弟くんへ

第11話 白雪の場合


 今日2月11日は姫のお誕生日ですの。ですから姫、航ちゃんを誘って食べ歩きに行こうと思ってこうして駅前のスーパーの前で待ってるんです。航ちゃんって言うのは姫の弟。今年で11歳になるんですのよ。と言うことは姫とは2歳離れてるんですのね? でも昔から甘えん坊で困っちゃうくらいなんですのよ? まあそこが可愛いところかもしれないですけど……。でも遅いですの。もう30分も待ってるですのに、なかなか姿が見えないですの…。ちょっと家のほうに戻ってみようかな? って思いながら、辺りをきょろきょろしていると…。
「ねえさま〜。遅くなってごめんなさい〜」
 この声は間違いなく弟の航ちゃん。サッカー部に入ってる航ちゃんは帰るのが遅くて、お休みの日でも部活があるから大変。今日もそれで遅くなったと思うんです。まあ、別にこれと言って用事とかもないですからいいですわ。そう思って…、あっ、ちょっとだけいたずらしちゃおうかなって考える姫。うふふって航ちゃんには見えないように微笑むと、わざとぷぅ〜っと頬を膨らませて、姫はこう言いました。
「航ちゃん! 時間厳守ですわ! ねえさま、ず〜っと待ってたんですのよ?」
 って…。うふふっ。案の定困った顔してるんですの。“ご、ごめんなさい。ねえさま。今日は大会も近いから…” そう言いながら泣きべそをかく航ちゃん。わ〜っ、じょ、じょじょ冗談ですの〜っ!! そう言って航ちゃんのそばに駆け寄る姫。でも航ちゃんは泣いてないですの…。一瞬はてな顔になる姫。そんな姫をよそにさっきまで泣きべそかいてた航ちゃんが舌をぺろって出して笑ってるですの。そう思って“あ〜っ?!” って気がつく姫。ね、ねえさまを騙したんですのね〜? 酷いですの〜っ! って今度は姫のほうが泣きべそをかくことになっちゃったんですの…。
「いけない子ですの、航ちゃん!! いつからねえさまを騙すような子になっちゃったんですの? ぐすっ、ぐすっ…」
「ごめんなさい。ねえさま。でもねえさまだって“時間厳守だ”とか何とか言って、笑ってたじゃない?」
 み、見てたんですの? 航ちゃん。そう聞くと航ちゃんはこくんと首を縦に振ります。は、恥ずかしいですの〜!! し、しかもみんな見てる前で姫、そんなことしてたんですの? もう帰るですの! 航ちゃん。って航ちゃんのほうを見た姫でしたが…。


「あ〜っ、これ美味しいよ? ねえさま」
「ううっ、うううっ…。も、もう…。もうこうなったらやけ食いですのっ!! おじさま、じゃんじゃん持ってきて下さいですのっ!!」
 “あいよっ!” とおじさまの威勢のいい声とともにお好み焼きやら焼きそばやらステーキやら片っ端から注文する姫。航ちゃんは、“ねえさま、こんなに注文を取って、食べきれるの?” って聞いてきます。ぷぅ〜っとリスが頬袋にいっぱい食べ物を詰め込んだ時のようにもぐもぐしながら、姫は言いました。
「ぺんぷぱべぷんべぷぽっ!!(全部食べるんですのっ!!)」
 食べ歩きがいつの間にかフードバトルに変わっちゃったですの。でも元々の原因は姫だし…。そう思ってカロリーのことも忘れて食べる姫に、航ちゃんの容赦ない一言が姫の心臓を貫いたんですの…。“ねえさま、そんなに食べると太っちゃうよ?” って…。ふえ〜ん。姫の注文した分はまだまだありますのに〜!! どうすればいいんですの〜? と思いながらも持ってきたものを涙交じりに食べる今日2月11日、姫の13歳のお誕生日でしたの…。はぁ〜あ…。もう当分は食べ歩きはしないですの…。

END