夏の海と力うどん
「ふぅ〜、ふぅ〜。ちゅるちゅるちゅる〜、ごっくん。はぁ〜、やっぱりおいしいです…。力うどん」
これぞ至福のときみたいな顔をしながら俺の彼女は力うどんを食べている。今日8月3日は俺の1つ年上な先輩で彼女な神津麻美の誕生日だ。まあ高校時代に一応彼氏彼女の関係になって、同じ大学に入っていつも一緒にいるので、さながら双方が保護者的な関係になっている。昨年は勉強会と言う形で俺の友達やらを呼んで一緒に勉強しながらまあ誕生日なんぞを祝ったりしたわけなんだが、呼んでもいない進藤までやって来て、ひっちゃかめっちゃかにされそうになったところ、彼女がすくっと立ち上がったかと思うと、伝家の宝刀である“めっ!!” をして進藤を黙らせたことは記憶に今でも残っている。俺の悪友で健康優良児の清香やぽんこつへっぽこ幼馴染みである日和や、この俺でさえもあんな麻美は見たことがなかったもんで少々と言うか大いに驚かされたわけだが、まあ麻美も普通の大学生として、いや、大人の女性としてやっていけてる証拠なんだろう。そう思った。
で今年。昨年の轍は踏むまいと夏休み初日からレポートなんぞを必死にこなし、わずか3日でほぼすべての大学提出用のレポートを終わらせた俺。これも進藤と言うとんでもなく迷惑な地雷を踏むまいと頑張った証しだと思う。さすがに3日で終わらせた無理が祟ったのか終わらせた翌日から体調のほうを大いに崩してしまい、近くの医院に点滴なんぞを打つ羽目になってしまったわけだが、まあこれでもあの進藤の物言いよりはましだと思う。とかく俺と麻美の邪魔ばかりしてくる? 進藤。そのくせこっちが邪険に扱うと涙目の上目遣いと言う女の子の最終兵器を用いてくるので厄介なことこの上ない。まあ今年は課題をすべて終わらせた俺とマイペースにやっている彼女の2人でひっそりと旅行なんぞをしているのでそのことを知らない進藤は今か今かと待っていることだろう。…まあ少し可哀想な気もするけどな?
夏は山か海だろうと言うことで彼女に聞いてみたところが、“海に行きたいです…” と言うことで地元から離れた海に2人でやって来た。今年は変な天候だったなぁ〜。西日本では梅雨入りが例年より22日くらい? 遅れるわ、台風は来るわ…。と、そんな感じで実のところ今夏は海行きは行けないかもと思っていたわけだが、何のことでもない暑い夏がやって来たわけで…。と言うか梅雨明けしてから連日の猛暑が続いていて、暑さにバテ気味な感じだ。そこへ来ると俺の彼女は元気いっぱいだよな。と思う。何よりその食欲たるや俺から見てもそんなに食って太らないかどうか心配になるのだが、その栄養分は全部胸とお尻に行っているのか、いわゆるボンキュッボンな体型に拍車をかけているような感じで、この間自分で測ったところがB97W60H92と言う感じだったらしい。とにかくそんな感じの彼女なのでアッチ系の人によく呼び止められるらしく、この間は撮影に12万出すとか言われたらしい。まあそのときは電話で呼び出された俺が行って丁重に? お断りをしたわけだが…。とにかく俺の彼女は体型が体型だけにそう言うアブナイ感じの仕事に引っ張られやすい。まあ彼氏としては恥ずかしさ半分気配り半分嬉しさちょっぴりと言うところなんだけどな?
