お姉ちゃんドキドキする

第6話 可憐の場合


 今日9月23日は僕のお姉ちゃんの誕生日だ。僕のお姉ちゃん、まあ一般的に女の人は甘いものが大好きだって言うことらしいけど、お姉ちゃんの場合、それが顕著に現れてるわけで…。この前も家族でバイキングに行ったんだけど、そこでもお姉ちゃんってばケーキとかプリンとかそう言うものばかり持ってきて食べてたっけ。普段小食であまり食べられないお姉ちゃんだけど、甘いものは別腹みたいに入るから不思議だなぁ〜っていっつも思ってるわけで…。そう言えば僕の学校の女の子たちもそうだったような…。あっ、そう言えばお母さんもそうだった。まあ女の人は甘いものが大好きだって言うことなのかなぁ〜って思うわけ。
 僕のお姉ちゃん、背は僕より低くて童顔でお父さん似なので(ついでを言うと僕はお母さん似で背は高いほうなんだけどね?)僕のほうがどうしてもお兄ちゃんに見られることが多い。それが嫌なのか何かにつけて僕の世話をしたがってくるわけで…。この間も一緒に出かけることがあったんだけど、そのときにも僕の服を見立ててくれたりして、正直一人で来たほうがよかったかな? って思った。で、出かけた先でお姉ちゃんにこんなことを言うと、“航ちゃんがお姉ちゃんにまた酷いこと言ったよぉ〜。うえ〜ん…”って言ってぐすぐす泣いちゃったわけで。連れて帰るのに僕がどんなに苦労したことか…。はぁ〜。その後、家に帰ってからがこれまた大変で。でもどう大変なのかと言うと、ぐすぐす泣きながら、ピアノを弾くんだけど、そのピアノの曲が暗い曲ばかりで…。例に例えると“葬送行進曲”とか“レクイエム”とか“魔王”とか…、そんな嫌味としか思えない曲ばかりぐすぐす言いながら弾いてくるんだから…。結局いつも僕のほうが折れて、謝りに行くわけで…。でも行ってもすぐには許してはくれずぷぅ〜って頬を膨らませてお気に入りのクッション(僕が小学校1年生のときにお姉ちゃんのお誕生日プレゼントにお母さんと買ったものだけどね?)を抱きしめてぶつぶつ文句と言うかそう言うことを言ってるんだ。その光景が小さな女の子のワガママみたいなことを言ってきてすごく困るわけだけど…。
 僕のお姉ちゃん、ピアノがとても上手くてコンクールでも何度も賞を取ったことのある、いわゆる音楽家(ピアノ演奏者)なわけだ。学校でも何度もピアノの独演をしたりと、多分注目の的になってるんだろう。現に僕は同級生の友達とかに羨ましがられている。けど家では甘えん坊と言うかそういう感じ。そのギャップに誰も気付くはずもない。まあ僕も敢えて言うつもりはないけどさ…。


「お姉ちゃん、今、暇?」
「うん、暇だけど。でもどうしたの? 航ちゃんのほうからお姉ちゃん誘ってくれるなんて珍しいんじゃない?」
 昼下がりのいい時間。お姉ちゃんの部屋をのぞくとそう言う僕。普段着のお姉ちゃんが不思議そうな顔をしてそう尋ねてきた。“いいからちょっと付き合ってよ” そう言ってカレンダーのほうを見る僕にハッと気づいたのか、お姉ちゃんの顔が途端に真っ赤になって俯いてた。“じゃ、じゃあ下で待ってるからね” そう言うとそそくさと階段を下りる僕。普段女の子なんて誘ったことのない僕にとってはそれが例えお姉ちゃんであっても緊張しちゃうわけで…。多分僕の顔も真っ赤になってるんだろうなぁ〜。って思いながらお姉ちゃんの降りてくるのを待ってる今日9月23日は僕のお姉ちゃんの誕生日だ。

END