弟くんへ

第7話 衛の場合


 今日10月18日はボクのお誕生日。実を言うと来週の日曜日、地域の運動会がある。今年は随分遅いんだね? と広報を見てお父さんに言うと、“ああ、そうだな?” だってさ。いつもならこう言うのは早めに済ましちゃうのが一般的らしいんだけど。雨が多かったせいかな? と思う。で、どう言う訳か弟と2人、二人三脚に出ることになっちゃって…。って言うかこの種目に応募したのはうちのお父さんなんだけど…。普段から体を動かしてるボクにとっては、まあ一応は出来るんだけどさ。でもね?
「あ、あ、あねぇ〜…。少し休ませて〜」
 ボクの隣り、情けない声でこう言ってはボクの顔を見つめてくるボクの弟、航…。1つ下のボクの大好きな弟。でも極度の運動音痴なボクの弟は、走ることが大の苦手だ。小さいときはよくこけて膝を擦り傷だらけにしてたっけ? まあさすがに今はこけることはしなくなったけど…。運動音痴なのは変わらないみたい。そうそう、この前の球技大会でも軒並み三振の嵐だったっけ? まあ球技に関してはボクも人のことは言えない立場なんだけどさ…。でも2人揃って三振だなんてちょっと笑っちゃうけどね? その代わり勉強はよくできるみたいで、ボクが航と同じ学年の時よりずっといい点数を取ってきてるみたい。
「何言ってるの? まだ走り出して10分も経ってないじゃない…。もう!」
「そ、そうは言ってもさ〜…。いきなり5キロマラソンだ〜って…。僕が運動苦手だって言うことはあねぇが一番分かってるはずじゃない?」
 そう言って上目遣いにボクの顔を見遣ってくる弟。その顔があまりに面白くてボクはぷぷっと噴き出してしまう。へっ? となってる弟の隣に腰掛けるボク。“じゃあちょっとだけだからね?” と言うと、持っていたタオルで顔をを拭いながらほっとした表情を浮かべていた。朝の清々しい空気がボクたちを包んでいる。ちょっと喉が乾いちゃったな? そう思って自販機のところへ行ってスポーツ飲料を買おうと思って財布を開けてみると、って! この間新しいシューズを買ってお小遣い全部使っちゃったんだ〜…。はぁ〜っとため息をついてるボクの横で、2つの大きな音がする。そ〜っと顔をあげてその方向を見遣ると…。


「今日のは僕のおごりだからね? ってそれが誕生日プレゼントだ〜って言ったら…、怒る?」
 イジワルそうにボクの顔を見つめて弟はこう言う。“当たり前だよ〜っ!! だってお姉ちゃんの努力がこんなだったら絶対嫌だもん” 飲み残してるスポーツ飲料の缶を持ち上げてそう言うボク。もちろんそれはウソなんだろうけどさ…。だって航ってば顔に出てきちゃってるんだもの…。現に今だって…。うふふっと心の中で微笑みながらそう思う。パンパンとおしりの草を払うと立ち上がってこう言うんだ。
「はい! 休憩終わりだよ? さあちゃっちゃと走る!」
 ってね? 弟を立たせると腕を掴んで走り出すボク。朝靄の中に2つの影が並んでるんだろうなぁ〜っと思ってまたニコッと微笑む。弟の“もう少しゆっくり走ってってば〜!” と言う声にも耳を貸さない今日10月18日はボクのお誕生日だよ? えへへっ…。

END