弟くんへ
第6話 可憐の場合
今日9月23日は可憐のお誕生日です。今朝、弟の航ちゃんからもらった楽譜を見てました。弟は1つ下。可憐はどっちかって言うとおっとりタイプだね? ってみんなが言います。そんなにおっとりしてるのかな〜って航ちゃんに言うと、“うん。僕もみんなと同じ感想かな?” だって…。性格とかも全然違う可憐の弟。背も大きいからどうしても可憐の方が妹に見られることも多いの。でも、とっても優しくて甘えん坊な航ちゃん。あっ、そうそう。この間も面白いことがあったの…。
パパが会社の研修旅行に行って、ママも何かのご用事で遅くなるって言って出かけていっちゃって、可憐と航ちゃんの2人で晩御飯の準備をしないといけなくなっちゃって、2人だけだからどこか食べに行こうって話になったの。航ちゃんはサッカー部だからいっぱいご飯を食べられるけど、可憐は音楽部だからあまり航ちゃんみたいには食べられません。だからバイキング方式のレストランへ行ったんだけど…。
「お姉ちゃんはもう少し食べないと…。まだこんなに残してるでしょ?」
「だって〜。航ちゃんがあれこれ勝手に選んでくるからじゃないの…。お姉ちゃんの食が細いこと分かってるくせに〜…」
そうなのです。航ちゃんは可憐にあれこれといっぱい食事を運んでくるの…。前に1回七面鳥の丸焼きを持ってきて大変だったこともあったんだからね? あの時は航ちゃんが食べてくれて助かったけど…。でも可憐の食が細いことを知っててそんなことをするんだから、イジワルだよね? そう思いながら上目遣いに航ちゃんの顔を見遣ります。と違う方向からきゃっきゃって言う声が聞こえてくるので可憐は航ちゃんから目を逸らしてその方向に目をやりました。航ちゃんも同様に目をやります。ケーキバイキングでした。元々甘いものは好きな可憐だったから、こっちじゃなくてケーキの方がいいんだけどなぁ〜て航ちゃんに言うと…、妙に納得しつつもため息をついて、
「それじゃあ、これ僕が食べておくから、行ってきなよ…」
だって〜…。その航ちゃんの妙に納得した目に“お姉ちゃん”として行かないほうがいいのかなぁ〜っとは思いましたが、甘いものが大好きな可憐にとってはとても耐えられるはずもなくて、結局ケーキ全種類完食しちゃった。航ちゃんの茫然とした顔が印象的だったなぁ〜。でもその次の日から、毎朝航ちゃんと一緒にランニングしなくちゃいけなくなっちゃったんだけどね?…。はぁ〜あ…。
今朝も一緒にランニング。秋も大分深まってきたみたい。だって風が気持ちいいんだもん。そう思いつつ航ちゃんの後を走る可憐。と航ちゃんが可憐のほうに向き直るとイタズラっ子みたいな笑顔でこう言ってきました。
「お姉ちゃんの机に何か乗ってたけど…、あれって何なのかなぁ〜?」
だって……。多分航ちゃんとパパとママからのプレゼントだね? そう思った可憐は航ちゃんの手を掴むと走り出します。不意をつかれた感じの航ちゃん。“ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってよ〜” って言いながらも嬉しそうに微笑んでいました。そんな今日、9月23日は可憐の17歳のお誕生日です。ちなみにプレゼントのほうは“お菓子の輪舞曲”って言う音楽の楽譜だったんだよ? えへへっ。
END