誕生日の演奏会
9月23日は可憐のお誕生日。
いつもは大好きなお兄ちゃんと一緒に誕生パーティーをするんだけど、今日は出来なくなっちゃったの…。だって、演奏会と重なっちゃったんだもん。お兄ちゃんにそのことを言うと、
「そっか…。残念だけど仕方ないよね…」
そう言って寂しそうに微笑んでたの…。可憐もとても残念だった。だって大好きなお兄ちゃんの優しい笑顔が見れなくなっちゃうんだもん。残念そうな可憐のお顔を覗き込んで…、
「じゃあさ。その演奏会に僕も連れて行ってくれない? 僕、演奏会なんて行ったことないし…。それに可憐の頑張ってる姿を見たいんだ…。いいかな?」
そう言って可憐のことをちょっと上目遣いで見てくるお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんに…、
「うん!! 可憐うれしい!! お兄ちゃん、ありがとう!!」
可憐はそう言ってお兄ちゃんに抱きついちゃった。えへへっ…。まだまだ甘えん坊さんだね。可憐って…。
次の日、誕生日当日。可憐たちは演奏会場へと向かったの。駅前にある小さな会場。可憐は小さい頃からピアノを習っていて、発表会の時は毎回来るんだけど、お兄ちゃんは初めてだったみたい…。
どぎまぎしながら、可憐にいろいろ聞いてたから…。
演奏会が始まったの。可憐は5番目。最後です…。順番が可憐のほうに近づいてくる。どうしよう…。可憐、なんだか緊張してきちゃった。お兄ちゃんが見てるせいからかな?
「次は海神可憐さん。曲はショパン、“子犬のワルツ”です」
ビーッと言う音とともに幕が上がります。可憐はお兄ちゃんの姿を探します。いました。ホールの中央で微笑みながら手を振っているお兄ちゃんが…。
演奏中、可憐はお兄ちゃんに、いえ、お兄ちゃんだけに聞いて欲しくて…。一生懸命ピアノを弾きました…。
演奏が終わり、可憐はお兄ちゃんのほうを見ました。でも…、お兄ちゃんがいません。
どうしたんだろう。可憐の演奏が上手じゃなくって帰っちゃったのかな…。そう思うと途端に悲しくなって可憐の目から涙が零れ落ちそうになりました。その時、司会のお姉さんがこう言います。
「えー、海神可憐さんでした。実は今日9月23日は可憐さんのお誕生日なのだそうです。ですから、お兄さんに花束を贈呈していただきたいと思います。それではお兄さん、どうぞー」
可憐はびっくりして幕の方を見ます。お兄ちゃんが、大きな花束を抱えて、可憐の方へ歩いて来ていました。
「びっくりした? 実はあの司会のお姉さんは僕の友達のお姉さんでね。お姉さんに可憐の誕生日のことを言うと、“花束贈呈してみない?”なんて言われちゃってさ…。悪かったね…。急にいなくなっちゃったから、不安だったろう?」
演奏会からの帰り道、お兄ちゃんはそう言って可憐の肩に手を置くとそう言ってきます。可憐は首を振ります。こう言いました。
「ううん…。最高のプレゼント、ありがとう。お兄ちゃん。大好きっ!」
秋の日が暮れていきます。そんな夕焼けの中、可憐とお兄ちゃんは、微笑みながら手を繋いでおうちに帰るのでした。
END