ぽんこつさん、家出する?


“お兄ちゃんが思い出してくれるまでおうちには絶対に帰らないんだからぁ〜っ!! ぷんぷんっ!! (○`ε´○) 日和より…”

 突然だが、俺の家の居候にして彼女な日和が家出をしてしまった。俺が用事でちょこっと家を空けた隙に家出をしたらしい。帰って来てテーブルを見ると上の文章が置いてあったわけだ。まあご丁寧に顔文字まで書いてあるところは日和らしいと言えば日和らしいのだが…。それ以前に何かあったっけか? などと考えるわけだ。思い出すと言う文言が入っていると言うことは俺が何かを忘れていると言うことになる。のだが…、俺には全く心当たりがない。強いて言うなら、昨日日和の大好きなおやつを食べちまったことかな? とも思うんだが、それは後で謝ったわけだから問題はないだろう。うん。じゃあ何だ? と言うことになる。とにもかくにも家出娘を探さないとな? と思って家を出たわけだが、後から考えると、何であの時にカレンダーを見ておかなかったんだと正直後悔しているわけだが…。
 さて、ぽんこつさんはどこに行ったのかな? と思って探しに出てみたわけだが、あいつの行くところなんてたかが知れてるわけだが、これが厄介そのものなわけで…。はぁ〜、とため息を1つ吐くとマスクをして家を出る。今年は変なウイルスが世界中に拡散しまくって国内でも1万人を超えたとか、この間スマホのニュースで言っていた。このせいでいろいろと厄介な状態になってきていることは事実なわけだが、これを流行らせた隣りの隣りのお国に対して腹が立つことは然り…。お笑い界の大御所もこのせいで亡くなっている。テレビもつまらなくなりそうだな? と思うことは俺の内々ではそう言っている。まあお笑い関係はまた新しいやつとかが出てくるだろうことと思うので大丈夫なんじゃないのか? と俺個人としては思うわけだけどな?
 と肝心のぽんこつを探さないといけない。しかし何が原因で家出なんぞをしたんだ? と考えるが、思う節がない。まああとになって考えると全部俺のせいと言うことになるのだが、今はそんなこととは露知らず、ぽんこつの行きそうなところを虱潰しに見て回っているわけだが、なかなか見つからん。これはひょっとして俺の仲間の家に転がり込んでるのか? と思って今度はそっちのほうに足を向ける俺がいたわけだ。
 まあ考えられえるところとしては5つのパターンがある。1つは麻美先輩のアパートだ。俺たちのお姉さん的な存在である麻美先輩は最強兵器である“めっ!!” を持っているのでさすがの俺でもかなわんわけで。しかも上目遣いの涙目で言ってくるので別にこっちが悪くなくても謝ってしまうのだが、これに関しては日和も苦手にしているわけだからまず麻美先輩の家と言う可能性は消える。次に悪友の女友達・清香が浮かぶが、清香自身は物事を公平に見る部分があるので何だかんだ言っても日和の矛盾点なんぞを突っついてくるに違いない。そうなって慌ててぼろを出すのは目に見えて分かっているので清香の家は俺の選択肢からは消える。冬佳先生の家なんぞは論外…。と言うことで2つに絞られる。まあ1つは一昨年だったか一人暮らしを始めたマイシスター・雪希のアパートなのは言わずもがななんだが、もう1つの可能性のほうが非常に厄介この上ないわけで…。俺としてはあまり近寄りたくないわけだが、なにせぽんこつさんに家のことはすべて任せているので今晩の食事もどうするのかと言う非常に切羽詰まった問題が出てくる。まあ朝飯は用意してくれていたのでそこには感謝したいわけだが…。
 ともかくも行動だ! とばかりにマスクをして道を進む俺。で、やってきたのがここ進藤家。最初に厄介な相手のところを調べておいたほうが後々楽でいいと思ってやってきた。まあ文句も言われるだろうが知ったこっちゃねぇ〜っとばかりにピンポーンとチャイムを押す…のだが。あれっ? 出て来んぞ? 出かけてるのか? と思って思い出した。そうだそうだ。進藤は一家で疎開するとか何とか言って親の郷里である名古屋方面のほうに帰ってるんだったっけか。まあどこに行っても相手はウイルスなだけにうつるやつはうつるんだろうけどな? と言うことで進藤も違った。あと残っているのはマイシスターのアパートだけだが、歯科衛生士のところなんかにあの虫歯になりやすい体質のぽんこつが行くわけがないだろう。縦しんば行ってもし虫歯が出来ていたら、どう言うことになるのかが容易に分かるのでこれもおそらくは違うと思う。となるとだ。隠された6つ目の選択肢が出てくるわけで…。やっぱりあそこか…。と思って反転して我が家に戻る俺がいた。


