お姉ちゃんドキドキする

第4話 鈴凛の場合


 今日7月9日は僕のアネキの誕生日だ。だからか知らないけど、最近は機嫌もいいわけで昨日もにこにこ顔だった。だったと言う過去形なのは今の状況がそうなわけで…。と言うのも今日、アネキの誕生日だったことをすっかり忘れていた僕はこうやって涙目の実に恨めしい目で睨まれているわけで…。いや、最初のうちは覚えていたんだよ? でも今日になって急に用事が出来てしまって…。で今、必死になって謝っているんだけど…。
「どうせ航はお姉ちゃんのことなんか全然気にしてないんでしょ〜っ!! これから時計とか壊れても直してあげないんだから〜っ! それから期末試験なんかも絶対教えてあげないんだからね〜っ!! うわ〜ん」
 と言いながら大泣きするアネキ。ぷぅ〜っと頬を膨らませて上目遣いに僕の顔を睨みつけているアネキの顔はなんていうか可愛く一瞬ではあるもののドキドキしてしまう訳で…。時計とか機械類とかが壊れたときとかはいつもアネキにお世話になっている僕。機械類とかはちんぷんかんぷんで全くわけの分からない僕だからこういうアネキがいるだけで非常に役に立っているわけだけど…。ちなみに父さんと母さんは今朝早くから一泊旅行に行っていて留守にしている。まあ40代前半であんなに仲のいい夫婦って言うのも今時珍しいんじゃないのかな? とも思う。うちのアネキは理数系がものすごく得意だ。かく言う僕はあまり理数系のほうは得意じゃなくていつもアネキに教えてもらってるんだけど…。アネキは“何でいつもアタシばっかり。たまには一人で頑張ってみなさいよ” と口を尖らせて言ってるんだけど、理数系の偏差値が極端に悪い僕には死活問題なわけで、いつも迷惑をかけているわけだ。でも文系は得意なので結構先まで進んでやっている僕に時々アネキは教わりにくるわけで…。何で弟の僕に教わりに来るの? 大体アネキの友達にも文系の人とかいっぱいいるじゃないのさ…、とは思うもののあれでいて結構人見知りする性格のアネキだから、聞くに聞けないんだろうなぁ〜とは思う。
 とこんなことを考えてる場合じゃなかったんだ。今のこの状況を何とか打開しないと…。とは考えるものの、気がついたときにはもう大抵の店は閉まっている時間だったし、ネット購入では早くて明日なわけだから、今日中にしようと思えば朝のうちにしなくちゃいけなかったわけだけど、朝は部活で出かけていてこれっぽっちもアネキの誕生日のことなんか考えてなかったわけで…。こう考えてるうちにもアネキは大泣きに泣くし、“もう、航が一緒に寝てって言ってももう絶対寝てあげないんだから〜。うわ〜ん” って支離滅裂なことを言ってるし。って! いつの話だよ? それ…。はぁ〜っと大きなため息を一つついて、ふっと今朝のチラシを見ると…。


「ほら! もっと上手くしないとお客さんが喜ばないよ!! ボールはこう、もっと高く放り上げるの! エグッ、ヒック…
 相変わらず人使いの激しいアネキだよなぁ〜っとは思うものの、こんなことを言うと大泣きに泣かれるのは必至なわけだから、言えないわけだ。でもねぇ〜。またやるんだ。大道芸大会…。去年は失敗ばっかりして参加賞だけに終わったんでもうさすがにやらないだろうとは思ったんだけど。と言うかしたくないわけで…。でもやらないなんて言おうものなら前述の通り大泣きに泣かれて、後で僕の友達にあれやこれや言って非常に冷たい目で見られるのも必至なわけだから迂闊にも言えないわけだけど…。はぁ〜。これじゃあどっちが年上なのか分からないや。と思いつつアネキの顔を見ると、何でか分からないけどもう笑ってた。練習をしつつ横を見ると楽しそうなアネキの顔。その顔を見ていると途端にボコッと鈍い衝撃。
「な、何をこっちばっかり見てるの? は、恥ずかしいじゃない…
 そう言うを途端に顔を真っ赤にして俯くアネキ。その顔に何故か笑いが込み上げてきて大笑いに笑てしまって、また怒られた。でも明日は忙しくなりそうだね? と思う今日7月9日、滅茶苦茶だけど憎めない僕のアネキの誕生日だ。

END