お姉ちゃんは怒ってます!


 国崎往人とみちるの顔をややぷぅ〜っと頬を膨らませつつ交互に見つめているお姉ちゃんの目がちょっと怖い。今日12月22日はみちるの異母姉って言うのかな? そこら辺はまだ分からないけど、大好きな美凪お姉ちゃんのお誕生日…のはずだったんだけど、なぜかお姉ちゃんはご機嫌斜めって言う感じでみちるたちのほうを上目遣いのやや怖い顔をしながら見つめてる。曰く、“今年もみちるとばっかり遊んで私とは遊んでくれなかった”、だの、“そんなに私のことが嫌いなんですか?” だのとぶつぶつぶつぶつ優しい声で言っているわけで。冗談じゃないよ! 誰が国崎往人となんか遊ぶもんか! みちるがちょびっと国崎往人のおかずを取ったらげんこつでぐりぐりしてくる奴なのに…。と思って、“みちるは国崎往人となんか遊んでない!” って言ってもじ〜っとみちるのほうを見つめてくるだけ。国崎往人も何か言え! とばかりに国崎往人の鳩尾辺りを肘鉄砲で小突いてやる、ゲフゲフと言いながら国崎往人はこう言った。
「俺はこいつとは何の関係もない! と言うより敵対関係だ。見たろ? 今の攻撃を。あんなことをしてくるやつなんだ。そんなやつとどうやって仲良しだなんて思えるんだ? お前の考えてることは分からん! 一体どこを見ればこれが“仲良し” に見えるんだか…」
 そう言ってみちるの顔を怖い顔をして見つめてくる。国崎往人と同じことを考えてるのは何だか癪に障るけどみちるも同じ意見だったから何も言わずにうんうん頷いてた。とそんなみちるたちの同じ行動を、仲良しと判断したのかお姉ちゃんはますます頬を膨らませる。頬ってあんなに膨らむんだと思うくらいパンパンに膨らませておまけに涙目になりながらこっちを見つめてくる。
「もういいです。国崎さんはみちるとご一緒にどうぞ。私は廃駅舎に行きますから…。もう、知りません!!」
 そう言うが早いか、お泊り用のバックを手にガチャ、バンッと扉を思いっきり閉めて出て行ってしまった。あ、あわ、あわわわわわわ…と慌てふためくみちると国崎往人。ど、どどど、どうするんだよ〜。国崎往人〜。おばさんはあらあらと言う風な顔でお姉ちゃんの出て行った玄関のほうを見ている。最近はこんなことが日常茶飯事のように起こってるって迎えに来た国崎往人も言ってたし。そう言えば去年もそうだったなぁ〜なんて思いながら、どうしようかな? なんて考える。でも考えてても答えなんて出るはずもないのでお姉ちゃんを探しに行くことにしたみちるだったんだけど…。


「国崎さんはやっぱり私なんかよりみちると遊んでた方がいいんです。私はどうせグラマーな女ですよ…。国崎さんの好みのロ○ーな女の子にはなれません。だからって私の前であんなに楽しそうに遊ばなくてもいいじゃないですか…」
 廃駅舎のベンチに腰掛けて星を見ながらそう独り言を呟く私。今日は私のお誕生日だったのに大好きな国崎さんはみちると遊ぶ方に夢中になって全然私には構ってくれません。いいです。そっちがその気ならこっちは家出してあげます! って出てきたのはいいけれど、いざ出て来てみるとやっぱり人恋しくなるのは当然なわけで…。もう帰りましょうか…なんて考えてるとふっと向こうから人影が! とっさに隠れる私。何でこんなことをしたのか自分でも分かりませんが今はほかの人には会いたくないと言う心境だったのでしょう。そう思って隠れて見ていると、国崎さんとみちるではありませんか? じ〜っと様子を眺める私。そんな私のことなんかお構いなしっていう感じにじゃれ合う2人。
 見ていてとても腹が立ってきますが、ぐっと我慢です。そう思っているとついに抱き合うような姿勢になるではありませんか? いくらなんでも酷すぎますっ! って言うか国崎さんは節操がなさすぎです! わなわなと手が震えてくるのが分かります。目には涙が溢れてきてますが、これは汗! 汗なんです! そう思ってそこら辺に落ちていたフォークを握りしめて、ドン! と国崎さんの前に出る私がいたのでした。


「国崎往人! お前は来るなっ! あっち行け! しっしっ」
 とこんな調子で邪険にされてるって言うのに、遠野の考えだとこれがじゃれ合ってると言うふうに見えるらしい。普段考え方が微妙にズレてるな? とは思っていたがまさかここまでとは思ってもみらなかった。極論遠野はあんな飄々とした顔をしていて実のところものすごい甘えん坊なんじゃないかと思う。そうでなければこんな会うたびに飛び蹴りをかましてくるようなガキと一緒にいるだけであそこまで怒って家を飛び出すことなんてせんだろう。まあ一番問題なのはそのことに自分が気付いてないことだろうな? そう思いつつ、遠野の隠れているであろう廃駅舎までやってくる。さて、どこに隠れているのやら…と辺りを見回していると背中に一撃をもらう。このクソ娘〜っ! とばかりに捕まえて頭をぐりぐりしてやる。“い、痛い痛い…。くっ、くそぅくそぅ” とどこぞで聞いたような台詞を口にしながら、ぐぐぐっと俺の顔を涙目で睨んでくる。はぁ〜、やれやれだ。妹は妹で会えば積年の恨みでもあるような感じで狙ってくるし、姉は姉でそんな俺たちの血で血を洗う抗争を、ただのじゃれ合いとしか見ていないんだからなぁ〜。
 と突然後方から何やら禍々しい気が発せられていることに気がつく俺。まあ大体は感づいたんだが、今までの空気よりもさらに重い空気を出しながら、じわじわ近づいてくるわけで。みちるは? と見れば俺の後方の木の陰から、“いいぞ〜、お姉ちゃん。そのまま国崎往人をやっつけちゃえ!!” そう言いながらガタガタ震えたような声を出している。ああ、多分また聖の厄介にならにゃならんのか…と思いつつ前を向いた俺の目に飛び込んできたものは異様に笑顔な遠野の顔だった。


「ん〜っと、ああ、これくらいはキミの回復能力からして2、3日もすれば良くなるだろう。は〜い、次の人〜」
 とちょろっと傷口を見ただけでこう言って退席させる女医。このヘボ医者め〜! とは思ったが生憎とこの街にはここしか医者がいないのですんでのところで言葉を飲み込む俺。遠野はやけに申し訳なさそうにしながら俺が出てくるのを待っていた。でもまさかプラスチック製のお子様フォークでここまで傷がつくとは思わなかったわけだが…。これからはあまりみちるとは関わらないようにしようと改めて思う今日12月22日、怒らせたら本当に危険な俺の彼女・遠野美凪の誕生日だ。ついでを言うと傷口は本当に2、3日で後かたもなかったようになくなっていた。医者の見た目恐るべし! と思う今日この頃だ。はぁ〜、俺の平安はいつ来るんだ? 誰でもいいから教えてくれっ!!

END