おかんむりいいんちょ’s


「だから、こうやって謝ってるじゃないのさ〜。いい加減機嫌直してよ〜。って! またそうやって頬を膨らます〜…」
 9月も半ばを過ぎた日曜日、ボクと秋原くん…じゃなかった春原くんはそれぞれの恋人に謝っていた。と言うか謝っている最中なわけだ。うう〜っと涙目の上目遣いに恨めしそうに見遣る目4つがボクと春原くんの間抜け顔を居貫く。その顔はまるで同じ顔が2つ並んでぷく〜っと頬を膨らませているのでどっちがどっちか初めて見る人には分からないだろう。一応ボクの目の前にいるのがボクの恋人の椋さん、笑った顔がチャーミングな彼女。で、春原くんの前でぶつぶつ文句を言っているのが椋さんの双子の姉、杏さんなわけだ。って言うかそんな顔をされるとちょっとだけイジワルをしたくなるんだけど、後で何をされるかわからないのでそれはボクの胸の内に閉まっておいた。
 まあ涙目の上目遣いにボクたちを見遣っている2人を前に何で謝っているのかと言うと、今年はお誕生日のことをすっかり忘れていて気が付いた時にはもう誕生日から早5日が過ぎていたころだった。そういやここのところドキドキしてるかなぁ〜っと思いきや、ちょっと拗ねたような顔になったりしてたわけだけど、要はボクが誕生日を忘れてるもので拗ねてああ言う顔をしてたんだね? と思う。とにもかくにも忘れていた者同士、こうやって必死になって謝ってはいるんだけど…。
「勝平さんも春原くんもひどいです。私はちゃんとお誕生日お祝いしてほしいのに…」
 とこんなことを言ってまたぶすっとした顔になるボクの彼女。お姉さんはお姉さんで春原くんに難癖をつけてるし…。困ったなぁ〜っと思ってるところへ、天の助けか神の使者か、朋也クンが現れる。“ちょっと聞いてよ、朋也〜。陽平ったらひどいのよ〜…” とまくし立てるようにここぞと言わんばかりに文句をどこかで見たマシンガンのように言う女の子のように言うお姉さん。“朋也ク〜ン(岡崎〜)、何とかして〜” とでも言うような目で朋也クンのほうを見つめるボクと春原くん。はぁ〜っとげんなりした顔で朋也クンはこう言う。
「1年くらい前だったか椋が不良に絡まれてたことあったよな? その時に助けた相手から昨夜メールが届いてな。なんでも向こうさんも彼女の誕生日を忘れたとか何とかでもしかしたらと思ってこっちに連絡入れてきたんだと。もし良かったら一緒に誕生日会しねぇ? ってな? と言うか春原のそう言う格好久しぶりに見た感じだな?」
 と、わははと笑ってそう言いながらよいしょと椅子に座る。“何なら今からでも連絡は取るけど…、どうだ?” と言うので春原くんと2人してこくこく頷くボクたち。椋さんたちは納得はいかないもののしぶしぶ了解と言った感じだった。まあお祝いは誰でもしてほしいしね? そう思いながら春原くんと2人、ほふ〜っと息をついてたわけだけど、その行為についてさらに文句を言われたことは言うまでもないこと。


「別にもうええ…。藤田くんにとって私は彼女やのうてただの委員長やって言うことがよう分かった…」
 そう言ってぷく〜っと頬を極限状態まで膨らませておまけの眼鏡ずらしの涙目の上目遣いと言う眼鏡女子の究極最強兵器を持ってオレの顔を睨んでくる彼女。智子の誕生日から1週間後の午後。街をぶらぶら歩いていると急に腕を絡ませられる。誰だと見ると、ぶっすぅ〜っとした彼女の顔があって…。なぜにこのような状態になってしまったんだろうと思うんだが、これはオレの不注意かつど忘れから始まったことなので、いわば“身から出た錆状態”なんだが…。と言うのも、この間抜き打ちでテストなんぞがあって普段当然勉強なんぞしてねぇ〜オレは落第候補No.1の腐れ縁・長岡志保と一緒に追試を受ける羽目になってしまった。先生も意地悪だなぁ〜っと思いつつやっていて彼女の誕生日なんざすっかり忘れてしまっていたわけで…。そういやここのところずっとご機嫌ナナメな顔をしていることが多かったんだが、結局はオレが智子の誕生日を忘れていることに腹を立ててたんだなぁ〜っと思う。ともかくもこの仏頂面とはおさらばしてぇ〜っと思ってあれやこれや宥めすかしてみるのだが…。“ふんっ!!” とでも声に出しそうな勢いでそっぽを向いてまたぷく〜っと頬を膨らませる。
 幼馴染みNo.1でオレの彼女であるあかりに言わせるところが、“10000%浩之ちゃんが悪いっ!!” と普段は妹分な感じなのにこう言うときだけお姉さんぶって言う。しかし言っていることは正論なので言い返すことが出来ない。そんなオレを愉快に感じたのか、昔のことまで持ってきて今回のオレの行動を非難するあかりに少しばかり怒りを覚えたが、結局はオレが忘れたのが原因じゃね〜のか? という考えに至ったわけで…。って言うかあかりよ。最後は自分のことを言ってた気もするんだけどよ? まあこの際どうでもいいか…。とあかりを玄関まで見送ってやれやれと部屋に戻るオレ。そういやあいつの仲間もこの時期だったっけ? なんて1年前に会った他校のやつのことを思い出し、メルアド交換してたんだっけか? とそれらしいメルアドにメールを送ってみたんだが…。


