引っ越してきて…
第3話 四葉が引っ越しきて…
「今日も兄チャマをチェキするデスよ!」
と、今日も妹は僕の後をつけてくる。また僕の秘密を探ろうとしているのだろうか。まあ秘密なんて今日のこれからの出来事だけで、全くないんだけどね…。今日6月21日はちょっぴりそばかすがあって八重歯が可愛い妹・四葉の誕生日。だから僕はこうして、誕生日ののケーキを買いに来ている。で案の定僕の後を妹が探偵みたいについてきているってわけ。僕の父さんは外交官で母さんはその書記官な年に1、2回くらいしか帰って来ない。今年は例のコ○ナのせいもあって、まだ顔を合わせていないわけだ。でもインターネットの発達した現代だからか、PCのスカ○プなんかで話をする。今日も今朝早くから話をした。妹の誕生日と言うこともあってかプレゼントを送っておいたと言う連絡もあったり、学校のことなんかも聞いてくる。まあ両親とも年がら年中外国にいるので妹の面倒は僕が見ているわけ。
それで何か困ったとかは特にはない。むしろ妹の学校の先生から、“四葉ちゃんはよく下級生の面倒を見てくれるのでこっちは感謝ですよ” とよく言われる。まあ勉強のほうはと言うと、ちょっとう〜んな感じかな? でも、面倒見の良さは僕も認めているし、それを長所として伸ばしていけばいいかなと思う。長所を伸ばす子と短所を切る子とがあるけど妹の場合は完全に前者のほうに当たる。と言うか、元々イギリス生まれで生まれ故郷に初めて帰ってきた帰国子女な妹と面会したときに僕の顔をおもちゃの虫眼鏡で覗き込むように見たりするものだから、ちょっと不機嫌になってしまって嫌な顔をしてしまったわけだけど、妹はそんな僕の顔色を見たのか、今まではしゃいでいたのがまるで嘘のようにしゅんとなってしまって、母さんから、“初めて会うんだし、四葉もせっかくお兄ちゃんに会えたのにお兄ちゃんがそんな顔してたらダメじゃない” と僕を優しく諫められた。まあそれはそうだろうなと思ってその顔はやめたんだけど、妹は現実に会う僕と想像で考えた僕とでかなりギャップがあったらしく、しばらくはあまりしゃべらずに大人しい子だった。元の底抜けに明るくてやんちゃな妹が出てくるのは帰って来てから3ヶ月くらい経ったころかな? まあそんなことも6年も前のことだから今じゃ考えられないけどね。そういうこともあって僕はあまり妹の悪いところは言わないでいいところを見るようにしている。まあ6年前まで田舎のおじいちゃんの家に住んでいた僕が言うのもおかしな話なんだけどね。
前述にも言った通り妹はイギリス生まれだ。だからおかしなところで日本語が間違っていることがある。この前もテレビかラジオかインターネットかで何やら怪しい日本語を覚えてきて、それを学校で使ったところ友達から笑われながら訂正を受けたそうだ。そんな妹にも特技と言うか趣味と言うかそう言うものがある。それが今僕の後をこそこそとつけている妹曰く、“探偵” なんだそうだ。まあ探偵と言うと一番に思い出されるだろうシャーロックホームズを生んだ地出身と言うこともあってか、よく妹から、“探偵” される僕。でもこんな分かりやすい探偵がいたら世の諜報機関は成り立たないだろうな? と思えるほどに分かりやすい。まあよくよく考えてみると出たはいいけど妹の最近の好みを聞いていなかったなぁ〜っと思って、“あ〜、謎が出来たなぁ〜。誰かこの謎を解いてくれる優秀な探偵さんはいないものか…” と後ろにいるだろう妹に向けて、態と困ったような仕草をする。さて、今回の探偵さんはどう出てくるのかな? と待っていると…。
「困った兄チャマですね? 四葉が運よく通りかかったカラ良かったものの…。もし四葉が通らなかったら兄チャマはず〜っと考え込んでたデスよ?」
と得意満面に言う妹。その顔がとても可愛い。僕も、“ああ、本当だよ。助かった。ありがとう四葉” と言って頭をなでると嬉しそうな気持ちよさそうな顔をして撫でられる僕の手に身を任せている。その手には妹の欲しがっていた新しい虫メガネと帽子が手提げ袋の中で今か今かと出番を待っているように見える。まあさっそく今夜あたりに出番が来るだろうね…。とそんなことを考えつつ、梅雨の晴れ間の夕暮れ時、家路を急ぐ今日6月21日、将来の名探偵になるのかならないのか分からないけど、探偵な妹・四葉の13歳の誕生日だ。
END