃくちゃとおしゃべりしながらの女性陣。で俺は何とか歩けるまで回復した雄二の肩に手を貸して歩いている。まだ頭が痛いのか雄二は首をぶんぶん振るとこう言った。
「くっそー!! 姉貴のヤツ…。思いっきりやりやがって…。まだ頭がガンガンするぜ……。なあ、貴明。何で俺たち、姉貴に頭が上がらねーんだろうな?」
「言うなよ……。こっちが悲しくなるだろ?」
 いつもどおりの会話。そうして話しているうちにやっとこのみの家が見えてくる。ふぅ〜っとため息を一つ。ふと振り返り、みんなの顔を見ると安心しきった顔だった。玄関前、このみが“ただいま〜っ!” と大きな声で言う。“お帰り〜” と、これまたいつもの春夏さんの声。ぱたぱたぱた。と廊下を歩くスリッパの音も軽やかに聞こえる。でいつものようにガチャっとドアを開けると…。
「ひいいいいーっ!! のっぺらぼう!!」
「あががががーっ!! グレイ宇宙人!!」
 ズテン。春夏さんの顔を見るや否やひっくり返る女性陣。なっ? 何でだ? そう思い春夏さんの顔を見た瞬間、息が止まりそうになった。そう、春夏さんの顔は、やけに白く目も開いているのか閉じているのか分からない。そんな顔だったんだ。ただ、春夏さんのこめかみがぴくぴくぴくっと動いていた、と雄二は後に語っている。“どう言うことか説明してくれるかなぁ〜? タカくん、ユウくん…” 怒りの相を押さえて笑っている春夏さん。笑っているだけでこんなに怖いものだとは俺は今の今まで知らない、というかこんな恐ろしい春夏さんは見たことがない…。で結局、俺たちは春夏さんから小一時間思いっきり叱られる羽目になってしまった。とほほ…。

ほんとにおわり