家族の証
第9話 咲耶と僕の家族
「ちょっとちょっと! そんな顔されても困るんだからね? ちゃんと元いた場所に置いてきてよ」
また妹が猫を拾ってきた。これで今月10回目だ。今日12月20日は妹・咲耶の誕生日なんだけど、どう言うわけかうちはネコ屋敷と化している。僕は大学で獣医学を学んでいる。それも来年で卒業だ。妹は来春大学に進学予定なわけで、どんなことを学ぶのかなぁ〜っと思って聞いてみると、“あら、お兄様と同じよ?” と言うことらしい。まあ僕と同じことと言うことは獣医になりたいんだろうなぁ〜っとは思うんだけど、昔ちょっと転んで擦りむいただけでわぁ〜と泣き出していた妹に果たして獣医のような血を見る職業が出来るのかどうか、疑問と言っては疑問なんだけどさ。
それにしても今だ。家には猫が9匹いる。まあ1匹は元から飼っていた飼い猫なんだけど問題なのはあとの8匹なわけで。妹は捨て猫や野良猫を拾ってくることが多いんだ。まあ自分でアルバイトなんかもしてお金を貯めてネコの餌代や避妊手術代なんかに払うところなんかは、最近の高校生にしてみれば稀な存在なのかも知れないけど。でも今月に入ってもう4件目なんだよ? もうこれ以上はダメ! と言うと、“ちゃんと面倒も見るし、里親も探すから〜” と涙目の上目遣いに僕の顔を見遣ってくる。僕がこの顔に弱いことを知っててこんな顔をしてくるんだからずるいと言うか何と言うかだけど、結局いうことを聞いてしまう僕も僕なのかなぁ〜って思うわけで…。とにかく妹は大の動物好きなことは間違いはないだろうね? と思う。最近は飼っても無責任に動物を捨てる人も多くいると聞く。捨てられた動物の行き着く先は…。と考えるといたたまれないことも然りだ。動物を飼って捨てるくらいなら飼わなければいいのに…。と思うこともしばしばだ。
そんな感じで今日も咲耶は猫を拾ってきた。まあ面倒は見ているのでその辺は僕にとっては大丈夫なんだけど、父さんたちが帰って来て家が猫屋敷になってたなんてことはどう説明したらいいんだ? と思う。外交官である僕の父さんと母さん。今はアメリカにいる。昔は僕と咲耶も一緒について行ってたんだけど僕が高校生になった時に、“航ももう高校生だし大丈夫だろう” って言うことで当時の赴任先であるイギリスから帰って来たわけだ。妹と“まーたん” も一緒にだけどね。あれから7年か…。月日の経つのは早いものだなぁ〜っと思う。それとは逆にどんなに月日を経ても変わらないものもあるんだなぁ〜っとも思うわけ。と言うのも父さんはまあ大丈夫なんだけど、母さんは猫が苦手みたいで、抱くのも抱けないみたいなんだ。何だかぐしゃって潰してしまいそうな感じなんだとか。そ〜っと抱けば別に問題はないとは思うんだけど、それがどうも出来ないみたいで、家の唯一の飼い猫の“まーたん” を飼うときだって僕と咲耶と父さんとでどれだけ説得したことか…。でも“まーたん” が家に来て何年経つんだっけ? と妹に聞いてみると、“私が10歳のころだから今年で8年目よ? お兄様” と答える。確か赤ちゃん猫のころに父さんの友人の人からもらわれてきたんだっけ…。そう思うと長いよね〜っと感じてしまう。まあそのせいで夏休みにみんなはどこそこに旅行に行ってきた〜って言う話が出てもうちはそんな話は出来なかったし…。そう考えるとちょっぴり損してるのかなぁ〜っと思ったこともあったけど、何気ない仕草に感動したり驚かされたりするので、これはこれでいいことなのかも知れないな? なんて最近思い直すようになった。まあ今のこの状況は何とかしないといけない事実であることは間違いはないとは思うんだけどね?…。
「どうせなら猫カフェでも開きたいわねぇ〜。ねえ、お兄様。お兄様もそう思わない?」
“あ、あのねぇ〜…” と少々呆れ気味に言う僕に対して妹はうふふと微笑む。まあこれだけ猫がいたら猫カフェだって開けるだろうけど大体どこに開くのさ? って思うわけで…。まあ友達に1人こういうことにものすごく興味を持ってる友達がいるんだけど、妹に言ったらそれこそとんとん拍子に話を進められて、猫カフェ開店! みたいになりそうでちょっと怖いんだけど…。その辺のことは言わないことにしてあるので取りあえずは大丈夫かなぁ〜っと思う。熱く淹れた紅茶もすっかりぬるくなってしまっているけど、まあ妹が嬉しそうに話す分にはいいかな? と思う今日12月20日は、ちょっぴり甘えん坊で我がままで、そのくせ寂しがり屋な妹・昨夜の誕生日だ。
END