弟くんへ

第8話 亞里亞の場合


 今日11月2日は亞里亞のお誕生日なの。でも…、くすん。じいやは亞里亞の弟のわたるちゃんのじいやと一緒に構いっきりで亞里亞のお誕生日のことなんてすっかり忘れてるみたいなんですの…。くすんくすん。でも姉やである亞里亞にはそんなワガママは言えないし…。昔はちょっとワガママだった亞里亞なんですけど、弟が生まれたことで姉やとしての自覚を持ちましょうってじいやに言われたの。泣き虫さんな亞里亞はすぐに泣いちゃうんだけど、弟が生まれてから泣き虫さんはなるべく我慢するようにしてきたのにな…。って思ってると今朝のお食事の時間にじいやから、“今日は亞里亞さまのお誕生日パーティーを行ないますので…” って言ってもらったの。絶対忘れられてるって思ってたから、亞里亞、何だか嬉しくなっちゃって、うん! ってにっこり笑顔で頷いたの…。
 亞里亞のパパンとママンはフランスにいるの。なんでも“がいこうかん?”って言うお仕事らしいけど亞里亞、難しいことは分かりません。ただ難しいお仕事だってじいやに言われて、ふぅ〜んって思ったの。弟のわたるちゃんは亞里亞より1つ下。だから亞里亞、姉やになります。でも本当は弟じゃなくて兄やが欲しかったのにな…。こんなことを言うとじいやからまた怒られちゃうから言えません。それに、わたるちゃんはよく亞里亞のお遊びに付き合ってくれるから好きです。
 今日も一緒にお庭を散歩しました。でもかけっこは苦手なのでゆっくりゆっくり歩きます。わたるちゃんは亞里亞とは違ってかけっことかは大好きだからすぐに亞里亞のお手手から離れて、だっ! と離れて行ってしまうの…。くすん。でも、亞里亞、姉やだから、我慢して必死で追いかけたの。“かくれんぼしようよ。ボクが隠れるから姉やは鬼さんだね?” と追いかけていくうちに声が聞こえてきます。“分かったの。じゃあ10数えるから” そう言って近くの木の幹で目を瞑って亞里亞は10数えます。こう見えても亞里亞、探し物は結構得意なの…。だからわたるちゃんなんかすぐに見つけちゃうの…。10数え終えて早速わたるちゃんを探します。この間は木の上にいました。後でじいやに“そんな危ないところにいたらいけません!” ってわたるちゃん怒られてました。ついでに亞里亞も怒られました。“亞里亞さまも、姉や様だったらそんな危ないことは止めるべきです!! わたくしがどれほど心配したかご存知なのですか?” って…。くすんくすん!!
 だからもう木の上はなしにしようって、この間わたるちゃんとお話して決めました。お庭を見て行きます。と、あそこでごそごそとしている影が…。近づいてみると案の定わたるちゃんが、“姉やに見つからないように…” と言ってます。亞里亞、うふふって微笑んでそ〜っとその場を離れました。だって、一生懸命亞里亞から見つからないように隠れているわたるちゃんにも少しは勝たせてあげたいなぁ〜って思ったから…。


「今日はボクの勝ちだね〜? やった〜。やっと姉やに勝ったよ〜!!」
「まあ航さま、それはようございましたね? では亞里亞さまのお誕生日パーティーの準備も出来ておりますので…」
 そう言うとじいやはわたるちゃんのじいやを呼んでいます。わたるちゃんは嬉しそうにわたるちゃんのじいやと一緒にお部屋に行ってしまいました。残った亞里亞にじいやは優しく耳を寄せて、“ようございました” って言いました。亞里亞もうん! って頷いたの…。木枯らしも聞こえるそんな今日11月2日、亞里亞の9才のお誕生日なの…。

END