家族の証
第6話 可憐と僕の家族
「…とあとはこれだけかな? しかしいつも手伝ってくれる人がいないと困るねぇ〜?」
今日9月23日は僕の妹、可憐の誕生日。…だったんだけど、その妹は今部屋で赤い顔をして寝ているわけで。ここのところ急に秋めいてきて夜中はちょっと肌寒い日もあったりする。そんなこんなで妹の飼っているネコの“バニラ” は今僕の足元ですりすりと体を擦りつけて来ていた。まあ一般的にネコのこう言う仕草は親愛の情を表すことらしい。もっとも妹にはお腹を見せてるところをよく目にする。動物がお腹を見せることは絶対服従の合図らしいと言うことを1年くらい前にやっていた動物番組で見て、妹に“僕は友達で可憐はご主人様なんだねぇ〜” とちょっとイジワルして言ってみたわけだけど、“そんなことないよ、お兄ちゃんが寝てるそばでよくバニラってばお腹出して寝てるもん” と真顔でそう言われたわけだ。えっ? そうなの? と聞くと“じゃあ今度起こしてあげるね?” って言われてこの前うとうととしていたらツンツンと頬を突かれて、起きてふと横を見ると…。
まああんな気持ち良さそうにお腹を出して寝るネコって言うのもそうはいないだろうね? と思うぐらい気持ち良さそうに寝ている。途中“ニャニャニャニャ…” と言う寝言? みたいのまで聞こえてくるわけで…。本当にびっくりした。妹の顔を見ると“ほらね?” って言う顔で微笑んでいる。まあ“バニラ” のことが何となく分かったこの前の出来事だったってわけ。父さんたちは外交官と仕事柄か家に帰ってくるのは年に2、3回だ。しかも日帰りのときもあって、昨今の混沌としている世界情勢を反映させてるんだなぁ〜っと思う。で今現在、昨日の朝、コンコン咳をしている可憐の様子を見て、ちょっとおかしいな? と思い妹の額に手を当てて測ってみると異様に熱かった。そう言えば昨日はピアノの音を一度も聞いてないな…、と思って、妹の目線にまで下がり、顔を見る。頬が林檎のように赤いしちょっと目が潤んでいた。これはひょっとしなくても風邪だろう。そう思って体温計を取り出して妹に手渡すと、“ねえお兄ちゃん、お医者さん行かないとだめ?” と聞いてくる。昔やっていたアニメか漫画の中でお医者さんが極端に嫌いな妹をお兄ちゃんがどう連れて行くのかという物語を見た記憶がある。可憐もその傾向があるんだけど…。生憎と連休中なものだから救急でもない限りはお医者さんはやっていない。薬はあったかな? と言うよりどう言う症状なのかな? と思って訊ねてみると、“何だか寒気がするの。頭のほうはぼ〜っとなっちゃってて…” とちょっと怖々しながらそう言う。思うに熱型かな? と思っていると体温計がピピピッと鳴った。脇から取り出して僕に見せる妹の顔はとても怖々していた。体温計を見る。37.9度、やっぱりあるね? と言うことで階下に降りて薬箱の中、風邪薬を探してみるんだけど、生憎とないわけで…。買いに行かなくちゃと思って立ち上がると、もう一度2階へ上がり妹の部屋へ行く。“可憐? これからお薬買ってくるね?” と言う僕に、“うん、分かった…” と心なしか元気のない返事が返ってくる。“ニャ〜” と僕の横で座って心配そうに部屋のほうを見ている“バニラ” に、“僕の代わりに可憐の様子を見ておいてくれるかい?” と言って部屋の戸を少しだけ開いておく。奥から小さくくしゃみのする声が聞こえていた。
早速、薬屋へと向かう僕。え〜っと熱が高いんだっけ? と思いつつ歩いて5分くらいにある薬屋に到着する。早速薬剤師さんに妹の様子を伝えるとちょっと考えてから薬棚の奥に消えて、“これなんて如何でしょうか?” と言って粉薬を持ってきた。ちなみに可憐は粉薬は苦手だ…と言うより粉薬は飲めないので、“カプセル状か錠剤のものはありませんか?” と尋ねてみる。“あっ、すみません。粉薬苦手なんでしたよね?” そう言うと改めてカプセル状の薬を持ってくる。お金を払い家へと帰る。父さんたちがいたらどんなに楽なことだろうとは思うけど、一生懸命僕たち兄妹のために働いている父さんたちには文句は言えない。帰ってきて妹の部屋を開けて、“”調子はどうだい?” と言う僕がいたんだけど…。
「バニラ、可憐のこと見ててくれてありがとうな?」
そう言うと“バニラ”の喉のところをこちょこちょとする僕。対して“バニラ”は気持ちよさそうに目を細めている。眠っている可憐の額にそっと手をやって自分の額の熱と比べてみるとまだちょっと熱かった。明日は学校お休みだね? そう思って風邪薬を持って来ていた薬箱へ直してバニラと一緒に部屋を出て行く今日9月23日は甘えん坊な僕の可愛い妹・可憐の誕生日だ。
END