かまってくれなきゃ拗ねちゃいます!


 今日12月22日はみちるの一番大好きなお姉ちゃんのお誕生日だ。だからみちるは今年もこうやって1人、バスに揺られている。おねえちゃんにいっつもくっついてみちるからお姉ちゃんを奪おうとしている男・国崎往人とは会うたび会うたびいっつもケンカしている。だけどお姉ちゃんはどこか勘違いしているみたいで、仲良しって言うふうに見られてる。冗談じゃないよ! いっつもみちるにイジワルしてきたりするような国崎往人なんかと仲良しだなんて! とは思うものの結構2人でお姉ちゃんのご機嫌を取ったりしてるのでそうお思われても仕方がないのかもと最近になって思うようになってきた。でも国崎往人は敵だ。みちるが最後に残しておいたおやつを取って食べちゃうくらいは朝飯前、この前遊びに行ったときなんかお風呂に一緒に入ってこようとしてたんだから! あの時大声を出してなかったら絶対入ってきてみちるにえっちなことでもするつもりだったんだ、と思うと未だにメラメラた怒りの炎が上がっちゃう。まあその後でお姉ちゃんにこっぴどく怒られてたわけだけど、お姉ちゃんはちょっとと言うか大分変わっていて、その後で一緒にお風呂に入ったり寝床も一緒にしたりして全く国崎往人を怖がっていないわけで。そんなお姉ちゃんの考えが分からないみちるがいたりする。
 何であそこまで変態誘拐魔な国崎往人を好きなのか…。そりゃあ、ちょびっと…、ほんのちょびっとだけはみちるだって悪い気はしないけどあそこまで好き好きにはなれない。じゃあ何でと思うわけだけどこれが分からない。お姉ちゃんが言うには、“お世話になりましたから…” ってにっこり笑って言うだけで全然分からないって言うか…。みちるがお姉ちゃんと知り合う前の間に何かあったのかな? 例えば国崎往人に悪い人から助けてもらったとか、手が届かないところの本を取ってもらったとか。でもそんなことでみちるは感謝はするけど好きにはならないかな? と思うんだけど、お姉ちゃんはちょっとしたことでも好きになりやすいのかなと思う。そう思うと何だか国崎往人がますます嫌いになる。みちるの大好きなお姉ちゃんを1人占めにしている国崎往人が羨ましく思う。とにかく今年はお姉ちゃんにぴったりくっついて離れないでいてやるんだ。むふん…。と息も整えてバスの外を見る。この間雪が降ったのかところどころ白くピカピカ輝いて見える。そうこうしているうちにお姉ちゃんの町のバス停に到着。一番に降りた、と言ってもみちる1人だけだけどね。山間の町は日が暮れるのも早いなぁ〜。お化けが出て来そうだ。お化けだったらまだいいほう、国崎往人だったら恐怖でおしっこが出ちゃいそう。そう思いながらきょろきょろ見渡してみるとかのりんのところの犬のポテトを発見。呼んでみると、“ぴこぴこぴこ!” って言いながら飛んで来る。“久しぶりだねぇ〜。何かお姉ちゃんたちに変わったところとかなかった?” と聞いてみると“ぴこぴこぴこぴこぴこぴここぴこ!!” ってまくしたてるように吠えてる? ポテト。絶対何かあったんだなぁ〜! 国崎往人〜!! と思って国崎往人の住んでる廃駅にいの一番に乗り込む。がちゃがちゃとドアの取っ手を掴んで引っ張ってると後ろからいきなり頭をげんこつでグリグリされて、何だぁ〜って思って後ろを見ると国崎往人が仁王立ちで立っていた。
「何だ? みちるじゃないか。どうしたんだ? こんなところで…。と言うか遠野はどうした? お前がいるってことは遠野もいるってことだろ?」
 一瞬はぁ? ってなっちゃった。国崎往人が続ける。“そう言えば最近な、遠野の機嫌がどこかおかしいって言うか悪いんだよな? 声を掛けてもぷいって横を向くし、それかと言ってぷく〜っと頬を膨らましたまま俺の後をつけてくるし…。なあお前も何か知らない…か?” か? の字が出るか出ないかの間に鳩尾に一発キックをお見舞いしてやった。まさか今日のことを忘れてるなんてないだろうと思ってたみちるがバカだった。“なっ? おい、いきなり何するんだ!” とすごい剣幕で言う国崎往人にも負けないくらいの目で、国崎往人を見遣りながらカレンダーの今日の日付のところを指さして更にぐぐぐっと睨むみちる。“げほげほ、き、今日に何かあるのか?……、ってああっ!!” と気がついたのか素っ頓狂な声を上げる国崎往人。ここまで忘れてるなんてある意味すごいよね? とも思うんだけど、お姉ちゃんは絶対期待していたと思うんだ。それを忘れるなんてありえないし許せない。そう思って国崎往人を引っ張ってお姉ちゃんの家に連れて行くみちるがいたんだけど…。


