看病します
第4話 鈴凛の場合
「じゃじゃ〜ん! こんな時もあろうかと密かに開発しておいた、カゼナオール君一号。アニキ、早速使ってみて?」
「大丈夫だよね? それ…。余計に熱が上がったり、逆に風邪が酷くならないよね? ゴホッ、ゴホッ…」
今日7月9日は、僕の妹・鈴凛の誕生日。僕の家は町工場にある。下が工場で上が一般住居って言う工場街には極々普通にある家だ。手先な器用な妹は、何でも作ってしまう。自作パソコンなんていうのはお手の物。僕の部屋に置いてあるのも鈴凛が組み上げたものだ。このパソコン性能のほうがすこぶるいい。複雑なプログラムを組んでも、ものの10秒ほどで結果が出てくる。“どういう仕組みなんだ?” と妹に聞くと僕にもちんぷんかんぷんな言葉がいっぱい出てくる。普段デジタル人間な僕も鈴凛には負けるよなぁ〜っとつくづく感じてしまうわけで…。
「大丈夫よ。アタシが作ったんだから!!」
「でもこの間のミズムシナオール君はなんか不評だったよ? って! ああっ!」
そう言うと今までのにこにこ顔はどこへやら、ぷぅ〜と頬を膨らませて不機嫌そうに口を尖らす妹。以外に頑固なところがある妹は怒ったら口を聞かなくなる。前なんか半月以上も口を聞いてくれなかった…。ちなみにこの“ミズムシナオール君”、普段工場で働くおじさんたちのために作ったものの評判はもう一つだったようだ。って言うか僕もその被害者の一人なんだけどさ…。
「アタシがせっかく風邪でつらそうなアニキのためにって作ってあげたのにさ……」
ますます不機嫌って言うか半泣き状態の鈴凛。みるみる決壊寸前にまでなってしまった。あああっ、困った…。“風邪は自然に治るもの”なんて言ったらそれこそ大変だし、かと言ってあんな怪しい機械はもう二度とごめん被りたい…。と鈴凛のほうを見ると?
「う、う、うわぁぁぁぁぁ〜ん。どこが怪しい機械なのよ〜っ!! って言うか全部聞こえてるわよ〜っ!! ア、アタシが、アタシがせっかく作ってあげたのに〜っ! もう知らないんだから〜っ!! うわぁぁぁぁぁ〜ん!!」
あああっ!! またいつもの癖が出ちゃったよ! ってどうするんだ? 僕……。水虫の二の舞は嫌だし、かと言ってこのまま妹を泣かせておくわけにも行かないし…。で、結局…。
「ゴホゴホゴホッ…。んんんっ。ダ、ダメだ…。熱が39度もある……。うううっ…」
「あは、あは、あはははは……。やっぱりお薬だよねぇ〜? …アニキ、……ご、ごめんなさい…」
ぺこっと頭を下げる妹。あの後、実験につき合わされた僕は逆に風邪をこじらせてしまって…。今は夜。さっき夕飯(当然と言うか何と言うかおかゆだったんだけどさ…)を食べて落ち着いたところだ。まあ、市販の薬でも飲んで今日はゆっくり休んでおこう。治らなかったら明日は病院かな? 僕の風邪をこじらせた張本人・鈴凛に付き添ってもらってさ? 梅雨の終わりの雨の降る今日7月9日。今日は僕の妹・鈴凛の誕生日だ。
END