家庭菜園始めました

第11園 白雪の菜園


「にいさま〜、これを植えればいいんですのね〜?」
 早春にはまだまだ遠い今日2月11日は姫のお誕生日ですの。ですから姫はにいさまと2人でおうちのお庭で、春野菜の種を植えているところなんです。とうさまとかあさまは外交官と言う仕事柄か、家に帰ってこられるのは年に2、3回くらいです。ですけど今はネット環境が整っていますので、離れた〜と言う感じは全くしません。今朝もとうさまにネット電話で“誕生日おめでとう、白雪” って言われましたし…。それに何と言っても大好きなにいさまがそばにいてくれるんですからね?…。にいさまは去年の春、農業大学の門を叩かれて今は2回生に上がるための試験勉強中…のはずなんですけど、鍬を持って庭の土を耕しています。まあ姫はその辺は分からないんですけど、にいさま本人が言うには“大丈夫だよ? それにたまには土にでも触って息抜きでもしなくちゃ…” と言うことなので、大丈夫なのかな…と思ってます。ちなみに姫は今年中学3年生になります。来年は高校受験なのでちょっとばかり気が重いですけど…。しかしこんなにいっぱいの野菜の種、どこで手に入れたんですの? って言うくらいの種があります。にいさまが言うには“農業実習のときに農家の人から分けてもらったんだ” と言うことらしいです。それにしてはいっぱいありますの…、と言うと、ちょっと頬をポリポリ掻きながら、“それは僕には料理上手な妹がいるから、みんなが‘白雪ちゃんに何か美味しいものでも作ってもらえ’って…” と照れくさそうにこう言うにいさま。姫も顔がトマトのように真っ赤になったことは言う間でもありません。しばらく2人して固まっていたわけですけれど、にいさまの、“さ、さあ種を植えていくよ?” と言う一言にハッと我に返って植えていきます。丁寧に1つ1つ手で小さく穴を開けて植えていきます。まあお野菜は大好きですし、にいさまの料理番としては、にいさまには安心安全なものを食べて頂きたいので頑張って今はその種との悪戦苦闘中なのですけど…。
「ああ、それを順番よく植えていって〜」
 と、手を動かしながら教えてくれるにいさま。教えて頂いた通りに姫は種を植えていきます。“早く大きくなってくださいですの。そしたら姫が豪華なお料理に変身させてあげるんですのよ〜?” そう思いつつ1つ1つ丁寧に植えていきます。土はまだまだ冷たいんですけど、もうすぐ暖かくなるんですのね? そしたら春なんですの。と思って種を植えていくと見慣れない種と言うかしわしわのおいもが目に入りました。“ねえ、にいさま? 何なんですの? このしわしわのじゃがいも…” とちょっとはてな顔になりつつ聞いてみる姫。にいさまがこっちを見て言います。“ああ、それか。それはじゃがいもの種イモだよ?” と教えてくれるにいさま。噂には聞いていましたけれど、こんなものなのですね? そう言えばにいさま、前に、“じゃがいもを1つくれない?” って言っていましたっけ? あの時は、何に使うんですの? って少し不思議に思っていたんですけれど、ようはこの種イモを作るつもりだったんですのね? そう思うと合点したようにうんうん頷く姫。そんな姫の様子をやや不思議そうに見ているにいさまがやけに面白い。思わずうふふって声に出して笑ってしまう姫がいたんですの…。
 さて、種イモをにいさまの指導の下、植えていきます。予め芽の出ている部分を上にしてさらさらと土を被せて植えていきます。あと、“芽かき” っていう作業と、“追肥”、“土寄せ” って言うじゃがいもを作る上で重要な工程があるらしいんですけど、これは目が出てからの作業になるので今日はこれで終わりなんですのね? 腰をトントンと叩く姫を見ているにいさまも、同じように腰をトントン叩かれていて何だかにいさま、姫と同じですの…って思うと思わずうふふって微笑んじゃいます。にいさまははてな顔になりつつもにっこり微笑み返してくれました。そこで、ピンと閃きました。今日はじゃがいもフルコースですの…と。


「おっ、今日はこれまた豪勢だね? 食欲をそそられそうだ…」
 食卓にはじゃがいもの和洋折衷な料理のオンパレード。誕生日プレゼントにもらった可愛いお野菜のアップリケのついたエプロンを外して、姫も席に着きます。“頂きます” と手を合わせて言って、早速にいさまはご飯をかき込んでいました。“もう! 慌てなくってもいっぱいありますのよ?” と言いつつ姫はにいさまのほっぺに着いたご飯を取って自分の口へと運びました。にいさまのちょっと子供っぽいところも見られて良かったなぁ〜なんて思っちゃう今日2月11日は姫のお誕生日ですの。

END