家族の証
第7話 衛と僕の家族
「ふ…、ふぁ〜あ…。眠い…。走りたくない…。でも走らないと…。んみゅ〜。ぐぅ〜…」
寝ぼけ眼でそんなことを言いつついつものジャージに着替えて玄関の扉を開けると、衛が屈伸運動をしながら柴犬の“まー太” と一緒に待っていた。今日10月18日は、妹・衛の誕生日。“あっ、あにぃ。おはよう” といつもの笑顔で僕の寝ぼけ顔を見るとうふふと笑う。ここ最近運動不足で体重のほうがちょっとヤバくなってきた僕。秋は美味しいものがいっぱいあって食べ物とかすごく食べるんだけど、この前何気なく体重計に乗ったら相当なショックを受けたってわけで…。で、妹にお願いして“まー太” の朝の散歩と同時に僕のジョギングを手伝ってもらおうって思ったわけだ。家はちょうど山の下側にあって道路は緩やかな上り坂のすぐそばに建っている。まあ上り坂を上った人ならわかるかと思うんだけど、結構な運動量がいるわけで…。こんな坂を毎日、それこそ夏でも冬でもお構いなく上ったり下りたりしている妹には本当に頭が下がる思いなわけで…。
そんな妹の今日は誕生日なので、先日靴屋の前を通りかかった際に、前に妹の欲しがっていたスニーカーを買っておいたわけで昨日の夜に1日早いけど渡しておいたんだけど、今日はそのスニーカーをはいてるみたいで終始にっこり笑顔でご機嫌な様子なわけで…。今年大学の門を叩いた僕は国文学部を専攻している。当然文学系なわけなので、高校時代はよく友達から体育祭なんかに、“お前を出すより衛ちゃんだしたほうがいいんじゃないか?” と真顔で言われてしまうことがよくあった。まあそれだけ運動音痴な僕なので反論は何も出来ないわけだけどね? 父さんはスポーツ万能な感じなので、僕は母さん似なのかも…。でも母さんも言うほど運動神経は悪くはないからなぁ〜。う〜ん、謎だ。とそんなことを考えつつ、走る前のストレッチを行なう。妹曰く、“ストレッチをやっておくと後のケガとかの防止にもなるんだよ?” とのことらしいので入念にやっておく。最初のころは曲げ伸ばしとかが極端に弱くてすぐあいたたたた…と言う風になっていた僕ではあったんだけど、大分柔らかくなってきたみたいだ。妹もこの前、“もうあにぃも大丈夫かな?” なんて言ってくれたっけ…。最後の屈伸運動も終わりいよいよ走り出す僕たち。早朝と言うこともあってさすがに誰もいない公園なども横目に緩やかな勾配の坂道を登っていく。昨日の夜にちょっと雨が降ったせいか、スモッグが取れてきれいな空が見えた。太陽の昇る前の少し東のほうが白み始めてきた空には、明けの明星がきらきら輝いている。その場で足踏みしながら妹とその光景を見てにっこり微笑む僕。また走り出す。高低差が100メートルほどで距離にして1キロメートルほどがいつものジョギングコースだ。まあ父さんたちには妹が隠れて言ってるんだろう。この間電話で、“お前にもシューズを買ってやらんとなぁ〜” なんて言っていたしね? 父さん母さんは外交官と言う仕事柄か帰ってくるのは年に2、3回がいいところだ。昔は僕たちも一緒にあっちこっちとついて行っていたんだけど、僕が高校生になった時に、“もうお前に任せても大丈夫だろう” と言うことで日本に帰ってきた。でも妹はまだ危険だってことで父さんたちのところで4年ほどいるつもりだったんだけど、“ボクもあにぃと一緒に帰る〜っ!!” って駄々をこねて…。しぶしぶ父さんたちも諦めて一緒に帰ることになったわけだけど。
まあ普段我がままなんて一言も言わない妹だっただけにその頑なさが僕にとっても驚いたわけだけど…。まあそんなこんなで日本に帰って来て4年目の秋を迎えるわけだ。そう言えば、“まー太” を飼いだしたのもこのころだったかな? と前をふりふり尻尾を振りながら行く“まー太” を見ながらそう思った。ちょうどこんな日だったなぁ〜。妹が子犬を拾った〜って言いながら僕のところへ駈け込んで来たのは…。見るからに衰弱しているようだったんで慌てて近くの獣医さんのところへ駆け込んで言ったわけだけど…。
「あにぃも大分走るの慣れてきたんじゃない? 最初のころとは全然走り方が違うもん」
と朝ご飯を食べている途中でそう言ってはにこっと微笑む妹。“ああ、そうかも知れないね?” そう言って庭のほうに目を向けると、あの弱弱しかった“まー太” が尻尾をぶるんぶるん振って美味しそうにドッグフードを食べている。まあ妹が躾をしているせいか、僕が散歩に連れ出すとちょっと嫌そうな目をする“まー太” ではあるんだけど、そんなところも含めて動物も一緒なんだなぁ〜っと思う今日10月18日は僕の妹・衛の誕生日だ。
END