 家に戻る。そ〜っと玄関の扉を開け中に入る俺。まあ相手はぽんこつなやつだが気は抜けん。そう思って抜き足差し足、2階へ上がる。と、“お兄ちゃんもあの手紙を読んだら絶対反省して、‘日和、俺が悪かった。今度お前の好きなものを買ってやるから許してくれ…’って言ってくれるはずだよ〜っ。るんらら〜” そう言って能天気そうないつものぽんこつ声を出しているんだろう、そんなセリフが聞こえてくるわけで。取っ捕まえて洗いざらい今日のあの手紙のことを吐かせてやろう。そう思い乗り込もうと思って、んっ? と違和感を覚える。何か特別な重要案件を忘れてはいないか? とは思うのだが、今日のイタズラのことで頭がいっぱいだったのでその重要案件はどこぞへ吹き飛んでしまった。ともかくお仕置きだぁ〜っとばかりにバーンと部屋の戸を開け放つ俺。びくっとしてこっちを見るぽんこつさんの目がどこと無しか面白い。
「おい、日和さんや。あの手紙は何だ?」
 と問う俺にむむむむむむぅ〜っと声に出して俺の顔を涙目で睨むぽんこつさん。“お兄ちゃんがいけないんだからぁ〜っ!!” と言って更に上目遣いに睨んでくるわけだが、こんなぽんこつに睨まれたって怖くもなんともないわいっ! ってな具合に睨み返してやるともう全泣き状態でカレンダーの今日の日付のところに指をさしながらぐよぐよ泣く日和。な、何だぁ〜? 今日の日付? と思いよくよく見てみて顔が真っ青になる俺。こりゃ、3日間飯抜きは覚悟しておかなければならんな? とぐよぐよ泣きながらもどこか勝ち誇った風な顔をした日和先生を見る俺がいたのだった。


