誕生日の応援団


 今日、1月7日は花穂のお誕生日。だから花穂、こうやってお兄ちゃまとお買い物に来てるの…。
「ねえ花穂、今日は花穂の誕生日だから、花穂の好きなもの買ってあげるからね?」
 ショーウィンドウに映った綺麗なお洋服を見ながら、優しそうな笑顔でお兄ちゃまは言ってくれる。花穂はそのお兄ちゃまの笑顔で十分だよ?
 てくてくと歩きながらお兄ちゃまとお話してたの。ふと、ショーウィンドウを見ると…、
「あっ…。これ…。懐かしいなぁ」
 花穂は懐かしげにそれを眺めた。だってショーウィンドウには綺麗な星型の指輪が光ってたんだもん…。
「なに見てるの? 花穂? あっ! 僕がプレゼントしたやつだ…。へぇ〜。まだあるんだね…」
 お兄ちゃまがそう言って花穂のお顔を見て微笑む。花穂もお兄ちゃまのお顔を見て微笑んだの…。
 3年前、チアでお兄ちゃまの部活の試合の応援に行ったときに、花穂がドジしちゃって、それでお兄ちゃまの学校が負けちゃったの…。お兄ちゃまのお友達は悔し涙を流してた。三年生最後の試合だったのに…。
 学校に帰って、チアのミーティングの時に竜崎先輩が……、
「何? 今日の応援はっ? 特に花穂ちゃん!! 何てことなの? 今日は3年生にとって一番大事な試合だったのに!! それなのにあんなミスをして!! ……もう、やめちゃいなさい…。そんな他の人の足を引っ張るような人はいらないわ……」
 ものすごく怒ったお顔で花穂に言ってきたの。花穂とってもとっても悲しくなっちゃって、走って竜崎先輩たちのところから出て行ったの…。誰もいないロッカールームの片隅で花穂、泣いちゃったんだ…。
 だって花穂…、自分が悔しくて…、情けなくて……。冬の短い夕日が花穂の背中に当たってる。お兄ちゃま…。ごめんなさい……。花穂が、花穂が悪いんだよね?…。そう思った。
 ガチャッ…と、ロッカールームの扉が開く音が聞こえたんだ。涙を手の甲で拭きながら振り返ると、お兄ちゃまが立ってたの……。
「花穂? ここにいたのか…。…探したよ…。さあ、帰ろう?」
 そう言うと、お兄ちゃまはハンカチを持って花穂の前にやってきて、涙で濡れた花穂の顔を優しく拭いてくれたの…。お兄ちゃま…、ごめんなさい…。ほんとにほんとにごめんなさい…。花穂はお兄ちゃまに抱きついちゃって、大きなお声を出して泣いちゃったんだよね?…。
 帰り道…。ふと今日が花穂の誕生日だって気づいたお兄ちゃまは…。
「そっか…。今日は花穂のお誕生日だったんだ…。部活に追われて全然気づかなかったよ…。ごめんね、花穂…」
 そう言って優しく頭を撫でてくれるお兄ちゃま…。そんなお兄ちゃまを見て、花穂、また泣いちゃったの……。


「で…、帰り道、僕がプレゼントしたのがこの指輪だったんだよね?…。あの泣き虫だった花穂ももうチアリーディングの部長さんか〜。月日の経つのは早いものだなぁ〜…。あはは…」
「ひっどーい! お兄ちゃま!! 花穂もあれから必死で頑張ったんだよ〜? ぷんぷんっ!!」
 頬をぷぅ〜っと膨らませる花穂と、困った顔のお兄ちゃま…。指にはあの時買ってもらったのと同じ形の星型の指輪が光ってる…。小さくなった指輪は宝箱の中…、そう…、お兄ちゃまとの懐かしい思い出とともにしまい込んであるんだぁ…。えへへっ…。

END