引っ越してきて…
第9話 咲耶と引っ越してきて…
「はぁ〜、“今年も”と言うか“今日も”ですか…」
と寝不足気味な目に大欠伸をしながら自分の布団の前、もこっとした盛り上がりを見て僕はこう呟く。今日12月20日は学園のアイドルで抜群のプロポーションを誇る妹・咲耶の誕生日だ。今年の6月、家のほうが少々手狭になって来た感もあり、また一度田舎暮らしを体験してみたい感もあったりしてこの長閑な田園風景(とは言え今は銀世界一色)な田舎に引っ越してきた。まあ引っ越しは荷造りから一通り自分たちでやったわけだけど、それと合わせて断捨離なんかもして極力荷物を少なくして引っ越したわけだけど、妹の荷物は当然のことながら多くて、僕も入って一緒に断捨離をしたんだけど…。“それは後で着るかもしれないから…” だの、“それは大切なものだから…” だのと言ってなかなかに進まなかったわけで…。あれやこれやと手に持って思い出を語る妹。そんな感じだからなかなか前に進まない。かと言ってこのままと言うわけにもいかないから、最終的には僕の独断と偏見で無理矢理に断捨離して引っ越してきたわけだけど、未だに、“あれは大切な物だったのに…” と言ってはぷく〜っと頬を膨らませている。まあそんな顔も可愛いから困るわけだ。
父さん母さんは外交官とその通訳と言う立場から日本に帰ってくるのは1年に1回あるかないかでしかも帰って来ても1日もしない間に次の交渉国に出立するのでほとんどの場合は妹との2人暮らし状態な感じだ。そんなわけだから妹は僕を一種の恋愛対象にしている部分もあって何かと世話を焼きたがる。まあそれだけならまだまだましなほうだけど、さっきも言ったけど恋愛対象になっているせいか、僕が女友達と一緒にいるとつつつ〜っと忍び寄って来て、ガバッと抱きついて来たり、また、僕の腕に自分の体を絡ませてきてにっこり微笑んでみんなの前で見せつけたりするわけで…。はぁ〜っとため息を吐く毎日な感じだ。まあほとんどの友達は分かってるんでもう慣れっこな感じで、“咲耶ちゃんのこと大切にしてやって〜” と言って笑いながら行ってしまうわけだけど。そこからが問題な感じで…。
いつ、どこで、何をしていたのか、と言うことを延々と尋ねられる。もし、おざなりに生返事などしようものなら拗ねてますます甘えてくるわけで。まあ一般的に拗ねるとご飯が梅干し1個の日の丸になったり兄に対する対応がぎこちなくなったりするわけだけど、うちは少々変わっていて、朝から晩まで付きっ切りな状態になる。朝から昼・晩と食べきれないほどのお肉料理を出したり、お風呂にも一緒に入ってこようとしたり寝るときにも一緒に寝ようとしてきたり、とまあどこぞの三流作家が書いた小説にある従姉のお姉さんみたくなるわけで…。やられた翌日には精も根も尽き果ててぐて〜っとボロ雑巾のようになっている自分がいる。…ある意味悪魔より怖い存在が僕の妹と言うわけなんだ。
まあそんな甘えん坊で自堕落気味な妹ではあるものの、大学内では人気が高い。人見知りもあまりしないので僕と違って誰とでも気軽に話も出来るし、おまけにこのグラビアアイドル並みのプロポーションだ。だから入学当初からファンクラブが結成されたとかされてないとかいう噂も流れてくる。当の本人からしてみると、“何のこと?” と言う感じだけどね。そんなわけだから今現在、ものすご〜く困った状態になっている。まあ誕生日は今年は件のウイルスのせいで豪華には出来なかったけど、お取り寄せでフランス料理のフルコースを取って食べたしね。“2人だけの甘いひと時だったわ。お兄様。うふふっ” と言って喜んでくれていたんけど、何か含みのある笑い方だなぁ〜なんて思って少々背筋が寒くなったわけだけど…、その結果が今現在と言うわけで……。
「も、ももも、もう少し離れて〜。むむむ胸が腕に当たってるよ〜!!」
と言う僕に対し、“あら、これは日頃の感謝も込めて私からの少し早いクリスマスプレゼントとして態と当ててるのに〜” とコケティッシュに笑いながらも目は真剣そうに言う妹。あの何とも言えない含みのある笑いと言うのはこう言うことだったのか〜っ! と思うんだけど時すでに遅し…。結局今夜も妹が寝静まるまで抱き枕状態で寝不足がさらに悪化するような感じな今日12月20日、僕の天使である意味優しい悪魔的な妹・咲耶の19歳の誕生日だ。と言うか上から覆いかぶさらないで〜っ!!
END