「私が○リーな体じゃないからみちると付き合うことにするって言うんですか? …知りません!!」
 とどこか間違ったことを言う遠野が実に恨めしく俺と遠野の異母妹・みちるの顔を見遣っていた。俺自身はここのところの寒さで体のほうを害してしまい、2週間ばかり隣り町の大きな病院に入院していてようやく今日退院していたばかりなので今日が何日であるのかが分からないわけで。ちなみに行った先で緊急入院みたくされていたわけなので、このことを知ってるのは凶悪女医者・聖だけと言うことになるのか? まあもっともそんなカレンダーを見る癖はない俺なので彼女の誕生日にも気づくわけもない。とは言え、俺がこう言う性分なことくらい分かっているはずなんだが、どうにもこのボケているのかツンデレなのか分からん彼女は今部屋の隅っこで膝を抱えて拗ねている。お袋さんは今日からまた旅行らしく朝早くに出掛けていったとか…。まあこんな俺が言うのもなんだが、お袋さん、俺、何か悪いことしましたかね? と思わざるを得ない。
 とにかくゲシゲシ俺の尻を蹴るみちるにイラつきながらも、遠野に謝りを入れる俺。だが俺を見る目はちょっとやそっとじゃ許してもらえないくらいの目だ。と言うか俺は○リーな体つきよりはボンキュッボンな体つきのほうがいいって毎回言ってるのに全然言うことを聞こうともしない。今も、“この前もそうだった、その前も、あの時も…” と言いながら涙目の上目遣いに見遣ってくるわけで…。こうなりゃヤケだ! とばかりに遠野の体をグイッと引っ張って抱き寄せる。“キャッ” と悲鳴にも似た声を発しながらぼふっと俺の胸に飛び込んでくる遠野。その間もみちるからはゲシゲシ蹴りを入れられてるがこの際はそんな細かいことはパスだ。ぎゅうっと遠野の胸が当たるのも気にせず必死で抱きしめていると機嫌も途端によくなったのか、いつもの遠野に戻っていった。といきなり男の急所に猛烈な痛みが…とよくよく見てみるとみちるの足がちょうど股間のど真ん中にあって…、そこで俺の意識はぷっつり途絶えた。


「んにゅにゅにゅにゅにゅーっ!! 痛いよ〜。助けて〜!! お姉ちゃ〜ん」
 国崎さんにげんこつでぐりぐりされながら助けを呼ぶみちる。私はそんなみちるがとっても羨ましく思う。私にはそういうスキンシップが皆目ないし、第一してくれない。したとしても今日みたいな特別な日くらい、抱きしめられたことだって今日を入れて年に1回あるかなしかだ。だから今のみちるを見てるととっても羨ましく思う。なんで国崎さんが私にはそういうスキンシップをしてくれないのか…。いろいろと考えて出た答えは、イタズラだろう。そう思う。イタズラしちゃえば国崎さんだって黙ってはないはず。そう思ってこの間ちょっとイタズラしちゃったわけだけど、そのイタズラさえ気づいてくれなくてむぅ〜ってなっちゃったわけだ。何でみちるのイタズラにはああやってくれるのに私にはしてくれないのかと思うとなんだか不公平感を感じる。とにかく私も混ざりたい! そう思って思い切って国崎さんの背中をぎゅ〜っと抱きしめるんだけど、急にやったのが悪かったのかびくっとなってこっちを振り返る国崎さん。“と、遠野? 当たってるんだが…” とおっかなびっくりでそう言う国崎さんに私は少しはてな顔になる。“何がです?” と聞く私に向かって、“そ、その…む、胸が当たって気持ちいい…んじゃない! は、はは、恥ずかしいんだけどな?” と顔を真っ赤にして言う国崎さん。そう言う顔は滅多に見られないのでなんだか嬉しくなってどんどん押し当てちゃう私。と言うか今日は1日中家にいたものだからブラジャーをしてなかったな? なんて思ってると、“何か感触がやけに生々しいんだが…ひょっとして?” と国崎さんが聞いてくるのでこくんと頷く私。と、途端に顔を真っ赤にさせて、“放してくれ!” と言うものだから、ふるふるふるとテレビドラマでよく見るお嬢様のように首を横に振ってさらに抱き着く私。みちるはみちるで、“かみやんのお母さんとかのりんのお姉ちゃん先生に言いつけてやる〜っ、くそうくそう…” と未だに頭をぐりぐりされてこんなことを言っている。そんなこんなで今年も過ぎ行く時間に身を任せながら、笑ったり泣いたり時々怒ったりしながら過ごす今日12月22日、私の21歳の誕生日だ。

END