佐倉さんのセクシー大作戦


 明日5月30日は俺の学校の後輩で、一応ではあるが俺の彼女なんぞである佐倉裕美の誕生日だ。で、今日から妹・鈴夏の宿題の手伝いとばかりに俺の家にいるわけだ。と言うか鈴夏…。お前ももう少し勉強頑張れよな? と赤点すれすれの点数を取ってくる妹に言うところが、“そりゃあお兄ちゃんはいいよね?! だって七海お姉ちゃんが一緒なんだから…” とぷぅ〜っと頬を膨らませながら妹は拗ねだす。拗ねだすと後、手が付けられないものだから、佐倉と2人宥めるのに必死なわけで…。と言うか宥めないと俺の生命に関わってくるものだからこっちはそれこそ一所懸命なわけだ。ところで俺のテストはと言うと、お隣りさんのちょっぴりぽんこつな幼馴染みにぷんすか怒られつつやっているので、何とか無事にテストは抜けられているわけだが…。
「ここの公式はこうやってこう解くといいんだよ?」
 と言う声が隣りの部屋から聞こえてくる。まあ鈴夏ももう少し勉強が出来たらなぁ〜っと普段バカなことばかりやって多恵先輩に、“友坂くん!! またこんなイタズラしかけて〜!” と生徒会長室兼自治会長室に呼ばれて小一時間お説教を聞かされている俺が言うのもおかしいけどな? と思いながら今日の課題に取り組む。いろいろとややこしい問題を見ながらう〜んと考え込んでひたすらノートに書き込むこと3時間半、ぐぅ〜っとばかりに盛大に腹が鳴る。なんか食おうか…、と思ってふと隣の家を見る。ちょっぴりぽんこつそうな顔でう〜んと考えながら俺と同じ課題に取り組む幼馴染みのいつもの顔があった。一緒になんか食おうかと思っていたが考えている仕草を見ていると言う気が失せる。1人で食うか…。そう思い階下へと降りた。
 そういやトイレも行きたかったんだっけか? と台所に向かう途中で思い出し、トイレへと向かう。と浴室の電気が点きっぱなしだ。まったく!! 点けたんなら消していけ! とプチッと浴室の電気のスイッチをオフにすると、意気揚々とトイレへ向かい用を足してふぅ〜っと一心地つく。それから台所に行きインスタントラーメンの湯を沸かしていると、どこからともなく泣き声か聞こえてくる。テレビかと思ってテレビを見たが俺自身テレビをつけた記憶はなし、画面を見ても映っているのは俺の顔だけだしな。そう思って耳を澄ましてみるとどうやらさっき電気を消した浴室のほうから聞こえてくる。な、何だぁ〜? 浴室のほうに行くとしくしく泣く女の声が聞こえてきた。ちょっとヤバい系か? とも考えたがこんな田舎の住宅街の浴室にお化けなんぞが出るわけじゃなし…。そう考えて“誰か入ってるのか?” と声を掛けてみるところが、“私ですよぉ〜。ぐっすん、しくしくしく…” と見知った声が聞こえてくる。何だ? 佐倉かよ。そう思って再び電源をオンにしてやる。しばらくして佐倉が出てくる。顔を見ればいかにもご機嫌斜めですっ! って言う顔だ。
「先輩! 私が入っているのが分かっていてそれで消しましたね? 酷いですよ〜!!」
 と言うと畳んだ腕を上下にぶんぶん振って抗議の声を上げる佐倉。“まあ、落ち着け” と言っても、“これが落ち着いていられますか!”  とばかりな勢いで今度は手足をばたつかせて文句を言う彼女。そりゃあ消した俺が一番悪いのは分かってるんだが、何もこんなところで文句を言わなくても…。思いながら上を見る俺。そう、ここには俺を投げ飛ばす名人がいるのだ。はっきり言って恐ろしい。ましてやこの状況だ。どう弁明したって投げ飛ばされることは分かっている。が、2階からはうんともすんとも言ってこない。いつもならこんなことをやってるとすぐに降りてくるのに…。いったいどうしたんだ? と思って拗ねる佐倉を手に2階へと上がって恐る恐る妹の部屋をのぞき見ると、くかーっと寝ていた。その姿に正直ほっとした俺は、“じゃあ佐倉、お前も早く寝ろよ?” と爽やかにシュタッと手を上げて自分の部屋へ戻ろうとするものの、相手はギュッと俺の服の袖を掴んで離さない。顔を見ると上目遣いにぷるぷると唇と震わせている。おまけにぶつぶつ何やら独り言なんぞを呟いている。何だ〜っと思ってよくよく耳を澄ませて聞いてみると…。
「先輩が私を暗い浴室に閉じ込めようとしました。それから私のこの豊満な肉体を覗きました。それからそれから…。ぶつぶつぶつ…」
 いや、あの…、佐倉さん? 最初の物言いはまあ百歩譲っていいとして、後者の言い分はどうかと思いますが…。と言うか覗いたりはしてないんだけど…。って言うかパジャマ着てたじゃねーかよ?! という俺のツッコミも無視してどんどん自分の世界へ入り込む佐倉。そして、うふふと何か結論でも出したかのように怪しく微笑むとずりずり俺のほうへ寄ってくるではないか?! 大きめのパジャマって言うかそれ、俺の普段着だよな…と気づくがそんなことはどうでもいい。胸元がちょっと開いていて形のいいモノがゆらゆら揺れている。思わず鼻血が出そうになるのをすんでのところで耐える。“ねえ、先輩。鈴夏ちゃんに言っちゃいそうですよ〜? 私…。今夜は私と一緒に寝てほしいなぁ〜” なんて脅迫じみたことも言ってくるわけで…。困った、非常にヤバい状況になっている。はっきり言って今の佐倉は普段の鈴夏の百倍は恐ろしい。とはいうもののこの状況は如何ともしがたい。いつにもまして大胆かつセクシーに寄ってくる彼女はある意味恐怖の何物でもない。怪しく微笑みながらずりずりすり寄ってくる彼女の前、俺はうんと首を縦に振るしかなかった。


