看病します
第9話 咲耶の場合
「もう! お兄様ったらこんな大切な日に風邪なんか引いちゃうなんて……」
僕の横、椅子に座っている妹はこっちを膨れた顔で見つめている。今日12月20日は、僕の妹・咲耶の誕生日。だから今日はおしゃれなレストランを予約していたんだけど、ちょっと風邪を引いちゃって体調を崩しちゃっててさ…。
「ご、ごめんね? 咲耶…。この間からちょっと熱っぽくてさ…。でも年末だろ? 講義に出ないと単位が取れなくなっちゃうからお休みできなかったんだよ…」
僕は今年から大学1年生になって、親元から少し離れたアパートで一人暮らしを始めている。って言っても実際には妹が押しかけてきてはあれやこれやと世話をするので、実家とはあまり変わらない。今だってそうだ。妹は高校2年生。もう、彼氏の一人でも出来ているがはずなんだけど、当の妹は“お兄様と比べたら月とすっぽんよ!” とか何とか言って全然兄離れをしてくれない。はぁ〜っとため息を一つ…。
「お兄様〜、雑炊出来たわよ? さあ、冷めないうちにどうぞ?」
台所に立っていた妹は、エプロンを外すと熱々の雑炊を運んでくる。キッチンミトンをした姿がこの前までやっていたアニメのヒロインにそっくりだった。熱いので気をつけてそっとふたを開けると、いかにも雑炊と言う感じのものが見えてくる。って雑炊なんだから当たり前か…。早速頂くことにする。妹の料理は美味い。この雑炊もとても美味しい。あっという間に平らげてしまった。で、食後のひと時。
「お薬も飲んで早く良くなってよね? そうじゃないと私、お兄様のお友達の前で泣いちゃうんだから…」
咲耶が市販の風邪薬と水を持ってくる。僕の友達の中には妹のファンも結構多い。それを逆手にとってこんな脅迫まがいなことを言ってくるんだ。まあ実際泣かれたことも多々あり…。はぁ〜とまたため息を吐く僕がいるのだった。
「そんなに食欲があるのだったらもう大丈夫よね? お薬も飲んだし……。さ〜て今日甘えられなかった分明日は思いっきり甘えちゃうんだから…。ウフフッ」
妹の顔を見れば、小悪魔っぽく微笑んでいた。風邪も快方に向かっている。明日には治るだろうな…。そう思う今日12月20日は僕の可愛い妹、咲耶の17歳の誕生日だ。
END