弟くんへ
第9話 咲耶の場合
今日、12月20日は私の誕生日。でも気分が乗らない。何でかって言うと私の弟が原因なの。昔から弟の面倒を見てきた私にとって弟は私の半身も同様だったんだけど…。先週ぐらいかな? ふっと何気なく弟を見かけて声をかけようと思ったら…。それからずっと落ち込んでる。お父様とお母様は外交官のため日本に帰ってくるのは年に2、3回がいいところ…。友達に相談しようと思っても、“弟離れしなきゃ…” って言われるのがオチだし…。ふぅ〜、とりあえず外へでも出て夜風にでも当たってみよう、そう思って家を出る。
街はクリスマスムード一色だ。真冬の冷たい風にも負けずに熱々のカップルたちが通り過ぎてくのが見える。私も彼氏を作ればよかったな…。なんて考えてると、ごちんっ! と頭に鈍い衝撃。何なのよ、もう!! って前を見たら電柱だった。はぁ〜、今日は最高にいい運勢だって新聞の星座占いに載ってたのに…。これじゃまるで正反対じゃないの…。それもこれもぜんぶぜんぶぜ〜んぶ航のせいなんだから…。と意味のないことを考える私…。はぁ〜。今日はおとなしく家でレポートでも書いておくんだったな…。
そう思いつつ、歩く。ちょっとお腹がすいたな。そう思ってファーストフードのお店に入るけどそこもカップルで溢れかえっていた。一人で注文して持って帰ることもできるのだけど、こんな日に一人で持って帰るなんて寂しすぎる。どこかに見知った相手でもいないかしら…。きょろきょろ見回す私。と向こうの表通りを歩いているカップルに目が行く。あれって航よね? じゃあ隣りの女の子は誰かしら…。気になるなぁ〜。でも航から、“姉さん! 僕のことをつけまわしたりしないように! 過保護すぎるってみんなから冷やかされてるんだからね?” って言われちゃってるしなぁ〜…。でもでも、弟に何かあったら気が気でないし…。やっぱりつけちゃおう。そう思いハンバーガーを口のも中に放り込んでお代もそこそこに店を出る。
「何よ! 楽しそうに話なんかしちゃって…」
前を歩く弟と弟の彼女であろう女の子を見ながらぶつぶつ文句を言う私。そんな私の声が聞こえたのかどうかは知らないけど去っていく女の子。弟がこちらに振り向く。顔を見ればちょっと怒ったような顔だった。
「あのねぇ〜。何度も言うけどあまり僕に付きまとわないでくれる? それでなくてもブラコンの姉がいるって言われてるんだからね?」
ぷぅ〜っと頬を膨らませてそんなことを言う弟。“だって、航の彼女みたいだったじゃない…” 口をちょっと尖らせて上目遣いに航の顔を睨みながら言う私。そんな私にふぅ〜っとため息を吐きつつ弟はこう言う…。
「僕1人じゃ選ぶに選べないでしょ? だからクラスの女の子に選んでもらったの! って! 言っておくけど彼女でも何でもないからね?」
こう言ってまた盛大にはぁ〜っとため息をつく弟。その顔は、“全く、困った姉さんだよ…” って言うような顔だ。“失礼しちゃうわね。私はただの義務感なのよ?” と心にもないことを言ってみるけど、私の心はすでに見透かされている。だって弟はにこって微笑んでいるんだもの…。私の手にはちょっと早いサンタクロースからのプレゼントがあった。“これから何か食べに行く?” そう聞くと、うんと頷いてまた微笑む弟に今までのもやもやがす〜っとどこかへ飛んでいくような感じがした今日12月20日、私の19歳の誕生日よ…。
END