家族の証
第11話 白雪と僕の家族
「白雪〜? “キューブ”にエサあげてもいいの〜? 人参切ってたら寄ってきてるけど〜?」
と台所から僕は妹に声を掛けた。“はいですの〜。今日はあげていませんからどうぞあげてくださいですの〜” とお風呂場から妹の声が聞こえてくる。今日2月11日は建国記念日と言う法定休日であり、また僕の妹の誕生日でもある。僕は一応調理師学校に通っている。それも来月卒業するわけだ。就職先も決まってほっと息をついているところ。妹はそんな僕に感化されたのか、“姫も調理師を目指しますの!!” と言って勉強に励んでいる。まあ、料理とかは出来る妹だし(しかも僕より美味しいし)家事一般全部やっているわけなので大丈夫なんじゃないのかな? と思うわけだ。で、たまの休みだから料理でも作るかな? と思って野菜を切っているところへ、昨年の11月から僕の家の家族になった“キューブ” が鼻をひくひく言わせて寄ってきている。“キューブ” はウサギだ。種類はえ〜っと何て言ったかな? …そうそう、確か“ピーターラビット”のモチーフになったウサギ…、“ネザーランド・ドワーフ”って言う品種だったかな? でも前に気になって調べたら、“ピーターラビットはネザーランド・ドワーフではありません” って言う話もあって何が正解かは僕には分からないんだけど、まあ“ネザーランド・ドワーフ” にしておこう。家の中をぴょこぴょこ走り回ったり、たまにノートの端っこを齧ったりしてくるわけだけど、そんなイタズラも普段見せてくれる可愛い仕草からか苦笑いで許してやるかな? って思うわけ…。
白雪はこのほかにシマリスも飼っている。名前は“こったん” って言う名前だ。ちなみに“こったん” のほうも、父さんの友達の人から譲り受けた。一昨年の冬の終わりだからうちに来ておよそ1年になるのかな? そう思った。シマリスとウサギじゃケンカにならないか? シマリスがウサギに噛み殺されないかと僕は最初不安で仕方なかったわけだけど、うちは一切そんなことはなく…。というより“こったん” のほうが権力があるらしく“こったん” が動いているときには、“キューブ” はじっとしていることが多い。何か僕と妹の権力構造に似通っていてそれが面白いと言うか哀愁を帯びていると言うかなんだけど日頃から料理や家事一切を妹に任せている僕はケンカをしちゃうとそれだけでアウトになってしまう。この間もちょっとしたことでケンカになっちゃって妹に、“姫は一切知りませんの! 1人で勝手にお食事作って食べちゃってくださいですの!!” と言われてしまい往生したことがあった。そのくせ僕がお腹がすき過ぎて深夜スーパーで購入したインスタント食品を食べようとお湯を沸かしていると、“にいさまが姫のお料理よりインスタント食品を食べた〜っ!!” と言って泣かれてしまうわけで…。その後ぶつぶつ文句を言いつつ何か作ってくれるところは嬉しいんだけどさ。父さん母さんは外交官のため家に帰ってくるのは年に2、3回ぐらいでその2、3回も半日いただけで次の国に飛び立ってしまうと言うハードさで…。大丈夫なのかな? と内心とても不安になっている。もっともそう言った不安は僕だけみたいで、妹は特製の料理なんかを作って、“とうさまかあさま、お仕事ご苦労様ですの。今回はこんなものを作ってみました。おかわりいくらでもありますから食べてくださいですの。あとこれ料理のレシピですの。かあさま…” そう言っていかにも精力のつきそうなものを用意している。って最後のほうに母さんに何か紙切れみたいなものを渡してるけどあれって何なの? って前に聞いたことがあるけど、“内緒ですのよ…。うふふっ” って言って答えてくれなかったなぁ〜。そんなこんなでうちは小さいほうが権力が上みたいで、1人と1匹で切った人参をもしゃもしゃ食べてるんだけどね…。
「にいさま、ありがとうございますですの。にいさまが作ったお料理なら姫何杯でもおかわり出来ちゃうんですのよ〜。むふん♪」
風呂上がりのほっこりした顔で嬉しそうにそう言ってくる妹。早速食べ始める妹の顔は幸せそのものだ。僕も席に着く。“頂きます” と2人で手を合わせて言い早速食べ始めた。和・洋・中華という料理が所狭しと言うふうに並べられたテーブル、ホカホカと湯気の立っているその下には人参と胡桃が置いてある。普段の何気ない食事も誰かと話しながら食べると美味しいものだなぁ〜っとつくづく感じる今日2月11日、僕の可愛い妹・白雪の誕生日だ。
END