姉さん女房の特権


 今日2月2日は私の23歳のお誕生日。5つ年下の幼かった弟や妹ももう18歳。ちょうど私が彼と付き合い始めた頃の年となった。そして、私も変わった。どこが変わったのかと言うと、そう、それは付き合っていた彼と前年の12月1日にめでたくゴールインをして、今は愛する旦那様となったわけだ。もうかれこれ5年前になるのか、彼と付き合い始めて…。と、そんなことを考えながら朝食の準備と彼のお弁当の準備に取り掛かる。お弁当はとにかく大変だ。何が大変かって言うとおかずの具材を毎日毎日考えないといけない。小学校の6年生の頃から母に代わって弟や妹のお弁当を作ってきた私からしても、旦那様のお弁当となるとそれだけに考えてしまうわけだ。彼はその辺は全然鈍感と言うか分かってなくて、
「多恵も無理して作ろうって思うんじゃねーよ? 俺は別にコンビにでも食堂でも済ませりゃいいんだから…」
 とこうだ。まあこうは言ってもお弁当を持たせるとまるで子供のような笑顔になるし、私もその辺が嬉しくてたまらない。だから今日もお弁当を作る。と同時に朝ごはんの準備も並行して行う。彼はご飯党だからと彼の幼馴染みで今は喫茶店のウェイトレスさんになっている七海ちゃんに、私が彼と付き合いだして間無しの頃に教えてもらった。そんな彼女とは今でもいいお友達だ。妹の鈴夏ちゃんは今、大学の方で柔道の方を頑張っている。そういえば彼ってば、鈴夏ちゃんによく巴投げで3、4メートルぐらい投げられてたなぁ〜って思う。彼の従姉のひかりちゃんも、今ではいい相談相手だ。ひかりちゃん曰く、“こいつはどうしようもなくだらしないしぐーたらだけど、まあ愛想尽かさずに面倒見てやってね?” と結婚式当日の披露宴会場のスピーチででそう言ってたっけ。鈴夏ちゃんも同じように頷いてたし、七海ちゃんからは昔の恥ずかしいことを暴露されて、“ううっ、うううっ…” って彼ってば唸っていたけどね?
 お味噌汁を作る。ここは海に近い港町と言うことで海産物は豊富に取れる。時々と言うか土曜日の夜になると彼は端野くんと夜釣りに出かけてはクーラーボックスいっぱいに魚を入れて帰ってくる。“あとのことは頼むわ〜。ふぁ〜あ…” と大あくびをしながら寝室へ行ってグーグー寝入ってしまうわけで。まあ学生時代から彼はこうだったって聞いているし、同棲中もこうだったからもう慣れてしまってるんだけど、“もう少し私にも構ってくれてもいいんじゃないのかな?” って思っちゃうわけで…。と言うか今現在もそう思ってるんだけど。今日の朝ごはんはこの2日前に釣ってきた魚のあらを使ったお味噌汁と我が家の秘伝の白菜漬けとふわとろ出汁巻き。ちなみに白菜漬けとふわとろ出汁巻きのほうはお弁当の中にも入っている。と時計を見ると7時をちょっと越した頃。ちょっと早かったかな? とは思うものの、“時は金なり” と言う格言にもあるように時間は待っていてはくれないから…、と思って彼を起こしにいつも一緒に寝ている寝室へと向かう私。
「健ちゃん、朝だよ〜? そろそろ起きて〜?」
 そう言いながら優しくゆさゆさ体を揺する。いつもならこれで目が覚めるはずなんだけど今日はなかなか手ごわそうだ。なら、これならどうだろう。と体をギュって密着させてみる。結構恥ずかしがり屋さんな彼だからこんなことをされると絶対目を覚ますはずなんだけど…。って! なになに? うわぁ〜! 彼が覆い被さってくる〜。…でそのまま抱き枕状態にされる私。私の胸に顔をうずめて甘えるようにスリスリしてくる彼。まあもう少し時間もあることだからこのままでもいいかな? と思いつつ彼の顔を見ると…。


「だーかーらー、悪かったって! ただ多恵に甘えたかったと言うか、スリスリしたかったと言うか…、そう言うことなんだって〜」
「ふ〜んだ。健ちゃんなんてもう知らないんだから〜…」
 顔を真っ赤にしながらそう言う私。実際恥ずかしくてこの場から立ち去りたいくらいだったんだからね? と彼のほうをやや上目遣いに見遣ると彼はいつものようにぺこぺこ頭を下げている。イタズラ好きの彼は時々と言うかしょっちゅうと言うかこう言うイタズラを仕掛けてくるわけで…。それに毎回引っかかる私も私なんだけど、今回もものの見事に引っかかちゃったわけで…。“甘えん坊さんなんだから〜” と口をちょっと尖らせて拗ねたように言う私に、“じゃあさ、今日は多恵の言うこと何でも聞いてやるから。会社休んで一緒にいてくれって言うのもありだから。それで勘弁してくれよ。なっ?” こう言うと私に平謝りに謝ってくる彼。そんな彼が可愛く思えてきて、ちょっとだけイジワルと言うかお願いを言う私。それは…。
「いつまでも健康でいて、会社にもきちんと行ってお仕事もきちんとやって来て?…。そして他の誰よりも私を愛していて? 好きでいて? 浮気なんかしちゃダメだよ? 朝、出掛ける前には必ずキスして? 夜はなるべく早く帰ってきて? 一緒にご飯を食べて今日あった出来事を話して、一緒にお風呂になんかも入ろ? 洗いっこなんかしあって、寝るときも眠いからってソファーに寝ずにお布団で一緒に寝て? …とにかくいつまでも一緒にいて? ねっ? 健ちゃん…。それが私のお願い…。聞いてくれなきゃ拗ねちゃうんだからね?…」
 ってね? ぷぅ〜っと頬を膨らませて、怒ったような拗ねたようなそんな感じにこう言うの。上目遣いに彼を見つめて少し甘えん坊な子供じみたみたいなことを言っちゃう私だったけど、そう言われて素直にうんと首を縦に振る大好きな旦那様に、ちょびっとだけ、ほんのちょびっとだけだけど、優越感に浸れちゃう。まあ、これが“姉さん女房の特権”って言うのかな? そう思う今日2月2日は私の23歳のお誕生日だよ。えへへっ…。

END