と水着に着替えて海の家で借りてきたビーチパラソルとか敷物とかを用意していると、“健二さーん” と俺を呼ぶ声が聞こえてくる。いよいよ来たか! と内心ドキドキしながら振り返る。白いビキニスタイルの彼女がばいんばいんゆっさゆっさと肉付きのいい部分を揺らしながら俺のほうに向かって走ってくる。“慌てなくてもいいぞ〜” そう言いながら内心あんなに揺れて大丈夫か? と思ってると案の定“キャッ!” と言う声とともに蹲る彼女。後ろ手にもぞもぞ何かやるとまた立ち上がってやってくる。
「はぁ〜、危なかったですぅ。もう少しで解けちゃうところでした」
とてへペろ状態な彼女に、“ただでさえ周囲の視線が行くのに急いでくるな” とおでこに軽くデコピンを1つする。えへへと笑う彼女が何ともなく可愛かったことは言うまでもない。さて、入るかと2人で海に入る。潮の香りが心地いい。借りてきた浮き輪の上で波に揺られている彼女の顔は本当に楽しそうだ。俺も泳ぐ。そうしているうちに腹の虫がぐ〜っと鳴る。そろそろ昼時かな? そう思って彼女を連れて自分の場所へ戻る。この後また泳ごうと思っていた俺たちなので、荷物はそのままに海の家へと向かって歩き出そうと思った刹那、“ちょっと待ってください。健二さん” と麻美が持ってきていた手提げかばんの中をゴソゴソしている。何をしてるんだ? と思って見てみると?…。
「見てください健二さん! 力うどんですっ!! こんなこともあろうかとかばんにマイお餅を忍ばせてきたんですよ〜。うふふっ」
と薄くスライスされた角餅を頼んでおいたうどんに投下して即席の力うどんを作ってニコニコ顔で俺に見せてくる麻美。まあ3度の飯より餅が好きな麻美のことだからこうなることは分かってはいるんだが、何も海に来てまでせんでも…とは思う。もっとも麻美の場合、餅がエネルギー源みたいなものだからなくなると非常に厄介なことになってしまう。それが証拠に麻美の今回の水着はこの間俺の家に勉強を教えに来た麻美にいつものお餅を切らしていた俺への罰に買ったやったものだからな…。それにしても美味そうに食べるよな〜。そう思って見ていると、“おすそわけです…” と薄切り餅を俺のラーメンのどんぶり茶碗に移してくる。ラーメンに餅と言うのはミスマッチなんじゃ? と思ったが、これが意外に合うわけで…。俺も自分で餅を持とうかな? なんて思ってしまうほどに美味かったことは言うまでもなかった。飯を食い終えまた遊ぶ。まあお約束のサンオイルを塗ったりもしたわけだが、圧倒的なボリュームで周囲から羨望の目で見られたことは言うまでもなかった。
やがて陽はだんだんと西に傾き始める。そろそろ潮時だろう。と彼女と後片付けなんかをして帰り支度を始める。服を着替えて待ってると、いつもの青いオーバーオールにねこ柄のTシャツと言う来た時と同じ格好の彼女が駆けてくる。また昼みたくなったら困るので俺も彼女のほうに駆け出す。と案の定躓いてこけそうになる彼女をキャッチする俺。ふんわりした胸の感触が腕に当たったのは周知の事実だ。“またこけそうになっちゃいました…、けど健二さんが助けてくれたからこけなくて済みましたよ?” とにっこり笑顔で彼女が言う。まあこう言うところが俺の彼女のいいところなのかもな? そう思い帰路に着くために駅へと向かう。ちょうどいいところに電車が来ていた。さっと乗り込む。他にも海からの帰り客が乗って来て多少混雑し始める。俺の彼女はと言うと、その混雑気味な声を枕にすぅ〜っ、すぅ〜っと気持ちよさそうに眠っている。そんな彼女が大物だなぁ〜っとつくづく思ってしまう今日8月3日、俺の1つ年上の先輩で彼女な神津麻美の誕生日だ。
END
おまけ
やっとこさ自分たちの町に帰ってくる。来年の誕生日は山にしようかなどと話し合いながら麻美の家に向かっていると、“はぁ…、はぁ…、や、やっと、見つけましたよ〜。先輩。わ、私を置いて行くなんていい度胸じゃありませんか…” とまるでどこぞの幽霊漫画の悪霊みたいな感じな声が俺の後ろから聞こえてくる。振り返りたくねぇ〜っとは思ったが、振り返らないと余計に厄介な感じになるので振り返る。案の定、お邪魔虫じゃなかった、進藤がぶりぶり怒りながらこっちをぐぐぐっと怖い目で睨んでいた。言うに今日は一日中俺と麻美を探していたんだそうで…。まあそんな余力があるなら他にもっと建設的なことが出来るだろうに、と思うわけだが…。目ざとく水着の入ったカバンを見つけると、“ああっ! 先輩たち、海に行ってたんですね? むぐぐぐぐ…、私がいないからってイチャイチャイチャイチャなんかして! えっちです!!” だの、“私も連れて行ってほしいです! と言うか、連れて行くべきです!!” とか駄々をこね始める。
放っておいて帰るか…、と横をすり抜けようとしてガシッと肩を掴まれた。掴まれた先を見てみると、ふお〜っと某拳闘漫画の魔○気みたいな何やら怪しい気を出しながらなぜか○ョジョ立ちに立っている進藤がいたわけで…。その後、麻美だけは助けなければと思い進藤を何とか言いくるめて麻美を送って行ったあと俺だけファミレスに呼び出されてフードファイターみたいな量をリスが頬袋にいっぱい詰め込んだ感じに食べる進藤を見る俺がいたのだった。もちろんお代は俺の金だ。はは、ははははは、父ちゃん悲しくって涙出てくら〜っ! と昔やっていたドラマの再放送の文言を思い出した。アルバイトのシフト、増やしてもらおう…、それからこれからどんなにイジワルされてもこいつも連れて行くべきだな? と心の中で深く思った今日8月3日、俺の彼女で先輩な神津麻美の誕生日だ。ぐふっ…。
TRUE END?