「さあお兄ちゃん、次のお願いだよ〜っ! 一緒にお風呂に入って!!」
 ってわたしは言うの。お兄ちゃんってばこの間からのわたしの何気ないアプローチをことごとく無視して挙句に忘れちゃってるんだからぁ〜っ! そう、今日はわたしのお誕生日。なのにお兄ちゃんってば全然何も言ってくれないし…。朝も何かあるかなぁ〜? なんて思ってたんだけどやっぱり何にもないからちょうどお兄ちゃんがおトイレに行ってる隙にササッと書いて自分の部屋に戻って様子をうかがってたんだけど、お兄ちゃんってばわたしのことは無視して出掛けちゃうんだもん。ぐっすん、しくしくしく…。って思い出しただけでも悲しくなってきちゃうから何とかしてお兄ちゃんに甘えたい! と思ってお願いと言うか命令と言うかそう言うものを出すわたし。ちなみに今日はいつもの年とは違って2人っきり。雪希ちゃんも例のコ○ナの対応で忙しいみたいで、今朝早く家のほうに来て、“お姉ちゃん、お誕生日おめでとう” って言ってプレゼントに電子マネー券をくれたんだぁ〜。コ○ナが収束したら雪希ちゃんも誘ってその券で美味しいものでも食べに行こうかなぁ〜なんて思ってるんだよぉ〜。
 だから今は2人っきり。2人っきりだからこんなお願いでも恥ずかしくないんだぁ〜。って! お兄ちゃん、何を逃げようとしてるんだよぉ〜っ!! お願い全部聞いてくれるまで放さないし離れないんだからぁ〜っ!! …って、えっ? “お前にしてはえらく積極的だな?” って? そりゃあわたしのお誕生日を忘れてのほほ〜んとしてるお兄ちゃんが悪いんじゃないのよぉ〜。もう! 今日は寝るまで言うこと聞いてもらうんだからぁ〜。ぷぅ〜っ! って頬を膨らませて怒った顔をしてるわたしだけど実のところはもう怒ってないわけで…。でもでも甘い顔をするとイタズラしてくるお兄ちゃんにはぐぐぐぐぐ〜って怖い顔をして睨むわたし。服の袖を掴んでお風呂場までやって来ると、お兄ちゃんは急に慌て出すんだからおかしいよねぇ〜。いっつもえっちな本とかいっぱい読んでるのに、やっぱり本物と言うか現物があると恥ずかしくなっちゃうのかなぁ〜って思っちゃう。
 それでも一緒に入るんだよぉ〜っとすぽっと生まれたままの姿になるわたし。“いっ? いや、せめて前は隠してくれ〜” と言うお兄ちゃんにふるふるふるってどこかのお嬢様みたいに首を横に激しく振ると、頬をこれでもかって言うくらいにぷく〜って膨らませてお兄ちゃんの顔を上目遣いに睨む。お兄ちゃんはお兄ちゃんでわたしの顔を睨む。もうこうなったら根競べだよぉ〜って言う感じにお互いの顔をぐぐぐぐぐ〜って睨んでたんだけど…。


「はぁ〜、こいつの甘えん坊はそうそう治りそうもないな?」
 とむにょんとした柔らかい感触を手に感じながらそうゴチる俺。と言うか風呂場ではいきなり生まれたままの姿になってぐぐぐぐ〜っと怖い顔?(と言うより小さい女の子が遊んでもらえなくて駄々をこねているようにしか俺には見えんわけだが…)をして上目遣いに睨んでくるわけで…。まあ睨んだ顔もへっぽこ顔なのはご愛敬って言うところなのだが…。今回は俺が全面的に悪かったので俺が折れて我慢していやいやながら一緒に入ったわけだが、ここでもその尋常ではない甘えぶりを発揮してくれやがるわけで…。と言うより女の子の一番大切な場所を同棲している彼氏に洗わせるか? と思うのだが…。
 まあそんなこともあって這う這うの体で自分の部屋に戻ってくると、パジャマ姿の日和先生がにんまり笑いながらドアの真ん前に立っているわけで。こう言うにんまりと笑うのは何か良からぬことを考えているときだと思い、戦略的撤退をとドアを閉めようとするのだが、“お兄ちゃん! 何を逃げようとするんだよぉ〜。むぅ〜…” と一転むくれた顔になるとガシッと俺の手を掴んで中へと引きずり込もうとしている日和先生。こいつは一見見た目は弱そうなのだが力は意外に強いのでふっと力を抜いた瞬間にすぽーんと部屋の中に引き摺りこまれることがよくあるのだ。で今回はその悪いパターンにはまってしまって、部屋の中へと引き摺りこまれて、今現在抱き枕状態で寝かされている。
 まま俺がこいつの誕生日を忘れていたのがそもそもの原因なんで、とやかくとは言えないんだが…。日和よ…、もう20歳も越えて誕生日を祝ってくれなかったと言うくらいで膨れることはないだろうがよ…、とは思うんだがこれが俺の彼女なんだよな? とも思う。まあ、ケーキも何も用意できていない今年の誕生日だったが、それは今度のマイシスターのときの誕生日に一緒にすればいいか…と思った今日も後数分で終わりな4月23日、ぽんこつな、でもそこが可愛い俺の幼馴染みにして彼女な早坂日和の誕生日だ。って! 俺の真ん前でうつぶせになるなぁ〜。

END