看病します

第8話 亞里亞の場合


「兄や、お風邪なの? じいや? くすんくすん…」
「ええ、そうでございますよ、亞里亞様。お風邪がお移りになられては大変にございます」
「ごめんね? 亞里亞…。ゴホッ、ゴホッ…」
 今日11月2日は僕の妹、亞里亞の誕生日だ。フランス人形みたいな妹は、じいやさん(実はメイド長なのだけれど、亞里亞がじいやと言うので僕もそう呼ばせてもらっている)の服を引っ張りつつくすんくすんと泣きながらそう聞いていた。僕はと言えば…、この有様。昨日ぐらいから体がぞくぞくし始めて、熱を測ったら38.4度もあった。じいやさんが慌ててお医者さんを呼んで、今さっき診察と治療…、まあ早い話、注射を打ってもらい帰って行ったところだ。ちなみに妹の誕生日会は僕の病気が治ってから開くことになっている。
「亞里亞はお注射嫌いです。くすんくすん…」
「そのためには、好き嫌いなく何でも食べなければなりませんよ? 昨日のお夕食もお残しになられて…」
 じいやさんはそう言うと、ちょっと怒ったような顔をして亞里亞を睨む。妹はものすごい偏食だ。お菓子が大好きだからと言うこともあるんだろうけど…。だからじゃないけど亞里亞は、いつもガミガミと怒るじいやさんがすごく怖いらしい。“まあ、その辺でいいじゃないですか。じいやさん…。亞里亞も反省してるようですし…” 見るに見かねてそう言う僕。亞里亞は僕のほうに寄ってきて、“兄やはやっぱり亞里亞の味方です…” そう言うと抱きついてくる。途端にぷぅ〜っと頬を膨らませると……。
「あ、兄上様は亞里亞様を甘やかせ過ぎですっ! だいたいこの前も…」
 そう言うとぶつぶつ小言を言うじいやさん。まあ、じいやさんの言うことはもっともなんだけどね? でも病気で寝込んでいる人を前に言うのはどうかなぁ〜って思うし、それにね?…。
「じいや、頭から角が生えてるの…。くすんくすん」
 僕の横で上目遣いにじいやさんの顔を見つめている亞里亞のおどおどした顔には、さすがのじいやさんもかなうわけもなく…。


「亞里亞、兄やを助けちゃいました…。うふふっ。あっ、そうだ。今から亞里亞、兄やの看病します…」
「でもじいやさんの言うことももっともなんだから、言うことも聞かなくちゃね? 僕も亞里亞も…。って、看病か…。じゃあお願いしちゃおうかな?」
 そう言うと、うんと頷く可愛い妹。じいやさんも、可愛い妹のあのおどおどした表情には勝てる訳もなく。最後はぺこぺこ頭を下げていた。注射も打ってもらい、もう明日には元気になってることだろう。そんなことを思いつつ目を閉じる。頭には優しい感触。僕の頭を撫でながら歌を歌ってくれる今日11月2日は可愛い妹、亞里亞の誕生日だ。

END