嫁ぐ日
第十一章 白雪
「にいさま、今日までありがとうございましたですの…」
純白のウェディングドレスを着た妹が、僕の目の前で涙をぽろぽろと流しつつ立っている。今日は妹の結婚式。父さん、母さんたちは結婚式場のソファーに座って微笑ましそうに僕たちをみている。歳が離れているせいか、僕が父さんの変わりに妹の手を引いてバージンロードを歩くようになってしまった。当の白雪は嬉しそうに…、
“にいさまが私と一緒に? ああっ…、感激ですの〜っ!!”
って言って微笑んでいたけどね。ちなみにお相手の人は料理学校の講師をしている人で、プロの料理人なんだそうだ。何でも日本で10本の指に入るほどの実力を持った人なんだって。一度白雪に勧められて彼の料理を一度食べに行ったんだけど、見た目の鮮やかさといい味といい天下一品の料理だった。
ふと昔のことを思い出す。昔…、あれは白雪が中学校1年くらいの誕生日の日だったね。楽しみにしていたレストランでの食事。待ち合わせ時間になかなか来ない白雪が心配で僕は白雪の家に行ってみたんだ。そしたら…、
“すぅ〜、すぅ〜”
って気持ちよさそうに眠っていたんだよね。起すのも可哀想だし、このまま寝かせてあげようと思ったんだけど、突然むくっと起きあがって、“支配人は? 支配人はどこですの?”って…。夢の中で僕と一緒にレストランに行ってずいぶん待たされたって頬を赤く染めながら言ってたっけ。その時の恥ずかしそうに俯く顔、そしてその後の幸せそうな微笑みは僕の脳裏にはっきりと残っているよ?
そう思いながら僕はバージンロードの前、妹の手を取りながら立っていた。
賛美歌の中を歩く。彼の目の前、僕は静かに妹の手を離した。手を離れ彼の元へ行く妹に向かい、
“おめでとう、白雪。これからお前の人生が始まるんだ…。頑張るんだよ?”
と、心の中でこう言う。今日2月11日、真っ青な空に白いライスシャワーが舞った……。
END