虹と飛行機雲


 今日5月7日は私の誕生日。お兄ちゃんは、“今日はお前の誕生日だったな…” って朝ごはんを食べるときそう言ってくれた。
「うん、そうだよ? お兄ちゃん」
「もうお前も17歳か……。早いもんだよな…」
 そう、私は今日で17歳になる。にこっと微笑むとお兄ちゃんも微笑み返してくれた。…ということはお兄ちゃんと一緒に暮らしてきて、もう12年になるのかな?…。ふと思った。私はお兄ちゃんの本当の妹じゃない。でもこのことは私のお友達やお兄ちゃんのお友達はみんな知っている。私のお父さんとお母さんは私が5歳のときに事故で他界した。おじいちゃんもおばちゃんも昔に亡くなっていたので身寄りのない私は、お父さんのお友達である今のお父さんの家に引き取られた。
 そこにいたのが今私の目の前で美味しそうにご飯を食べているお兄ちゃんだった。最初は生活環境の変化に慣れなくて泣いてたけどそんな私を励ましてくれる存在がいた。それが私の大好きなお兄ちゃん。今も昔も優しい私の大好きな人。
「う〜ん、なあ、雪希。せっかくの日曜だから日和たちを呼んで一緒にパーティーなんてどうだ?」
「うん。私はいいよ? でも日和ちゃんたちに迷惑かけさせちゃうんじゃないかなぁ〜?」
「ま、まあそれに関しては俺に任せてくれ…」
 そう言うとお兄ちゃんはにこっと微笑む。“もうみんなに言っちゃってるのかなぁ〜?” って、私はそう思ったの。この前の日和ちゃんのお誕生日のようなことをまた考えてるんじゃないのかな? って…。朝ごはんを食べ終わり、ほっと一息つくお兄ちゃん。私は台所で食器を洗ってる。しばらくだらりとしていたお兄ちゃんは急に立ち上がると…。
「雪希、俺ちょっと出かけてくるわ…。って、小雨がぱらついてやがる…。ちっ…。ついてねーなー…」
 ちょうど小雨がぱらぱら降っている外を見るとお兄ちゃんは残念そうに舌打ちする。“んじゃちょっと出かけてくるわ…” そう言うと傘を持ってお兄ちゃんは出かけていった。さあ、お掃除しなくちゃ! そう思って掃除機を持ってくる。電源コードをコンセントに入れてスイッチオン! ぶぃ〜んぶぃ〜んと掃除機の音も快調に聞こえる。掃除機がまるで歌を歌ってるみたい…。うふふっ。と一人微笑んだ。お掃除が終われば今度はお洗濯だ。ポイポイと洗濯物を洗濯機の中に入れて洗剤を入れてスイッチオン。今日は小雨がぱらついてるからお洗濯物は乾燥機だね? そう思ってタイマーを見るとまだ終了までに15分ぐらいの余裕があった。
 あっ、そうだ! お茶の用意でもしておこう。そう思ってお湯を沸かす。もうそろそろ洗濯が終わるころだ。お湯も沸いてポットにお湯を移すと早速洗濯機のところへ行こうとして……、ふっと空を見た。いつの間にか雨が上がってる。お日様も出ていた。と…、
「あっ、虹が出てる…」
 空にはきれいな虹がかかっていた。“きれいだなぁ〜…” そう思って洗濯物も忘れてその虹を見ていた。よく見てみると虹の上にもう一つ薄く虹がかかっている。その上の高い水色の空を飛行機が飛行機雲を出しなが飛んでいく。私はにっこり微笑みながら洗濯物のところへ向かった。


 洗濯物もたたみ終えて、ほっと一息。お兄ちゃんたちはもうすぐ帰ってくるだろう。そう思っていると?
「こんにちはぁ〜。雪希ちゃ〜ん」
「“雪希ちゃ〜ん” じゃねえ!! お前はどうしてそんなぽんこつなんだよっ!!」
「う、う、うわぁぁぁぁ〜ん。またけんちゃんがわたしのことぽんこつって言ったよぉ〜。清香ちゃ〜ん」
「バカ健二!! 日和を泣かせるのもいい加減にしなさいよ!! 全く…。ねえ、進藤さん、神津先輩」
「そうですそうです!! いっつも私や小野崎先輩や早坂先輩に対するその言い方! 今日こそ雪希ちゃんに言って叱ってもらいますからねっ!!」
「…めっ!! ですよ?…。健二さん…」
 玄関の方から賑やかしい声が聞こえてくる。私はうふふっと微笑んでお兄ちゃんたちの待つ玄関へと向かった。そんな今日、5月7日。私のお誕生日…。

END