パーティー会場の準備をしようよ


 秋も終わり本格的な冬の到来を告げる木枯らしの吹く明日11月7日は俺の彼女にして深窓の令嬢・鷺澤美咲と知り合いの藤田の腐れ縁・長岡志保の誕生日だ。最近と言うか長岡に出会ってから美咲は変わった。どう変わったのかについては長くなるので一例だけを取ると、引っ込み思案で大人しい印象だったのが、お茶目で出たがりになったわけだ。これはもう藤田のところの女友達・長岡に多分に影響を受けたに違いないと思う。今時な女と言ってもおかしくないやつなのではあるが、美咲は、“デカルチャー!” と某ロボットアニメのようにカルチャーショックを受けたんだろう。深窓の令嬢から今時のお嬢様へと変身の真っ最中なのか? と今更ながらに思う。
 この間も、デートに行く約束なんかをして、広場の大時計の前で待っていたわけだが“朝倉く〜ん” と言う声が聞こえてバッと後ろを見ると大胆にも超ミニのタイトスカートに今時にジャケットを着込んだ彼女が走ってくる。と言うかあれだけミニだとちょっと屈んだだけで大事なものが丸見えになるんじゃなかろうかとも思うんだが…。とふぅふぅ息を切らせて走って来た美咲のスカートをしげしげと見遣っていると、俺の視線に気づいたのか、顔を真っ赤にしながら“き、今日はちょっと大胆に攻めちゃいましたけど、これがいわゆる今どきの女の子ルックなんですよね?” と真剣そうに言ってくる。いやちゃしかに男とすればいつもは清楚な彼女がこんないやらセクシーな格好になるのはこの上なく嬉しいんだが…、嬉しいんだが、あまりにも度を越してないか? そう思って考えていたことを告げると、急に恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして座り込む。と座り込んじゃダメ〜! 前から見える〜!! と言うことで途中にあるブティックで普通のミニスカートを購入したわけだが…。と言うかあんな超ミニなんてどこで知ったの? と聞くところが、
「たまたま夜に目が覚めて寝られなくて仕方がないからテレビを見てたら…。朝倉くんもこう言う格好が好きかな〜って思って恥ずかしかったけど履いてみたんですけど…」
 と言うことらしい。一体どこのテレビ番組だ? 抗議の電話をしてやる! と普段なら絶対に考えないことを考える俺がいたわけで…。まあ今まで世間知らずの深窓の令嬢だったんだから致し方ないと言うとそれまでになるんだけど、急にベクトルが変化するととんでにもない方向に行くんだなぁ〜っと改めて気づかされたわけだ。
 で、今年も何やら誕生日会なんぞを企画していて、俺はこの間から美咲の家に足しげく通っているわけだが、悪友・眞子なんかには、“あんたが美咲の家に行くだなんて何か怪しいわね〜?” などと少々睨まれているわけで。正直俺だって分からんのだがな? まあ、男の友達なんて知ってるのが俺くらいなもんだろうから、力仕事なんかを頼みやすいんだろう。現に今、筋肉痛であちこち湿布薬なんぞを貼っていて周りにす〜っとした匂いを漂わせているわけだが…。ちなみに眞子にも手伝わせてやろうとは思って声を掛けたんだが、手から炎を出されて断られてしまった。口で言わず手から炎ってどういう了見だろう…とは思ったが、相手が相手だけに言うと絶対に鉄拳制裁が待っていそうで恐ろしくてとてもじゃないが頼める相談ではなかった。萌先輩はどうだろうか? いや、あの眞子の様子じゃ無理だろう。他のヤツらもそれぞれ何やらかやらで忙しそうだしな〜。はぁ〜。と言うことで今日もまた最後の力仕事が待っているんでこれから美咲ん家に向かわにゃならんわけだ。杉並も一緒に連れて行くか? とも考えたが極度の人見知りなのか男性恐怖症なのか美咲は俺以外の男とは、まともに目も合わせられないわけで…。しかし今日中に準備しておかないと、長岡に何を言われるか分かったもんじゃないしなぁ〜。と考えて、ふといい案が浮かぶ。そうだ、あいつなら何とかなるかも知れない。そう思い、携帯を取り出す俺がいた。


