家族の証

第4話 鈴凛と僕の家族


「はぁ〜、鈴凛もストリングスも寝相が悪いなぁ〜。もうお腹とか出ちゃってるよ…。かと言って僕が直すわけにもいかないし…」
 今日7月9日は僕のちょっぴりわがままで、でも憎めない妹・鈴凛の誕生日だ。僕の妹は猫を飼っている。名前はストリングスと言う。まあ雑種のメスなんだけど、これが飼い主に似ていると言うか何と言うかで、今1人と1匹にして同じ体勢で寝ているわけで…。でもそうか…。ストリングスが家に来て今年で3年目になるんだね? でももっと前から家にいたように感じるのはストリングスの貫禄がすごいのか、僕の存在感が薄いのか…と最近思うようになった。もともとは捨て猫だったストリングス。妹がいつも通る道の端でニャーニャー鳴いていたんだそうだ。生き物は元来苦手だった妹だったんだけど、どう言うわけかストリングスだけは放ってはおけなかったらしい。よく波長が合うって言うけど、それだったんじゃないかなぁ〜っと僕はそう思うわけで。家は父さんたちが建てた戸建住宅なので、飼うにあたっての問題とかは特にはない。と言うか父さん母さんは外交官なので家に帰ってくるのは年に2、3回だ。しかもその日のうちに用事とかが出来てすぐに出かけてしまうこともしばしばなので実質僕がこの家を切り盛りしている。そんなわけだから猫を飼うにあたっても僕に任せると言うことだったので飼うことに決めたわけだ。元来動物の苦手なはずだった父さんたちも帰って来ては、ストリングスを抱っこしてる。妹は毎日そうしてるし、その辺は血は争えないかな? なんて思って見てるわけだけど…。
 まあ妹はこう見えても理数系な感じの子なので手先がすごく器用なわけで、僕が1日かけても出来なかったストリングスのエサ置き場の台座部分も2、3時間で作ってしまうんだから本当に驚いてしまう。ただ料理とか裁縫とかそういう家庭的な部分については…なわけなので、その分だけは代わりに僕の出番な感じだ。まあもともと家事とかは好きなほうだったし、これからの時代男子も料理の1つでも出来なくてはダメだと父さんたちに言われているし、自分でも苦手意識は皆無なので結構楽しんでやっている。それにしても、鈴凛はなぁ〜っと、はぁ〜っとため息をついてしまう。普段から僕に頼りっきりな妹。この前も部活で学校に一泊していた際はとても大変だった。何が大変だったかと言うと、しょっちゅう電話がかかってきて“何々がない〜” だの、“どこやったの〜?” だのとひっきりなしに言われて、最後には、“アタシも学校に行く〜” とまで言われてしまったわけで…。そんなもんだから部長のほうから、“帰って面倒見てやれ…” と半ば呆れ顔で言われてしまって僕だけ早くに帰されてしまう。帰ってくると玄関先に案の定倒れている妹を見つけて…。その後はまあ想像通りのことが起きたわけで…。“アニキがアタシの晩ご飯、ちゃんと作っておいてくれないからだよ?!” とぷんすか怒りながらも口元をソースでべったりくっつけさせながらもぐもぐ食べている妹を見てると叱る気もなくした。
 とにかく僕の妹は生活面に関しては全くなわけなのでどうすればいいかなぁ〜っと本気で悩んでいるんだけど…。と思ってこんな悠長に起してる暇はないんだった! と思い直しゆさゆさ体をゆすって起こしてみるんだけど、“ん? んん? もう少し寝かせて〜” とか何とか言って全然起きてくれない。そのうちにストリングスのほうが起きて来て僕に体をこすりつけてきたりしているわけで。“もう少しお前のご主人様もうまく起こせないものかなぁ〜?” と愚痴を言うと、“ニャッ” と言うと鈴凛の寝ている顔のところに飛び乗って顔に前足を乗せてぐにぐに揉むような感じで押している。“もう! くすぐったい…” と言ってすくっと起きる妹に正直驚く。“むにゅむにゅ…。ふぁあ〜あ…。あっ、アニキ、おはよう…” と寝ぼけ眼でこう言うと早速服を脱ごうとする妹に、慌てて部屋を出る僕とストリングスがいたわけだ…。


「鈴凛も女の子なんだからもう少し節度と言うものを持ってだね…って! 言ってるそばからそんなことしないの!!」
 と焼きたてのパンに紅茶にソーセージが今朝の食事。妹はソーセージを1つつまむとエイッとばかりに口に放り込む。仮にも女の子なんだからもう少し女の子らしいところも見てみたいと思うのは兄として間違っているだろうか? ストリングスはそんな僕たちを大いに面倒くさそうな顔で見遣りながら自分のエサを食べている。梅雨明け前の蒸し暑い朝。そんな今日7月9日はちょっぴりわがままで、でも憎めない僕の可愛い妹・鈴凛の誕生日だ。

END