1/fゆらぎ
この間、きれいなろうそくを見つけました。今年から大学生になった私。でもお友達を作るのはなかなか難しいですね? そう思います。でもそんな私を応援してくれる人がいます。藤田浩之さん。私の大好きな人…。綾香などは、“奥手も奥手、超奥手の姉さんにも彼氏が出来るなんてね?” なんて言っては毎日私をいじめてくるんですよ? まあ、いじめると言うよりは楽しんでると言ったほうがいいのかも…。彼もそう言っていましたし…。高校3年生の浩之さん。今年は受験勉強に頑張って私と同じ大学を目指すんだと言っています。そう言った彼の目。頑張るぞっ! と言う目が、私の心に響きました。“頑張って…” と彼の顔を、夜、思い出すたび私は心の中で言っています。セバスチャンは毎日忙しそうです。春休みに入ってもいろいろと行事があるので、その準備に追われているのでしょう。ダニエルもなんだか忙しそうにしていますし…。ダニエルのお孫さんの由真ちゃんも来年は高校生と言うことで今から勉強しているとダニエルから聞きました。何でも私と彼が出会った高校を受験するとか…。“あの子は頑張り屋さんですから大丈夫ですよ…”って言うと、ダニエルったら涙を流して喜んでましたっけ…。
春休みと言うこともあってか学生さんなどが、嬉しそうに街を歩く姿を目にします。私は彼に誘われていろんなところへ出かけています。引っ込み思案だった私…。口数も少ないし、大きな声で話すことが出来ませんでした。でも彼のおかげで今は何とか人前で話せるようになりました。その…、大きな声で話すのはまだですけどね? でも、私にしてみたら大きな進歩だって思ってます。綾香は、
「姉さんも浩之と付き合うようになってから大分変わったわね? 何だか表情とか雰囲気とかが明るくなったしね?」
と言って微笑みますが私自身でもそうだと思うのでにこっと微笑みました。この間も彼と偶然街で出会って喫茶店で話をしている最中、私たち姉妹が揃って微笑んで彼の話を聞いていると “天使の頬笑みだな?” と言われてしましました。そう言われた時はなんだか恥ずかしくなって下を向いていたのですけど、綾香も私と同じように恥ずかしそうに下を向いていたので、“やっぱり似てるのかな?”って思って…。そう思うと何だかおかしくなっちゃって“うふふっ” って思わず笑ってしまって拗ねた綾香の機嫌を直すのに苦労しましたっけ?
でも、ろうそくの炎って何だか神秘的です。いつも夜に火を灯して見つめているのですが、あの揺らめきを見つめていると心が癒されるといいますか、浩之さんに抱かれているかのような心が温かくなる感じがします。それだけ彼のことが好きなんでしょうね? そう思いながら、午後のお茶を一口……。そうそう、セバスチャンの息子さんの長瀬源五郎さんは新たなメイドロボ開発に着手したようですね? 助手さんには双子さんのお姉さんを登用したとか……。私にはちんぷんかんぷんでちょっと分からないのですけど、マルチちゃんやセリオちゃんの妹さんが出来るんですね? とマルチちゃんに言うとあのにっこり笑顔で、
「あっ、はい〜。そうですぅ〜。私とセリオさんの妹ですぅ〜。何でも“だいこん・いんげん・あきてんじゃー” って言うものが搭載される前の試作機だとか…。わたしなんかよりは遥かに高性能ではないかと思いますぅ。わたしはドジだしお料理作っても焦がしちゃうし…。あっ、あうぅぅぅ〜」
「マルチさん、それを言うなら“ダイナミック・インテリジェンス・アーキテクチャ” ですよ?」
とにっこり笑顔から泣きべそ顔になったマルチちゃんにセリオちゃんが冷静な言い直し…。その後私とセリオちゃんとでマルチちゃんの頭をなでなでしてあげたことは言うまでもありません。でも難しいことをやっているんですね? 今度エレクトロニクスのほうに行ったら覗いてみることにしましょう…。そう思いつつ午後の紅茶を頂く私。春休みの午後はこうしてゆっくりと過ぎていきました。
夜、この間の例のろうそくに火を灯します。マッチを擦り火を起こして消えないようにろうそくの芯に灯しました。静かなに揺らめくろうそく…。その向こうには私の大好きな彼・浩之さんの温かい笑顔が目に浮かびます。にっこり微笑みながらろうそくの炎を見つめる私。1/fゆらぎ…。一般的に癒し効果があるって言われている現象。でもこんな現象より確かなものがあると私は思っています。それはお昼にふっと思ったこと。私の大好きな彼……。浩之さんのことを考えているとき…、浩之さんとお話をしているとき、浩之さんに優しく抱きしめられているとき…。そこまで考えて何だか顔が火照ってしまう私…。私ってば…、そう思い自分の頭をこつんと軽く叩きます。ろうそくはろうを溶かし、だんだんと小さくなります。ふと壁に掛けてある時計を見ると午前1時を差していました。もうそろそろ寝る時間。小さくあくびを一つ…。明日はどうしようかな? 綾香を誘ってお出かけでもしましょうか…。そう思いつつ、ベッドに座って燭台のろうそくにふっと息を掛け消すと辺りは真っ暗。布団に入り横になると途端に睡魔が襲って来ます。もうすぐ夢の中。その一歩手前で私はこう思いました。
“浩之さん、大好きです……。”
って…。うふふっ……。
END