 今年もこの時期がやって来てしまった。オレとしてはあいつの誕生日なんざ祝いたくもねーわけだが、ほとんど毎回お祭り騒ぎにはなってるよなぁ〜っと思う。いつぞやかにふと知り合った朝倉の野郎の彼女・鷺澤だったっけか、あの子の家に行って先輩の家にも勝るとも劣らない豪華な料理や設備なんかを目の当たりに見て、浮かれた腐れ縁の女が、“今年もサギーの家に行くわよね?” などと言ってくるわけで。そんなそんな毎回の如く呼ばれるなんて失礼にもほどがあるっつうもんだ。とは思うもののこう言うことには遠慮も何もねー女なんで、もし行かねーなんて言おうもんなら文句がどこぞのマシンガン女の如く飛び出してくるわけで…。それだけならまだましなんだが、あいつの場合次の日になってからのほうが少々と言う会大いに厄介なわけだ。と言うのもそう! 妙な口コミネットワーク・志保ちゃん情報なんて言う怪しげな伝言ゲームみたいなものを使い、オレを追いつめてくるわけで…。高校時代から? いや中学だっけか? まあその辺はいいとしてもだ。そんな怪しげな情報、どこで取ってきやがるんだ? とは思うんだが…。
 そうそうこの間もオレがあいつのお願を却下したばかりにとんでもねー騒動になっちまったわけだ。まあ騒動自体はここでは端折るが彼女であるあかりからはむぅ〜っとした顔でしばらく見られてしまったことは言う間でもなく…。と言うかありゃ全部ウソだ! と言っても、“そりゃ浩之ちゃんはウソでいいかも知れないけど、彼女としてはすごく嫌なんだからねっ?!” と未だにぶつぶつ文句を言っているわけで。正直胃に堪える。と言うかウワサを流した張本人はあっけらかんとしているのがムカつくわけだ。今度何か面倒事でもあったらあいつをいの一番に連れ出してやる!! とささやかな? 復讐計画を創案しているところへスマホの呼び出し音が聞こえてくる。何だぁ〜? と思ってスマホを見ると…。


「ちょっとあんた!! あたしは今日の主役なのよ?! その主役に手伝わせるだなんてどうかしてるわ!!」
 とオレより遥かに軽い荷物を持ちながらぶーたれてるオレの腐れ縁の女友達。あかりが、“まあまあ志保。これも楽しいお誕生日会の準備なんだから…” と言ってギロリとオレを睨んでる歩く3面記事を宥めている。向こうのほうでは朝倉が鷺澤と楽しそうに飾りつけなんぞをやっていた。しかし何でオレたちが鷺澤の家で飾りつけなんぞをやっているのかと言うことだが、あの呼び出し音が発端だったわけで。出ると案の定と言うか何と言うかだが朝倉だった。で、“今年も誕生日会を開くんでその準備を手伝ってくれ”と言うことらしい。綾香と芹香先輩に似た姉妹がいるじゃねーかよ。何でそいつら使わねーの? と聞くところが、向こうさんは向こうさんで睨まれて何も言うことが出来なかったらしい。まあお互い似たり寄ったりだよなぁ〜。そんな感じで黙々と準備をしていくオレたち。しばらく黙々と仕事をこなすオレと朝倉。…そういや今日の主役のお2人さんは? と向こうを見てみると、オレの彼女と何やらくすくす笑い合いながら準備をしていた。と、ぐぅ〜っと腹の虫が鳴る。そういた出がけにウインナーロールパンを1個食ってきただけで腹が減っていたんだっけか? と腹を擦り擦りそう思ってると、“お腹、空いたんですね?” と今まで黙々と作業をしていた鷺澤がにっこり笑顔でこう言う。“ああ、ちょっとな?” と腹を擦り擦り言うオレ。鷺澤は笑顔を更に笑顔にさせてこう言う。
「じゃあちょっと休憩にしましょう? もう大体は出来上がったみたいですし…。料理のほうパパパッと作ってきますから…」
 そう言うと、ぱたたたっと走って奥に消えてしまった。あかりが、“1人より2人のほうが早いと思うから私もお手伝いするね?” そう言って鷺澤の後を追いかけていく。一方の腐れ縁とくると、“ああ〜、あかり〜、美咲〜、早く〜” とこうだ。その光景がやけに志保らしくて思わず笑っちまった。よっとあぐらをかいて座るオレに、“美咲の料理は美味いからな〜。期待期待っと…” と同じように横に座った朝倉が言う。まあこれだけやれば後はもう少しで終わりそうだな。終わればいよいよワンマンショー、いや、ツーマンショーか? が始まるのか…。やれやれだ。でも、オレもこうやってワイワイやるのは好きなほうだしな。先輩たちにも朝倉からの電話の後、志保の野郎とあかりに召集令状の如く電話をして呼び出してる間に連絡しておいたでもうすぐ来るだろう。まあ向こうさんも同じようなもんだろう、朝倉の顔を見てそう思った。そんなことを考えながらちゃっかりお相伴に与かろうとしている腐れ縁の女友達・長岡志保とオレの彼女・神岸あかりが隣りの友人・朝倉の彼女、鷺澤美咲の料理を待っている今日11月7日の昼下がりのことだ。さて、食ったらもう一頑張り頑張るぞ!

END