誕生日は涙色のように
今日12月20日は私の誕生日…。
でも私はちっとも嬉しくなんてない。だって、私の最愛の人は…。
そう、あれは3年前の今頃だったわ…。その日もこんな寒い日だったことを覚えてる…。私は、お兄様を待っていた。世界中で誰よりも好きな人を…。
「はぁ、はぁ、はぁ…。ま、待ったかい? 咲耶…」
愛する人が走ってくる。私の愛する人が…。
「おっそーい!! お兄様、こんな可愛い妹を待たせるなんて…」
ぷぅ〜っと頬を膨らまして拗ねた表情を見せる私…。内心は拗ねてなんていない。お兄様を待ってる時間も楽しい時間だから…。横目でお兄様を見ると、案の定困った顔をしていたわ。
「咲耶、悪かったよ…。代わりといっては何だけど、今日は何でも咲耶の言うことを聞くよ…。だから…。さあ、機嫌を直して? ねっ?」
「…何でも? 例えば私がここでキスしてって言っても?」
「そ、それは……」
お兄様の顔がますます困った顔になる。なんだか可哀想な気もするので止めにしてあげた。
「って、冗談よ…。あっ! もう映画が始まっちゃう! 行きましょ、お兄様!!」
そうして、映画館に入った。映画の題名…。なんて言う題名だったか、それはもう忘れちゃった…。
ただ、ラブロマンス物だったって言うことだけは覚えている。映画を見終え、館内から出てくる私たち…。空にはちょっとだけ早いサンタクロースからの贈り物。白い妖精たちが舞っていた。
「ねえ…。お兄様。さっきの映画の別れのシーン、とってもロマンチックだったわよね?」
頬を染めて聞く私…。お兄様の腕に体を密着させて、顔を覗き込む。お兄様は…、
「さ、咲耶? は、恥ずかしいからさ…。その…、もうちょっと離れてくれない?」
そう言ってちょっと恥ずかしそうに俯くお兄様。ふふっ。お兄様ったら…。
「い・や・よ…。だって寒いんだもの…」
私は嬉しくなってますます密着させる。多分お兄様の困った顔をもっと見たかったんだと思う。その時だった…。
「…あっ!! 咲耶っ!! ごめんっ!!」
どんっ! と、急にお兄様の声がして、突然、私はお兄様の腕から突き飛ばされた。
「いったーい! ちょっと、お兄様! いきなり突き飛ばすなんて…酷い…じゃ……な……い……」
突き飛ばしたお兄様の方に振り向き、文句の一つでも言ってやろうと思った私の目に写った映像…。それは……。
どこからか分からないけど、血を流して倒れているお兄様…。それと、雪でスリップした車。車の運転手も気絶しているみたいだった。一瞬……、目を疑った…。う、うそ…。うそよね……。よろよろと頭をもたげると私はお兄様の元へと向かう。
薄っすらと雪の積もった道路の片隅で、真っ赤な血溜まりが出来ていた。その中心にお兄様は倒れている。人が集まってくる。救急車も来る。…訳が分からなかった……。
「もう、あれから3年も経つのね…。お兄様……。でも、私は…、私はっ! うっ、うっ、うっ…」
お兄様の十字架の上にはあの時と同じ…、薄っすら雪が積もっていた。お兄様の十字架を抱きしめて、静かに泣いた。ひとしきり泣いて立ち上がる。吐く息が白い。今夜は冷えるだろう。だって、こんなに寒いんだもの…。私はそう思った…。
お兄様の十字架から離れると、涙が私の頬に一雫流れた。一陣の風が吹く。涙は風に吹かれて都会のビル郡を抜けて、空へと上っていく…。そう、それはお兄様のいる国へ…。私は空へ上っていく、私の涙を見つめた。じっと見つめた。
私の悲しみ…。この悲しみは一生消えることはない…。そう、永遠に……。
FIN