「まあ遅れとっても誕生日を祝ってくれる言うんはありがたいわ。でもな? そっちも誕生日忘れとるってどういうことやのっ?」
 と俺と春原と勝平のほうを足を組んで腕組みしながらくいっと眼鏡を持ち上げてそんなことを言う藤田の彼女。と言うか今回俺は無関係だよな? とは思うものの渚の無言の圧力に気が引けて言えんかった。と言うか今回は春原と勝平が主なんだよな? 俺は全然関係ないじゃないか? とは言うものの、この間、ちょっと待ち合わせに遅れて待たせてしまったのが原因か? とは思うんだが…。しかし、生の関西弁と言うのは非常に可愛くもあり怖くもあるもんだよな。こんな方言丸出しな彼女を持った藤田の哀愁と言うか藤田への羨望と言うか、複雑な感情が芽生えてくる。
 渚にも習わせてみたら結構面白いかも…。とか余計なことを考えてたのがまずかったのか…。“もう! 朋也くんは〜っ!” とぷく〜っと頬を膨らませて怒ったような顔をする渚。まあ怒るのはいいんだが、彼女の怒りの度合いは半端ない。今はまだちょっと怒って拗ねてる程度で済んでいるんだが、本気で怒らせると非常に恐ろしくなる俺の彼女。何が恐ろしいって本当に怒るとどこぞの鉈女のような感じになるんだ。冗談だと言っても、“ウソだっ!!” と目を最大限にまで開けて非常に恐ろしい表情で言ってくるのでこっちは何も言い返せないわけで…。そうなる前に謝っておくことは俺にとっては必要不可欠であり、またこっちが悪くなくても一応は謝っておくことにしているので、将来家庭を渚と持ったら絶対かかあ天下になってしまうなぁ〜っと思うと少しと言うか大いに後悔してしまうことは必至なわけだが…。とにかく今は謝るべしと言う感じにぺこぺこ頭を下げる俺。と横を見ると春原は杏に、勝平は委員長に、藤田は藤田のところの委員長に、それぞれの彼女に俺と同じように頭を下げていてそれが異様に滑稽に思えた今日9月17日、俺の女友達である藤林杏とその双子の妹で俺のクラスの委員長の藤林椋の誕生日から1週間と1日過ぎた日であり、また俺が1年前に知り合った藤田のところの彼女・保科智子の1週間後の誕生日だ。余談ではあるが、その後ものすごい高級なレストランのケーキバイキングへと引っ張られ、あれやこれやバカ高いものをこれでもかと言うくらい食われたことは言うまでもなかったことだ…。と言うか今回俺は直接関係ないじゃないかよ〜?!

END

おまけ

「あっ? …ねえ、陽平。ちょっといいものがあったしあれ欲しいんだけど…」
 1週間と1日遅い誕生日会の翌日の帰り道、僕の隣りでは彼女・杏がこんなことを言ってはファンシーショップの前で腕を引っ張っている。昨日はバカ高いケーキバイキングをこれでもかって言うくらい食べて勘定は全部僕たちに払わせたくせに〜っ! と横暴な彼女のほうを見ながらそんなことを考えてると、“何よ〜。誕生日忘れてたくせに〜” と口を尖らせてこれでもかって言うくらいぶつぶつ文句を言う。多分考えてたことが口に出たんだろうね? そんなことを考えてると、“ほらほら、行くわよ陽平” と僕の腕を自分の胸に押し付けてぐいぐい引っ張っていく杏。その顔は喜びを爆発させたような、そんな顔。こんな顔をされては断るわけにもいかず…。店の中へと押し込まれてしまった。岡崎も柊ちゃんも、あと藤田もこんな感じなのかなぁ〜っと思うと嬉しさ半分悲しさ半分と言ったところか。と、とにかくこれ以上はお金を使わせないで〜っ!! 諭吉さんが…、諭吉さんが〜っ!!

TRUE END?