嫁ぐ日
第五章 雛子
「ふぅ〜。やっとアルバムの整理も終わったかな?…」
僕は今、アルバムの整理を終えたところだった。いろいろの思い出の詰まったアルバムはとても重い。これを一人で片付けるのか…。結構な量のアルバムだ。一度に直せるはずもなく、少しずつ直していくことにする。と、一つのアルバムを見つけた。僕はそれを広げる。
アルバムの中には幼かった妹の写真が貼ってあった。そう、明日僕の妹が嫁ぐ。妹の名前は雛子と言う。僕より年が一回りも違う妹だ。年が一回りも違う妹…。いろいろわがままを言ったり、拗ねたりと大変だった。でも、他の子に比べると我慢強い子だったからその辺は良かったと思っている。
それは一概に僕の家族に起こった悲劇なのかもしれないな…。父さんは会社で倒れ、そのまま帰らぬ人に…。僕が16歳、雛子が4歳になった頃だ。母さんは父さんが亡くなった後僕たちを女手一つで育ててきたが、無理が祟ったのか3年後に仕事場で倒れ 、そのまま…。
それから僕は妹と二人で暮らしてきた。1枚の写真がある。それは父さんや母さんが元気だった頃…、ちょうど雛子の3歳の誕生日に写した写真だった。雷が怖くて、ちょっと甘えん坊なところもあった僕の妹は、よく父さんの机の下に、当時可愛がっていた人形と一緒に震えながら隠れていたものだ。
そんな妹が明日嫁ぐ。相手の人は保育所の保父さんで子供の大好きな人だ。初めて彼を紹介されたときから、僕は“この子なら雛子を幸せにしてくれる”…。そう思った…。
あれから長い月日が流れて…。妹も22歳なって明日結婚式を迎える。これからいろんな困難が待っているだろう。でも雛子…。お前なら大丈夫だろう。アルバムに写った妹の写真を見ながら僕はそう思った。
バージンロードを行く僕の妹。繋いでいた手を離す。雛子が涙目でこちらを見ていた。僕はそっと涙を拭いてやる。ぽんと肩を軽く押してやった。
“さあ、これからだよ。雛子…。これからお前の人生が始まるんだ。お前の幸せを、僕は…、兄さんは祈ってるよ…”
そう心の中で呟きながら妹にハンカチを渡した。外は真夏の日差しが眩しい、今日8月15日だった……。
END