炬燵の上のバースデーケーキ
「美咲、誕生日おめでとう」
私の前、にっこり笑顔で彼がそう言ってくれる。今日11月7日は私の誕生日。いつもは家族と水越さんとあと数人の友達を呼んでパーティーなどをするんだけど、今年はどうしても外せない用事があるとかで家族はみんな出払っていて…。水越さんたちも何か忙しいみたいで朝倉君と二人っきりのパーティーとなっていた。
“どうせ二人っきりなんだしさ、もしよかったら俺の家に来ない? ご馳走買って待ってるから…”
お部屋で頼子を撫でながら今日のことを電話で話してると、ふと彼がそう言ってくる。
「それじゃあ、お邪魔しちゃおうかな? えへへ…」
付き合いだして1年と半年。今では学校公認のカップルらしい。杉並君がそう言っていた。家族とも会った。妹さんはあの窓からいつも眺めていたころと変わらないとても可愛い姿をしていた。
「ぐうたらでどうしようもない兄ですけど、よろしくお願いしますね?」
そう言うと、ぺこりと頭を下げる。その姿が愛らしくて私もぺこりと頭を下げる。二人でぺこぺこ頭を下げあってるものだから、朝倉君は呆れてたっけ…。そう考えるとまた一人、微笑んでしまう。朝倉君のおうちに行く準備をする。その間、頼子はお部屋の中をうろうろ。“お前も一緒に行きたいの?” そう言うと“にゃ〜”と一鳴き。もう一度電話をかける。
「ああ、いいよ。じゃあ頼子の分も用意しておかなくっちゃな?」
そう言う彼。にっこり微笑んだ表情が目に浮かんだ。玄関を出るころにはもう夕暮れ時。朝倉君の家に着くころには真っ暗になってることだろう。そう思いながら歩く。もうすぐしたらここも光のカーテンみたいにきれいに装飾されるんだろうね? 大通りにある街路樹のところ歩きながらバスケットの中の頼子に向かって話す。バスケットから顔を出していた頼子はぶるんと一つ震えるとバスケットの中に入ってしまう。寒いんだろうね? そう思いバスケットを見てると後ろのほうから私の名前を呼ぶ声が聞こえる。振り返ると…。
「さあ、ろうそくに火をつけて…と、これでよし!」
頼子は炬燵の中で気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らしている。私もにっこり微笑んで電気の消えた部屋、ろうそくの灯の向こうの彼の顔を見つめていた。一緒に歌を歌い、ろうそくの灯を吹き消す。彼がぱちぱちと手をたたいて祝福してくれた。頼子は相変わらず炬燵の中で気持ちよさそうにゴロゴロ…。微笑みながらケーキを見る。
誕生日ケーキには、“HappyBirthday Misaki”と言う文字がチョコレート版の上に可愛く書かれてあった…。
END