散歩に行こう

第6話 エンターテイナー


 今日9月23日は可憐のお誕生日。だから可憐は大好きなお兄ちゃんと一緒に楽器店にお買い物に来ています。可憐はお兄ちゃんと一緒にいられるだけで嬉しいのに、こうしてお買い物までついてきてくれるなんて…。
「今日は可憐の誕生日だからね…」
 そういうとお兄ちゃんはにっこり。そのお兄ちゃんの優しいお顔を見て可憐もにっこり微笑みました。お兄ちゃんと一緒に楽器を見ています。お兄ちゃんはギターがとっても上手です。小さい頃、お兄ちゃんの発表会に行った可憐。ギターを一生懸命弾いているお兄ちゃんを見て、いつかお兄ちゃんと一緒に音楽したいなって思いました。
 ピアノを始めたのだって全部お兄ちゃんと音楽がしたいって言う動機から…。でもピアノとギターは違います。一緒には、なかなか弾くことはありません。お遊びで弾くことはあっても…。そう考えると何か寂しくなっちゃった…。考えてれば考えるほど寂しくなっちゃうので、もう考えないことにしようっと…。そう考え直して今度は楽譜コーナーに行って楽譜を見ます。
 あっ! そこで思い出しました。弾きたい曲があったんだって。でもその曲の題名が浮かんできません。曲の旋律は覚えてるのに…。可憐が困っていると、ギターを見ていたお兄ちゃんが、
「どうしたの? 可憐。何か困ったことでもあったの?」
 心配かけさせちゃったかな? でも題名の分からない可憐はお兄ちゃんに聞いてみることにしました。曲の旋律を声に出して…。お兄ちゃんはにっこり微笑んで、
「それは、えっと…、確かスコット・ジョプリンって言う人の“エンターテイナー”って言う曲だよ。楽譜は…、ええっと確かこの辺に…。あっ、あった! この曲……」
 いっぱいある楽譜の中から一つを取り出して、可憐に手渡してくれます。題名を見ると、“エンターテイナー”って可愛らしい字で書かれてありました。


「ごめんね? お兄ちゃん。お兄ちゃんも何か買いたいものがあったんでしょ? 可憐のために…」
「僕のはもともとあのお店には置いてなかったものだから…。予約したから大丈夫だよ? そんなことより、プレゼントそれでいいの?」
 うん! 可憐は大きく頷きました。“お兄ちゃんと一緒にお買い物できるだけで可憐は幸せだから…” そう言うと、照れくさそうに頬をポリポリ掻いているお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんの横顔を笑顔で見つめる今日9月23日、可憐のお誕生日でした。

END