置いていかれた彼に復讐を?


 今日1月14日は私の誕生日。…ではあるんだけど、私は今年風邪を引いてしまった。もちろん用心はしていたつもり、でもこの間、急に暖かくなったかと思ったらまたとんでもなく寒い日があって体調を崩されたって言うのかな? そんな感じで今は布団の中で静かにしている。でも本当なら今日は彼と一緒にどこかお出掛けするはずだったのに…。そう思うとなんだか悔しい気分になる。まあ大学のほうでいろいろとサークルに入っている彼だ。だから今日はどこそこ、明日はどこそこと言う風に飛び回っていて私と話す時間なんてすっかり無くなっているわけで…。本当に私は彼の彼女なの? と思うくらい。そんなこんなで今朝も立ち寄った彼に、“今日は私のそばにいて?” って上目遣いに言ってはみたんだけど…。
「なるべく早く終わらせるようにするから、だから許してくれ」
 と言って離れようとする。その手をガシっと掴んで、“ゴホッゴホッ” と咳をしながら、“お願い、今日だけは私のそばにいてほしいの…” と言う私。もちろん風邪は引いてるし熱もあるし咳も出る。そんな私を彼が見捨てていくはずがないとタカをくくっていたのがそもそもの間違いだったわけで。“風邪薬も飲んだんだしかえって俺がいると気を遣わせるだろ?” と言って手を振りほどこうとする彼。今度はおんぶな感じでぎゅ〜っとしがみつく。“だぁ〜、だから今日は外せない講義があるんだってば!! 分かってくれ” と言って再び布団の中に押し込められる。う〜っと思わず涙目の上目遣いで恨めしげに彼の顔を見つめる私。そんな私の顔を苦笑いで見ながらとうとう彼は出かけて行ってしまった。
 彼といわゆる“彼氏彼女状態” になってから今年で4年目になる。最初はどことなしかぎこちない感じだったけどそれも半年・1年と年を重ねるごとにごくごく普通に接することができるようになった。私自身他人をあまり信用しない節があったわけだけど(まあこれは両親の離婚が起因しているところが大きいんだろう)、彼と一緒になってからは考えを改めることになった。今は素直に人の言うことを信用するし、それよりも何も笑顔が多くなった。大学の友達からは、“彼が出来てからあんた変わったね?” と言われることが多い。“どこが?” と問うと、“何か前は壁を作っていたように思うけど、それが全部取り払われたって言うかそんな感じ?” と言われる。
 まあ言われなくても自分でも分かっていたわけだけど…。やっぱり彼と付き合いだしてから自分も変わったのかな? と思えるようになった。そのきっかけを作ってくれた彼には感謝してもしつくせない恩があるわけだけど、付き合いだしてから毎年の今日は時間を空けてくれていた彼なのに、今年は…。と思うと何だかとても腹が立ってくる。しかも病身なのにも関わらずに出て行っちゃって…。と考えると、むかむかしてくるわけで…。と、突然頭の中で何かが閃く私。ささやかな復讐ではないけれど、私がどれだけ寂しかったか思い知らしてやろうと思って行動に移す私がいたわけだ。


 しかし、彼女にも困ったもんだよな? と俺は思う。まああれが本来の彼女の姿であると思えば可愛いのだが、どこに行って誰と会ってどんな話をしたかまで聞いてくるからこっちとしては迂闊なことは言えないわけだ。それがもとで一回騒動になって俺は麻美先輩から伝家の宝刀である、“めっ!!” をされてしまい、清香からはぶつくさ文句を言われてしまう。当然マイシスターからも夕食のおかずを一品減らされるという制裁を受けてぽんこつさんからはむむむむむぅ〜っという擬音を発しながら睨まれる? 始末で…。それならまだいいのだがうちには“超強力嫌がらせマシーン”のような口から先に生まれたような女・進藤がいるわけだ。こいつがあることないこと吹聴しまくってくれるおかげで俺はその誤解を解くのに早くて1週間、遅くて1ヶ月くらいはいろいろな方面で誤解を解かないといけないわけで…。もうあんな経験はしたくねーぞと思う今日この頃なわけだがな。
 で、講義中。彼女のことが頭から離れない俺はメモもそこそこにず〜っと考えているわけで。なんだか心配になってきたぞ…とそんなことを考えながらペンを走らせていた。講義終了の合図とともにいの一番に飛び出して彼女の住むアパートへと進む俺。途中ケーキ屋の前を通るかかると冬佳の好きそうなケーキがあったのでそれを2、3個購入してまた進む。俺もそう言う質だが病気にかかるとやけに人恋しくなるもんだ。まあ俺の場合は雪希がいたわけだからまだまだ救われてると思う。彼女は高校から1人暮らしと聞いているわけで。今まで寂しさを紛らわせるのも大変だったんだろうなぁ〜と考えるとあんな行動に出ても当たり前か…とも思った。
 アパートの部屋の前に到着。チャイムを押して待つ。のだが、いつもならすぐに出るって言うのに出ない。留守かぁ〜っとは思ったがあんなしんどそうな顔をしていて家を出るわけがない。よしんば病院に行っているにしたって何か俺にだけ分かるようにメモでも挟んでいるはずだ。そう思ってメモを探してみるものの…ない。玄関の扉のノブを持って回してみる。開いた。何か心配から不安に変わるような感じになる。とりあえず中へ入ってみる。ベッドを見てみるがそこに冬佳の姿はない。トイレかとも思ってしばらく待ってみたが出てくる気配はなかった。本格的にヤバい状況になってきたぞ〜っとふと押入れのほうを見てそれも杞憂に終わるような感覚になる。とともにこっちもこれだけ心配させられたんだし、逆に素っ気ない態度で過ごしたらどうなるだろうか? なんて言うイジワルな考えも浮かんでくるわけで。早速茶を沸かしてケーキを頂くことにしたわけだが…。


「もう、もうもうもう!! 健二くんってばイジワルなんだから〜っ!!」
 とぷぅ〜っと頬をこれでもかっていうくらい膨らませて言う私がいるわけで…。どこで気が付いたの? って彼に聞いてみたんだけど笑って教えてはくれなかった。今日は彼に日ごろの彼に対する鬱憤と言うか不満を態度に示そうと思っていたのに逆に鬱憤がたまる結果になってしまってすごくすごくすご〜く悔しい気分。ぷぅ〜っと頬を膨らませて彼の顔を思いっきり上目遣いに睨んでみるんだけど、“元が可愛い顔だからそんな顔をしたって小さい女の子がお兄ちゃんに相手してもらえなくて拗ねてるような…、そうだなぁ〜。ってそう! 雪希の小さいころと同じような顔だな? そんな風にしか見えんぞ…” だなんて言われる始末。風邪が治ったら見てなさいよぉ〜っ!! と彼の作ったお粥を食べながらそんなことを思う今年の1月14日、私はまた1つ階段を上った。

END