家族の証

第5話 雛子と僕の家族


「ひまわりの種とかは家にいっぱいあるからいいとして…、う〜ん。やっぱりこれかな?」
 とクルミのペレットを手に取ってそう言う僕。横で手を繋いでいる幼ない妹は僕のそんな光景を不思議そうに見つめていた。今日8月15日は幼ない僕の妹・雛子の誕生日だ。誕生日と言うことでケーキを買いに来た僕たちだったんだけど、ふとペットショップの前を通りかかり、そう言えば“みるく” の餌を買うのほ忘れていたなぁ〜なんて思い出して、手を繋いでる雛子に“おにいたま、みるくのご飯買うのちょっと忘れちゃったから買って行ってもいいかい?” と聞いてみる。“もう、おにいたまは忘れん坊さんだね〜?” と言ってくししと笑う妹に微笑むと僕はペットショップの中に入る。お目当てのものはハムスターの売り場のところに置いてあったので、それを購入して今度は肝心の雛子のケーキを購入するためケーキ屋さんへと向かった。 この4ヶ月くらい前か、クラスの小学校からの幼馴染みの女友達にハムスターを1匹譲ってもらった。もちろん雛子とも知り合いでよく “おねえたま” って呼ばれて嬉しそうな顔をしてるんだけど。でもどうして動物? と聞くところが、“最近親戚の家で産まれた子犬をもらってきたんだけど…。これがなかなかの腕白ぶりでね? だからハムスターの面倒まで手が回らくって…” と言うことらしい。まあ動物なんて飼うのも初めてな僕ではあったわけだけど、その子の家で何回かおっかなびっくりで触れるうちに何だか可愛いな? と思うようになって、結局譲ってもらったってわけ。ジャンガリアンと言う小型の種類で全身真っ白な感じのハムスター。初めて妹に見せてそ〜っと手に乗せてやるとひくひく鼻を動かしてきょろきょろ辺りをうかがっている。妹も喜んで、早速名前を考え始めてつけた名前が“みるく” だったってわけ。妹とは1回り、12歳歳が離れている。だからじゃないけど、って言うかだからかな? 兄妹と言うより保護者と言う面がある。だからか、父さんたちは妹の面倒は僕に任せっきりなわけだ。まあこれを言うと父さんたちの仕事柄、仕方のないことだろうと理解している。と言うのも父さんたちは外交官で今はヨーロッパを駆け回っていると言うことらしい。最近は某国の過激派が暗躍していると言うニュースをよく聞く。気をつけて…といつも電話の最後に言う僕がいるわけだ。
 “みるく” は今日も元気にゲージ内に備え付けの滑車でくるくる回っている。餌やり等は雛子、掃除は僕と言うふうに分担してやっている。まあ時々勉強が忙しくて掃除を忘れてしまって、“もう! おにいたまは〜っ!!” と雛子に叱られちゃうこともあったりするわけだけど、それでも頑張って世話をしている雛子を見ていると“みるく” をもらって本当に良かったなぁ〜っと改めて思う。女友達には感謝だね? 最近は動物の虐待やらそれに輪をかけての殺人が多くなってきている。簡単に命を奪うことがどれだけ残酷なことかを自分の身になって考えて欲しいと思うのは間違いではないはずだ。幸い僕の身の回り、特に妹の周辺ではそう言うことは起きてはいないのでほっと胸をなで下ろしているところなんだけど…。と言うか妹はよくケンカの仲裁に入ることが多いらしく、この間の保護者面談のときに先生からそんなことを言われて妙に照れ臭かった。もっとも普段から“相手の言うことをよく聞くこと” と言って聞かせているんだけどね? そろそろと夏も終わりに近づいている。雛子は宿題のほうはもう終わっていて後は工作と日記だけらしい。かく言う僕のほうもほぼ終了な感じだ。日暮れの風は何となく涼やかな初秋な雰囲気を漂わせている。そんな中“みるく” のエサと雛子のケーキとを手に持って歩いていると、妹が、“おにいたま、ヒナがみるくのエサ持ってあげる〜” と“みるく” のエサの入った袋を持って代わりに僕の開いた手を握ってにこにこ顔。その笑顔に何だか癒される僕がいた。


「わ〜い、今日はヒナの好きなものばっかりだ〜!」
 夜、晩ご飯には僕特製のハンバーグと母さんから昔教えてもらったポテトサラダをつける。あとコーンクリームスープと言う洋風な献立。もちろん真ん中にはさっき買ってきたケーキがある。“みるく” はヒマワリの種やらクルミのペレットをもぐもぐ食べて食べたかと思えば滑車に乗って勢いよくクルクルクル〜ッと回っている。それが何だか雛子におめでとうとでも言っているような感じがして、“何だか“みるく”も雛子に“おめでとう”って言ってるみたいだね?” と僕はゲージを見ながら言う。妹はにこにこ顔でうんと頷いて、“ありがとうね。みるく〜” と嬉しそうにそう言う。また妹と2人にっこり微笑み合いながら“頂きます” と言って僕の作った料理を食べ始める今日8月15日、僕の大切な妹・雛子の誕生日だ…。

END