ジャムとイチゴの狂想曲

エピローグ


 そして……、
「佐祐理さん、芹香さん、おはようございます。藤田と神岸は? まだ…ですよね?」
「あははー、おはようございます、祐一さん。あっ、浩之さんたちですか? 今、あかりさんやマルチちゃんが起こしてますけど…。行ってみますか?」
「遠慮しておきます…。はあ、まだですよね…。全く…、東京にいた頃と全く変わってないんだからな、あいつ…」
……
「えっ、すみませんって? 芹香さんが謝ることじゃないよ。じゃあ、俺、先に行ってます…」
 あれから3ヶ月が過ぎ、俺たちは大学生になった。家の近くにある総合大学だ。あゆは、秋子さんのつてで秋子さんと同じ職場に就職した。マルチは掃除のノウハウを買われて秋子さんの職場の掃除主任となった。
 藤田たちは東京へは帰らずこっちの大学を受験した。今は同じ大学へ通っている。
 佐藤もサッカー推薦でこっちの大学に来た。ちなみに、佐藤に3ヶ月前のことを話すと…、
“大変だったね…”
 と爽やかな笑顔で言う。まあ佐藤らしいといえば佐藤らしいのだが…。
 真琴は保母として保育所で働いている。子供のような真琴…。しかし園児たちには人気のようだ。
 栞は、高校2年生をやっている。まあ、あの体型じゃあ、18歳とは呼べないだろう…。
 …天野は高校3年生だ。栞とは対象的に、おばさんくさい。仕草なんかは40代ないし50代だ。天野曰く…、
“物腰が優雅だといってください”
 と言うことだそうだ。後で真琴に聞いたんだが、天野はババシャツというものを制服の下に着込んでいるらしい。おばさんくさいじゃない。彼女はもう、おばさんだ…。俺はそう思った…。


「相沢君。おはよう。今日は名雪は一緒じゃないの?」
「おはようございます、祐一さん。…な、何ですか、祐一さん。私の顔をじっと見て……」
「香里、栞、おはよう。名雪は部活があるから先に行くってさ…。それから栞、今度カレーでも食べに行くか?」
「わっ、何で人類の敵を食べに行くんですかっ? う〜っ。……。また私をからかってるんですね? 怒りますよ? 祐一さん……。そんなこと言う祐一さん、嫌いですっ!!」
「わっ、わっ、怒るな、怒るな。冗談、冗談だって!…」
 栞は、う〜っと俺を睨みつける。何がおかしいのか香里は栞の横で吹き出していた。栞を、1ヶ月前まで俺たちが通っていた学校の門まで見送る。栞は手を振りながら学校に来た生徒の波に消えていった。
 と、葵と琴音が慌ててやってきた。琴音は、たまたま彼女の親戚がこの町にいるらしく、そこで厄介になっているらしい。
 葵もそこで一緒に厄介になっているらしかった。俺に気付くと足を止めて…、
「あっ、相沢先輩。おはようございます」
「あっ、相沢さん。おはようございます。あれ? 今日は藤田さんは? ご一緒じゃないんですか?」
「ああ…、また例のアレだよ……、全く…」
「そうなんですか?……。大変だなぁ……、神岸先輩も…」
そう言って口元に指を当てて考え込む葵。と、その時、きーんこーんかーんこーん、とチャイムが鳴った。
「あっ、じゃあ、わたしたち、もう行きます。さあ、葵ちゃんも急いで…」
「先輩。私もこれで失礼します。それじゃ…。あっ、琴音ちゃーん、待ってよー!!」
 ペコッとお辞儀をして二人は校門をくぐって学校の中へと入っていく。いやぁ、青春だよなぁ…。俺はそう思った。そうして俺は香里と一緒に大学へ向かった…。
 道すがら、春歌さん・千影さん・咲耶さんと出会って、一緒に大学へ向かう。向かう途中…。
「祐一君、今度またみんなで遊びに来てちょうだいな…。私たちのお兄様って、男友達が少ないのよね。今朝も祐一君たちに会いたいなぁって言って寂しがっていたわよ?……」
「雛子ちゃんと亞里亞ちゃんは、あゆちゃんやマルチちゃんに会いたいって泣きべそをかいていましたし…。それに鞠絵ちゃんだって…、栞ちゃんに会いたがっていましたよ?…」
「まあ……二人とも……。祐一君にも……都合というものが……あるだろう?……。ねえ……祐一君……」
「あっ? そ、そうですね……、あゆもみんなに会いたがっていたしね…。う〜ん。……じゃあ、明日でもみんなを連れて遊びに行きましょうか? どうせ明日は日曜だしね……」
「でも、相沢君。明日は北川君とツーリングに行くって言ってなかったっけ?」
「パスだ、パス!! あんなアンテナ毒電波野郎より、航さんや藤田といる方がよっぽどマシだ!!」
 香里は、くすっと笑って言った。
「そうね…。あたしも久しく航さんに会ってなかったし…千影さんたちともゆっくり話したいしね…。まあ、いいでしょう。あっ、栞にはあたしが言っておくから……」
「ふふっ…、香里くん…私も……だよ…」
 と、そこへ…、
「あ、相沢ぁ〜。俺たちの友情はどうなったんだぁ〜?!」
 そういう悲鳴にも似た言葉を発しながらやってくる北川。一応、こいつにも3ヶ月前のことを話しておいた。
 話すことは話したんだが、こいつは全然俺の言うことを信じようとしない。まあ、それが北川らしいといえばそうなんだろうが…。
「うるさいわ…。北川君。少し静かにしててくれない? あたしは相沢君たちと話してるんだから…」
「で、でもよぉ〜。美坂ぁ〜……」
「へぇ〜…。あたしに逆らう気?……。いいわよ。北川君……」
 そう言うと香里は不敵な笑みを浮かべて、鞄の中から常時携帯している愛用のメリケンサックを取り出す。その光景を見た北川は、
“もういいですぅ〜。さようならぁ…”
 と言うと一目散にキャンパスの方へと消えていった。全く進歩のないヤツめ…。ふと、千影さんたちを見る。くすくすと笑っていた。


 大学が見えてきた。千影さんたちとは門をくぐったところで別れる。俺は香里と雑談しながら教室へと向かった。教室は…っと、ここでいいんだな。受ける科目を確かめて、俺は中へ入った。
「くぅ〜。うにゅ……」
 案の定、名雪が部活を終えて机に突っ伏していた。はぁ、全く、爆睡眠り姫なんだからな…。でも、まあいいか。
幸せそうに眠る名雪の髪の毛を優しく撫でながら、俺はそう思った。
 藤田はぎりぎりになってやってくるだろうし、神岸はそんな藤田を優しく見つめている……。
 そして長岡がやってきて、藤田と喧嘩する。矢島や佐藤は俺たちと苦笑いだ。平凡な一日が、今、始まろうとしていた……。

〜 FIN 〜