プレゼントは俺?
「るんららぁ〜」
俺の横、いつもながらのへっぽこ顔で呑気に訳の分からん歌なんぞを歌っている幼馴染みが一人。今日は学校の職員会議とかで短縮授業だ。まあ俺たち学生にとっては早く帰れるってことで大歓迎なんだけどな。現に今日も心の中は拍手喝采だったし…。で今、俺の頭の中では渦中の学校へと向かっている途中なんだが……。なんか日和がいつもより浮かれてるんだよな? 何でかは知らんが、まあこいつのことだ。弁当がいつもより豪華だとか、朝ごはんがうまかったとかそう言うしょーもないことなんじゃないのか? そんなことを考えていると、日和がこんな質問をしてくる。
「けんちゃん。ここで問題だよぉ〜? わたしはなんでこんなに嬉しそうなんでしょうか?」
「う〜ん……。便秘が治ったとかか?」
考える振りをしてそう答えると、何だか知らんがう〜っと言いながら頬を膨らませて少々怒った表情になる日和。ちなみにこの顔が俺が一番好きな顏だ……。でもなんだ? なんかの記念日か何かか? 例えば時計が開発された日とか…。俺の好きなゲームの発売日とか…。ってそれはこの前だったしなぁ〜……。なんて考えてながら日和の顔を見ると、
「……」
今にも泣き出しそうな瞳でこっちを見つめている。な、何でだ? と思って聞いてみるが……。
「う〜っ! ふ〜んだっ!! 今日はわたしのお誕生日なんだよ〜? それなのにぃ…。もう、けんちゃんのバカ〜」
最後のほうが聞き取りにくかったがそう言うとぷいっと顔を背けてしまった。何度聞いてもこの調子。結局学校に着くまで日和は俺の顔を睨みつけていた。って言ってもぽんこつだからそんなには怖くないんだけどな? ぷぅ〜っと膨れた頬を突くと“何するのよ〜っ!!” と言って涙目になりながら俺の顔を睨む。俺が何したって言うんだ?
そのまま学校へ到着。日和はと言うとまだ俺の顔を睨んでやがるしよ…。はぁ〜っと一つため息。そういやあのデカリボンは? 姿が見えん。南山の野郎に聞くと、何でも風邪を引いたとかで休みなんだそうだ。あの健康優良児にしては珍しいこともあったもんだ。雪希と進藤は昨日から修学旅行でいないし…。麻美先輩は今年の春に卒業して遠くの大学に行ってしまった。知ってるやつと言えば、腐れ縁の南山と、俺の目の前、ぷぅ〜っと頬をフグのように膨らましている幼馴染みくらいだけだ。
「なあ、何をそんなに拗ねてるんだ? って言うか今朝から変だぞ? お前…」
「けんちゃんが悪いんだからねっ? ぜんぶぜんぶぜ〜んぶっ!!」
ぷんすかぷんという効果音も出そうな勢いで怒る日和。怒った顔もへっぽこ顔なのはご愛嬌。って! お、俺か? 自分を指差してそう聞いてみるとう〜っと睨んだままこくんと首を縦に振る日和。な、何でだ……。今日はえ〜っと、何日だっけ? 睨む日和にちょっと恐々聞いてみるが…。
「いいもんいいもん。けんちゃんのお誕生日のときには同じようにしてあげるんだからねっ? ぐっすん。しくしくしく…」
ますます不機嫌な顔で…、今にも泣き出しそうな顔になってるって言うかもう泣いてるぽんこつさん。何やらぶつぶつ言いながら俺の顔をうるうるした目で睨んでくる。最近は日にちの感覚がまるっきりないもんで今日が何日なのかさっぱりだ。とふと黒板の日付を見ると…。
「けんちゃんちにお泊りだよ〜っ。るんらら〜」
「こらっ!! ぽんこつ!! あんまりでかい声で言うんじゃねーっ!!」
いつもの間延びした声で言う日和。顔を見るとにこにこ顔だ。まあ、今回はあのマシンガンとサテライトキャノンがいなかっただけでもましだな。そう思う。いたら今頃はこっぴどくやられているところだしよ…。って! プレゼントも何も用意してねーよ! 俺!! どうするか…、としばらく熟考してこう言う。
「また今度にしねーか? なぁ? だって雪希たちもいないしよ…。そ、それにプレゼントも何も買ってねーし…」
「ええ〜っ? 今日はお父さんもお母さんも今日から旅行に行っちゃってて家にいないんだよ〜? そ、それに…、わたし一人でお留守番なんて心細いよ〜っ。プレゼントなんていらないから、けんちゃんちにお泊りしたいよ〜っ。うわぁぁぁぁ〜ん。ぐよぐよぐよ〜」
今までのにこにこ顔はどこへやら、駅前の商店街のど真中で急に泣き出すぽんこつさん。くっそ〜っ!! 何でこんな公衆の面前で泣き出すんだ? って言うか、おじさん、おばさん。年頃に娘を放ったらかしにして旅行はどうかと思うんですが……。って言えた義理じゃないけどな? 俺の親父も同じようなもんだしよ…。ふと周りを見渡してみると、奥様連中が何やらこちを見てひそひそ話をしてやがる。日和は日和で、“もうけんちゃんのお嫁さんになんかなってあげないんだから〜っ。うわぁ〜ん” と訳の分からんことを大声で言ってやがるし…。ぽんこつの手を掴んで一気に俺の家までやってくる。後で聞いたんだが日和の親父さんたちは今日から一週間ばかり旅行に行っていないんだってさ。幼馴染みの俺んちに電話があったのが三日前。雪希が何やら話してたが当然上の空で聞いていたので今日まで知らなかったわけで…。くそぅ! 何で俺がこんなぽんこつの面倒を看らにゃならんのだ? とは思うものの…。
「うふふふふふふふぅ〜」
と笑顔百倍の日和の顔を見ると、こっちまで笑顔になってしまうわけで…。“はぁ〜。ったく、しょーがねーなー”とどこぞのアニメかゲームかの主人公のような台詞を口にしてにこにこ顔の日和を見ながら玄関の扉を開ける俺がいるのだった。
END