看病します

第3話 四葉の場合


「う〜っ、ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ……」
「もう…、おっちょこちょいな兄チャマデスね?」
 妹が僕の額に濡れたタオルを置きながらぷぅ〜っと頬を膨らませて拗ねた表情で見つめてくる。今日6月21日は妹・四葉の誕生日。今日は妹と一緒に散策に出かける予定だったんだけど…。ご覧のとおりの有様。昨日小雨だと思って傘を持って行かず出かけたのがそもそもの原因。帰ってくる途中で大雨に降られててびしょびしょになって帰ってきたんだよね…。
「とにかく! 今日は一日寝ていてクダサイ! 分かりマシタカ? 兄チャマ!!」
 こう言うと僕の目をぐぐぐっと恨めしそうに睨む四葉。誰よりも僕と一緒にいたい四葉はいつも僕の行動をチェックしている。だからじゃないが四葉には隠し事は無意味なわけで…。まあ隠し事って言う隠し事はないんだけどね?
 親の都合で離れ離れに暮らしていた僕たちではあったが妹の小学校とともに一緒に暮らすようになった。と言っても妹は帰国子女だ。僕の父さんは貿易関係の仕事をしている。ちょうど僕が大学付属の小学校の入試で日本に帰ってきたときにイギリスのほうで妹は生まれたって言うことを預けられた先のの母さんの妹(僕にとっては叔母さんになるんだけど…)から聞かされた。父さんたちが帰国した時に初めて妹と見て大喜びしたっけ…。懐かしいなぁ〜。
「でも散策に行くの楽しみにしてたんじゃない? 四葉」
「そ、それは楽しみにしてマシタけど…。でもでも、四葉は兄チャマのお体のほうがもっと大切なのデス!」
 そう言うと涙目になる妹。はぁ〜っと大きなため息を一つ吐くと僕は妹の頭を撫でる。まるで猫のように目を細めて気持ちよさそうな四葉。まあ心配してくれていることが嬉しくもあり、逆に悲しくもあり…。兄って言うのはそう言うものなんじゃないのかな? 嬉しそうな顔の四葉を見ながら僕はそう思った。


「ぐぅ〜、ぐぅ〜……。むにゃむにゃ…。兄チャマ、チェキするデスぅ〜。すぅ〜、すぅ〜…」
 疲れて寝ちゃったのかなぁ…。顔を見ると気持ち良さそうに眠っている。“四葉が兄チャマを看病シマスっ!!” って言いながら先に寝ちゃうんだもんなぁ〜…。ふふふと笑うと肩に掛けたガウンを脱いで妹の肩に掛けてやる。幸せそうに眠っている四葉。僕の風邪も治って来たみたいだ。“四葉、お誕生日おめでとう。今日は散策に行けなかったけど明日は行こうね?” そう小さく言うとまた妹の頭を一撫で…。スタンドを消すと横になる。風邪はもう治りかけ…。そんな今日6月21日、妹・四葉の誕生日だ。

END