嫁ぐ日

第4章 鈴凛


「ビデオカメラの使い方はぁ〜っと……」
 僕はビデオカメラの説明書を読んでいる。生来機械音痴な僕ではあるが、何とかビデオカメラやテレビ、その他、一般家電は説明書を片手に使いこなせるようになった。それは、やはり妹のおかけだろうね。僕はそう思う。…明日、僕の妹が嫁ぐ。
 妹の名前は鈴凛と言う。機械いじりが好きだった彼女は今、メカニックデザイナーとして第一線で活躍している。相手の人は同じメカニックデザイナーで、日本では5本の指はいる人なんだそうだ。いきさつはよく知らないんだけど、たまたま同じプロジェクトで一緒になったのが馴れ初めらしい。
 ちなみに父さんたちは日本にいない。外交官である父さんは今、テロ撲滅運動や貧困問題に力を注いでいるため鈴凛の結婚式には参加できないと言うことだ。それはいい…。世界のために一生懸命に働いている父さんたち、そんな父さんたちを僕は誇りに思う。
 妹もそんな父さんたちのことを、誇りに思っているんだろう。結婚式に行けないということを鈴凛に話すと、
「…まあ、仕方ないよね?…」
 と、少し寂しそうな笑顔でそう言った。僕はそんな妹を取り繕うようにこう言う。
「ああ…、でも、ビデオカメラのあるし…。僕がお前の花嫁姿を撮っておいてあげるから……。父さんたちが帰ってきたらいつでも見せてあげられるようにね? 昔、お前に教えてもらったこのビデオカメラで…」
 そう言うと、僕はそばに置いてあったビデオカメラを手にとって彼女の目を見つめた。涙目になりながら妹はにっこり微笑んで、“うん!”と力強く頷いた。
 ふと彼女の後ろを見る。そこには純白のウェディングドレスが立て掛けてあった。明日…、これを着て僕の前からいなくなるんだね? でも、せっかく掴んだ幸せだ…。僕がどうのこうのとは言えない。いや、言わないつもりだ…。
 妹が寝入る隣の部屋。僕は懐かしげにビデオカメラを見る…。これで、明日は最高の笑顔を撮ってあげよう。そう、思った…。


 結婚式も終わり、外へ出る。ライスシャワーを浴びる嬉しそうな妹をビデオカメラ越しに見つめながら……、
「おめでとう……。鈴凛。幸せになるんだよ?」
 心の中でそう言った。長い長い雨に季節はもうすぐ終わりだね。梅雨の間の、晴れ間の空を見て僕はそう思った。もうすぐ、夏だ……。

END