 明日5月30日は私のお誕生日。だからじゃないけど、鈴夏ちゃんから“お泊まり会なんてどうかな?” なんて言われちゃって。先輩の彼女になってからと言うもの、鈴夏ちゃんからこんなお誘いを受けることが多くなった私。まあ鈴夏ちゃんは鈴夏ちゃんなりで私と先輩の恋の応援をしてくれているんだろうと思うと何だかとっても嬉しいわけで。ついでを言うと七海先輩も多恵先輩も、先輩の従姉のひかりさんも、私と先輩の応援をしてくれています。それが私にはとても嬉しいし感謝してもしつくせないんですけどね? しかし今日は突然そんな言われるものだからお泊りセットも持ってなくて断ろうとは思ってたんだけど、鈴夏ちゃんの熱心なお願いにうんと頷く私がいたわけで…。そりゃあ私だって先輩の彼女なんですから先輩にはお祝いしてほしいなぁ〜っとは思いましたけど…。肝心の先輩ときたら、お祝いの“お”の字もなかった挙句に私がお風呂に入っているのにも関わらず、電気を消していくものだから真っ暗でとってもとっても怖かったんですからねっ?
 で現在、私は先輩に迫ってます。何か罰(と言うかお願い)の1つでも与えないと私の気が収まらないし…。それに普段から“色気って言うもんを身につけんとな? まあ無理だろうけど…” って失礼にも程があるほどのいいようで、しかもぷっ! て吹き出しながら言われているんですから…。“失礼しちゃいますっ!! 私だって色気くらいあるんですよ〜?!” って思ってちょっと大胆に胸のボタンを2つほどはずして、胸の谷間をわざとに見せつける形でじりじり擦り寄る私。“どうですか? 先輩。これでも私のことを色気がない…なんて言えますか?” そう思いながらなおも擦り寄る私に…。


 目覚めは非常に悪かった。と言うか抱き枕状態にされていた俺は一睡もできなかったわけで…。まああの女の子特有のぽにゅぽにゅした感触は最高に気持ちよかったわけだが…。しかし、そうも言っていられないのが現状なわけで…。そう、それは我が妹。朝、いきなり俺の部屋に入ってきて、“お兄ちゃんが佐倉さんを手籠めにしちゃってる〜っ!!” と大声で言うもので。それはお隣りの幼馴染みにまで聞こえていて、学校へ行くときの俺を見る目が非常に痛かった。妹は妹で、“お父さんに言いつけちゃうんだからね?” と言って俺の顔を見遣っている。その顔はどことなく嬉しそうでもあり。普段なら怒って投げ飛ばされるのがオチなわけだが、今日に限ってはそれもない。不思議な気分だ。と横を歩く佐倉が、微笑んでこう言う。
「私のお誕生日だからでしょうね? 今朝はいい夢も見られましたし…。うふふっ」
 こう言うとますます自分の体を俺の体に密着させる彼女。そんな彼女を鬱陶しいと思いつつもよかったな? と思ってしまう今日5月30日は隣町から自転車をかっ飛ばしてやってくる俺の彼女、佐倉裕美の誕生日だ。

END