嫁ぐ日
第三章 四葉
「う〜ん…。どこにやったのかなぁ〜?」
僕は一人探し物をしていた。探し物はデジタルカメラ…。妹がくれたものだ…。……明日、僕の妹が嫁ぐ…。妹の名前は四葉と言う。僕より7つ年下の可愛い妹だ。妹はイギリスからの帰国子女。物を探すことが得意な彼女は今、探偵という職業についていた。
父さんたちは外交官なので、四葉の結婚式には出られないということだ。その辺は僕も妹も分かっていることなので気にしていない。ちなみに、相手の人は警察官だ。ある事件を担当していた時に一緒に行動していたらしい。彼は存外いい好青年なので、その辺は僕も安心している…。
昔、妹が帰ってきて間もない頃は僕の後をつけたり、いろいろ僕の身の回りを調べられたりされたものだが、今思うと、それもいい経験だったのかなと思う。僕の顔を嬉々とした表情で見つめる妹に怒る気にもなれず、いつも笑ってしまうんだったっけ…。
そんな妹が明日嫁ぐ…。寂しい気はもちろんある。でも、妹が掴んだ幸せだ。僕にどうのこうのと言う資格なんてない。いや、言わないつもりだ…。
そう言えば、昔……。こんなことがあったね…。昔……、そう、あれは6年前だったかな? その時僕は財布を家の靴箱の上においてきて、四葉の誕生日プレゼントを危うく買いそびれるところだったんだね? そのことを四葉に言うと…。
“兄チャマ!! ついてくるデスよ〜っ!!”
って言って、僕の手を引いて一緒に探したんだっけ? 途中で僕が玄関に置きっぱなしにしていたことが分かって…。四葉に、
“おっちょこちょいな兄チャマデスね…”
って言われたけどね。あはは…。ひとしきり笑う。ほんとにドジな兄チャマだったんだなぁ〜。僕はそう思いながら思い出のデジタルカメラを探した。デジタルカメラには四葉と僕の思い出の詰まったものだった。……もうあれから6年も経つのか…。そう思いながら探しているデジカメ。
やがて、部屋の奥の古い箱からそれは出てくる。中を開けてそれを手に取ってみる。ふと箱の中を見ると充電器も入っていた。明日は妹の結婚式…。思い出に残る一枚を撮ろう…。妹が残していった、このカメラで…。僕はそう思った。
結婚式当日…。梅雨も中休み。空は青かった。思い出のデジカメを手に、妹のウェディングドレス姿を写す。妹が僕の手にある思い出のデジカメを見て、
「あ、兄チャマ…。あ、ありがとデス……」
そう言って涙を浮かべて微笑んでいた。式が始まる…。カメラのファインダーを覗くと、昔の妹の姿が今の妹にダブって、一瞬見えたような気がした。空には一筋の飛行機雲が架かっていた……。気持ちのいい日になりそうだ……。
END