看病します
第5話 雛子の場合
「おにいたま、だいじょうぶ?」
「う〜ん、まだちょっとだめかなぁ〜。ゴホゴホッ」
今日8月15日は僕の小さな妹・雛子の誕生日だ。今日は雛子と一緒に花火を見に行く予定だったんだけど昨日くらいから風邪を引いたみたいで床に臥せってう〜んう〜んと唸っていた。完璧なお兄ちゃん子な雛子は、僕がいないとダメなようで…。兄としては嬉しいんだけど、これから大きくなってもそうだったらと思うと…。う〜ん。何だかとっても心配だなぁ〜。両親が共働きなため基本的には僕が雛子の面倒を見てるんだけど…。今回は病院に行くしかないかな? そう思ってふらふら〜っと立ち上がる。と…。
「おにいたま!! 今日はゆっくり寝てないとダメなのっ!!」
ぷぅ〜っと頬を膨らませて上目遣いに僕の顔を見つめる雛子。“今日はヒナの言うことちゃんと聞いて寝てるの!! 分かった? おにいたま…” そう言うとえっへんと胸を張る雛子。まるで自分がお姉さんにでもなったような感じだ。心の中で“ふふっ” と微笑むと、僕は“雛子お姉さん”の看病を受けることにした。
「おにいたま〜、ご飯だよ〜? ママがお雑炊作ってくれたから、今日はヒナが食べさせてあげるね?」
「あらあら、じゃあ雛子。お兄ちゃんのお世話、よろしくね? 航も頼むわね。お母さんこれからお仕事行ってくるから…」
母さんと雛子が入ってくる。“これからパート?” そう聞くと、“そうよ? あっ、もうこんな時間。じゃあ行ってくるからお願いね? 雛子” 雛子の目線にまで体を下ろしそう言うと頭を撫でる母さん。雛子は嬉しそうに、うんと頷いた。
「おにいたま? ご飯が終わったらお薬飲んでね? あっ、お水汲んでこなくちゃ、ちょっと待っててよ? おにいたま」
甲斐甲斐しく僕の面倒を見る雛子。その姿を見て僕はにっこり微笑んだ。“おにいたま、ヒナがご本読んであげるね? ちょっと待っててね? くしし…” 食事も終わり薬も飲んで落ち着いた頃、雛子はますますお姉さんぶって、本を持ってくる。読み始めるととっても気持ちがよくなってきた。たぶん薬が効いてきたんだろう。目を閉じるとそのまま夢の中だった。
んっ? と気がつく。辺りを見れば夕日が眩しい時刻だった。雛子は? ときょろきょろと見回すと僕の椅子にもたれかかるように可愛い寝顔が見える。ああ、多分疲れて寝ちゃったのか…。そう思った。んっ? 雛子の寝言が聞こえてくる。
「おにいたま…、早くげんげんげんきになってヒナと一緒に遊ぼうね? ……むにゅむにゅ」
そうだね? 今日は遊べなかったけど、風邪が治ったらまた一緒に遊ぼうね? そんなことを思った今日8月15日、僕の可愛い妹、雛子の誕生日だ…。
END